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143:ガーブルグ帝国

 ガーブルグ帝国。神代から存在する巨大国家で、国土も人口も圧倒的。様々な方向で強大な力を有しており、正真正銘世界一の大国だ。


 しかし、それは言葉で聞く話。その恐ろしさは実際に見てみなければわからない。その感覚は、田舎の農村で育った者が初めて王都に行った感覚と似ている。


 ほぼ同じ規模なのだ。アイラ王国でいう州都にあたる都市が、アイラの王都と。本当にびっくりした。帝都に到着したと思ったら、ここは大都市のうちの一つだと言われたのだから。


「これでも安い宿なんすね。ずいぶんいい宿って感じがするっすけど」


「相対的にね。値段自体はアイラ王国の同じグレードの部屋と大差ないよ。逆にこれが安いということは、アイラの貧困層はこの国では生きていけないということになる。金があるのもいいことばかりじゃないね」


 大きさばかりが目に入って視界が狭くなっていた。確かに路地裏の端に見えた貧困層はより不健康に見えた。


 俺ももしこの国に住んでいたら、どうなっていただろうか。殺しの報酬の相場も高くなるのだろうか。特務分室のような組織の給金も。


 文化はかなりアイラ王国と近いから、服装などで浮かなくて助かる。ファルス皇国に行ったときに思ったが、あんな法衣みたいな服を綺麗に保つのは大変そうだ。どうしているのだろうか。


「石造りの建物も多いですよね。貧しそうな家でも木造はほとんど見当たりませんし」


 まさに百聞は一見に如かず。隣国なのにこんなに違うとは思っていなかった。いや、違うのはファルス皇国もそうだったが、違いの方向性が別だ。


「そろそろご飯だよ。食堂行こ」


 リリィに言われ、意識を引き戻して立ち上がる。窓の外を見ると、もう陽は沈んでいた。こんな時間になっていたか。


 ガーブルグ帝国の食べ物は辛いと聞いているが、大丈夫だろうか。特にハイネ。辛いのは苦手と言っていたし、好みが合わないと可哀想だ。


 食堂は確かに、少し香辛料の匂いがするような気がした。唐辛子とか、そういう方向のそれだ。あまり触れると痛くなるタイプの。


 元気な娘さんが運んできたのはパンと赤い豚肉。これは香辛料の赤か。トマトの赤ならよく見るが、これはなかなかない。さすがにフォークを突き立てるのを躊躇ってしまう。


 アーツとリリィとキャスは平気なようだ。いかにもといった面子だが。俺も意を決して口に入れてみる。


 確かにピリッとした辛みが口を刺激する。が、それをいい具合に豚の脂が中和してくれていて、とても食べやすい。むしろ辛みは一つのアクセントとしてちょうどいい。


「むむむ!? 辛いですけどこれはこれでなかなか……!」


「ちょっとびっくりしたっすけど、慣れちゃえば美味しいっすね」


 他もみんな気に入ったようでよかった。警戒していた分最初こそ身構えてしまったが、頭がおかしいような辛さではないのが分かれば普通に食べられる。この国でも普通に食事ができそうで助かった。


 ハイネがお菓子をいっぱい持ちこんでいたみたいだし、何かの際にリリィと一緒に分けてもらおう。


 そのまま食事を終え、部屋に戻った俺達は明日の準備をしてからアーツの部屋に集合する。


 明日は都市同士を結ぶ鉄道で帝都に向かう予定だ。今日のうちに切符も買っておいた。集まったのは出発時刻などの再確認のためだ。ねぼすけにはきっちり伝えておかなければいけないし。


 翌日の確認を済ませ、少しおしゃべりをしてから部屋に戻ることになった。いよいよ帝都だ。犯人を見つけることはできるだろうか。


「おやすみみんな。また明日の朝、ね」

次回、144:帝都 お楽しみに!

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