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178:アルタン山脈の死闘1

 明朝、俺達はアルタン山脈に向けて出発した。大荷物だと移動が困難なため、アール商会に荷物の大部分を預けていくことにした。必要になれば荷馬車隊の積荷に載せて運んでくれるという。


 かなりの軽装で入山した俺達だったが、リリィとハイネには少々つらい道のりで進みはゆっくりだった。急ぎたいが急かすわけにもいかない。敵がゆっくり来てくれることを祈るだけだ。


 しばらく歩き、俺達は一度洞窟に入って休むことにした。火を使うのは避けたいため、食べるのは固形の携帯食料だ。不味くはないが美味しくもない。戦場で食べるのはこの程度のもので十分なのだろうが。


 しかし、休んでいる間にも敵が来るのではないかと不安でなかなか落ち着けない。ちらちらと洞窟の外を気にしてしまう。


「【滅】の来襲が気掛かりですか?」


「そりゃもちろん。お前は怖くないのか?」


 そういえばオーウェンは妙に落ち着いている。恐ろしさはこの中の誰よりも知っているだろうに。肝が据わっているのか恐怖でおかしくなったのか。


「近づいてきたら絶対に判りますからね。来るまでは怖くないですよ」


 【破】と同じで騒々しいとは聞いているが、そんなに安心していいのだろうか。オーウェンが言うのだからそうなのだろう。多少不安を抱きつつも、安心して食事をとることができた。


 オーウェンの言葉の真偽に関してだが、結論から言ってオーウェンの言っていることは本当だった。


 それは再び山道を歩き始めたときのことだった。麓で爆発のような大きな音が響き、その直後巨大な魔力を持った何かが高速で近づいてきたのだ。木々をなぎ倒しながら。


「【滅】、来ます、防御迎撃態勢をッ!」


 オーウェンの言葉を受け、アーツが禁呪を展開する。蒼く輝く星空の盾。昔存在した親衛隊のものだという不朽の盾。


 そこに大質量が衝突する。盾は破れこそしなかったが、衝撃波は貫通して俺達を強い圧で叩きつける。


「見つけたぞ、帝国に仇なす破壊者よ」


 戦神、鬼神、魔神。どう例えたらいいだろうか。その男は、人の領域を超越しているように思えた。


 とにかく強いのだ。この男は。一目見ただけで、誰もがこの男が強者だと判断できる。そういう格がそこにある。


 それはただ背丈が高いだけとか、そういうものではない。


 背丈はもちろんのこと、その筋肉、眼光、溢れ出る魔力。どれを取っても強者に値する、恐ろしいものだ。


 そして、その攻撃の威力も凄まじい。激しい衝撃波に気を取られて気付いていなかったが、攻撃の余波で周辺の木々が全て吹き飛ばされている。


 いや、それだけではない。彼が突進してきたそのルート全ての木が、無惨になぎ倒されているのだ。普通に走っただけでこうはならない。


 刀を抜いたはいいものの、これからどうすればいいのか、俺には皆目見当もつかなかった。こんなひ弱な刀一振りであの男に何ができるのか。


 虎の子のアダマンタイトの弾丸だって、どれだけ役に立つか分からない。圧倒的な力の前では、一定以下の火力は意味がない。


 ここに物理攻撃の弱さがある。魔術ならば魔力と術式の工夫で理論的には無限に威力を増幅できるが、個人で扱える物理攻撃には限界がある。


 この戦い、俺は生き残ることができるのだろうか。

次回、179:アルタン山脈の死闘2 お楽しみに!

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