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144:帝都

「山じゃねえか」


 帝都を見て、一番に抱いた感想はこれだった。城を中心に広がる大都市。建物の高さが城に近づくにつれ高くなっているのが余計に山っぽい。


 本当に、規模で言ったら一つの山だ。城に関しては何階建てなのだろうか。頂点には星のように金色の光が輝いている。


「あれがいわゆる【ガーブルグの威光】かね。あたしもあれを見るのは初めてさ」


 【ガーブルグの威光】。国のシンボルたる宝石で、城の頂点にある硝子宮に飾られているらしい。その輝きは人が直視することが不可能なほどで、だからこそ長年硝子宮にしまわれているのだとか。


 確かに、たかが宝石の輝きがここまではっきり届くのはおかしい。自然発光する宝石なんて他に聞いたことがないが、よほど珍しいものなのだろう。


 帝都は、途中で立ち寄った都市の何倍も栄えていた。さすがは世界一の大帝国、そこらの市場に売っている品物もバリエーション豊かで見たこともないものが多い。


 リリィとハイネは早速買い食いを始め、帝都に入って数分もすれば両手に食べ物をいっぱい抱えていた。ハイネはリリィに付き合わされていると言った方が正しいか。


 楽しい雰囲気の通りだったが、俺は微かに人の視線を感じていた。辺りを見回してみるが、こちらを見ている人間はいない。思い過ごしだろうか。だったらいいのだが。


 とりあえず宿で一旦休もうということになって、適当なところで宿を取って部屋に入る。夕飯まで時間があったので、俺は少し出かけることにした。


 一応許可は取っておこうと思い、アーツのところへ行く。


「視線を感じたんで少し一人で出たい。深追いはしないで帰ってくる」


「君もか。ちょうどいいから行ってもらおうかな」


 やはりアーツも先程の視線は感じていたか。自分の部屋で装備をポケットにしまい、窓からそのまま外に出る。


 なにしろ、こちらの方が裏通りに入るのに都合がいい。玄関から出ると表通りだから、ぐるっと回ってこないとここまでは来ることができない。


 俺の目的は観光ではない。とりあえず、現地の誰かと接触したいのだ。接触するだけなら別に誰でもいいのだが、その相手はそれなりに情報を持っている方がいい。


 そのためにはまず俺に近づいてもいいと相手が思ってくれるところまで移動しなければ。


 最悪、俺達を狙う暗殺者だっていい。反撃して拘束、情報を聞き出すのも良し。勝てなそうならば、それはそれでそういう相手がいるという情報は手に入る。


 今のところ感じる視線は三方向。等距離を保って移動しているのが分かる。それなりの手練れだ。魔術の腕は知らないが、立ち回り方のわかっている人間の動きだ。


 しばらく歩いていると、小さな広場に出る。中央には枯れた噴水。子供の遊び場だったのだろうが、廃れてしまったか。さて、このあたりがいいだろう。


「物陰からチラチラ覗いてないで出てこいよ」


 聞こえるように少し大きな声で言うと、暗い緑色の詰襟を来た男たちが出てくる。合わせて九人。帝国軍だ。


 この服装、道中の都市でも宿までの道でも何度か見かけた。街の人に軍隊だと教えてもらったが、これは普通の警備兵ではないだろう。


 俺達は特に何も問題を起こしてはいないのに、なんでこんな風に追われているのだろうか。誰かがしでかしたか。


「アイラ王国の斥候よ、観念しろ」


 兵士たちがじりじりと近づいてくる。まさか正規軍を敵に回してしまうとは。一人斬ったら完全に国の敵だ。これから動きにくくなってしまう。どうすればいいのか。


 覚悟を決めて刀に手をかけたその時、穏やかな声がその場を鎮める。


「待て。まずは話を聞くところからだ」

次回、145:帝都の影 お楽しみに!

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