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150:帝立魔導研究所

 俺達が最初に向かうことにしたのは、帝立魔導研究所。【影】が怪しいと言っていたところだ。


 帝立というだけあって、皇帝の保護下で研究をしているためその警備はかなり強固だ。特殊部隊の者でも権力で中に押し入ることができないくらいには。


 そこで俺達は、兵器の開発依頼という名目で研究所に入らせてもらうことにした。こういった名目で予約を入れれば、よほどおかしい理由でない限りは入れてくれるらしい。


 さて、兵器の開発なんて言ったが、何を相談するのか決めていなかった。さすがに話しの時に何も言えないのはまずい。しかし、それも【影】が考えておいてくれた。


「帝国軍の兵士に配給される剣は、もちろん装飾剣の役割も担っています。でも、それに加えて超短縮詠唱で戦用魔術がしようできる付呪がされているんです。今回はその内容について相談するつもりなんですよ」


 【影】の付き添いとして一緒に研究所の中に入るのは俺とキャス。【影】曰く一番違和感のない人選らしい。本当はアーツも指名を受けていたのだが、珍しく断っていた。


 アーツが嫌がっていたのは、この制服だ。制服のデザインが嫌いというよりは、別の服を着ることが嫌らしい。あれが脱げない理由でもあるのだろうか。風呂には入るだろうに。


 特殊部隊とそれに連なる人間は戦闘面での配慮のためかなり自由な服装が許されており、上着を羽織るだけでもいいらしい。大事なのは上着の胸についている徽章なのだとか。


 確かに【影】から渡された制服には複雑な紋様の徽章が付いていた。要は地位が示せればいいわけだ。


 俺は普段の上着を脱ぐと、制服に袖を通す。少し硬いがしばらく着ていれば慣れるだろう。袖を折って固定するとなかなかいい感じだ。


 後は内ポケットが多いといろいろ小物を仕舞えていいんだが。宿に戻ったらキャスかカイルに頼んでやってもらおう。


 帝立魔導研究所は、かなりの大きさだった。見た目の無機質ささえどうにかすれば一国の城にも使えそうなサイズ感だ。強い魔力を感じる。


 中に入ると、少し気弱そうな大きい丸眼鏡の男が俺達を通してくれた。これでも大きな研究のリーダーを任されることもある優秀な魔術師らしい。歳も俺とそう変わらないくらいなのに、よくやるものだ。


 彼の専門は魔導具の制作らしく、今回の案件は彼が適任だということで話を聞いてくれることになったらしい。


「えっと、今回は制式剣の改良ということでしたね。具体的にどのようなものをお望みですか?」


「特に戦闘が多い部隊だけでもいい、継続回復系の魔術を付呪できないかな」


「現状以上の魔力を刀身に与えてしまうと素材自体が保ちません。ミスリルを混ぜたりして魔力適応度を上げないといけませんね。コストも高くなりますけどね」


 魔術付与の話か。あのナイフも結局使うことはなかったが、確か作るときにそんな話をしていたか。


 ミスリル合金にすると単純に鋼で剣を作る際の何倍くらいかかるのだろうか。魔術一種を余計に付与するだけでも、3倍くらいが妥当だろうか。


 さすがにそれは量産しづらいだろう。少し無茶すぎる要求なんじゃなかろうか。まあ急ごしらえの注文だから仕方ないか。


「鞘に付呪すればいい。継続回復魔術に、身体強化と疲労軽減くらいは付けられるんじゃないか?」


 なるほど、鞘か。刀身の魔術起動系のものと違い身体の方に持続的に付与するのであれば鞘でも十分だ。むしろいつも身に着けている鞘の方が相応しい。


「なるほど、それならば術式の組み方を工夫すればなんとかなるかもしれません。見積もり的にはもう一つくらい魔術が組み込めそうですけど、どうします?」


「であれば攻性魔術保護だな。それとも攻性と指定すると負荷が増えるか?」


「その程度であれば問題ありません。大丈夫ですよ」


 軍用魔導具はこうやってできているんだな。俺は正規の部隊ではないからこういう場に立ち会ったことはない。いや、名前だけは正式な組織だったか。


 流用品をいくつか使ったことがあるが、確かに便利だった。こうやって試行錯誤を繰り返して進化しているのであれば納得だ。


「さて、前置きはここまでだ。少し聞きたいことがある」


 【影】が少し真面目な顔になって、声のトーンを落とす。


「この星のレプリカを、作ることはできるかい?」

次回、151:もう一つの星 お楽しみに!

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