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131:狙撃礼装4

「レイさん、なんか顔色悪いっすよ。身体は大丈夫っすか?」


 回収した礼装を調査するため王国軍の本部に向かっていた俺達だったが、どうやら昨日の悪夢での疲れが顔に出ていたらしい。シチューで危うく溺れるところだった。


「いや、ちょっと眠れなくてな。身体の調子は大丈夫だ」


 悪い夢を見てよく眠れなかったなんて、少し恥ずかしいではないか。子供ならまだしも、もういい年だ。それでもシチューに溺れるのは怖いだろう。今日はさっぱりしたものが食べたい。


 今日は一日礼装について調べるようで、アルタイルも制服だ。昨日の色眼鏡姿も、今思えば案外悪くなかったかもしれない。むしろ色眼鏡は制服を着ている時の方が似合うのではないか。


「ん、どうしたレイさん。俺の顔に何かついてるかい?」


 気付かぬうちにずいぶんとアルタイルの顔を凝視してしまったらしい。まあ武人だし、そういう気配には敏感なのだろう。


「いや、たいしたことじゃない。色眼鏡が昨日の服より制服の方に合ってると思ってな」


 素直に言った直後、俺はその行為を後悔した。アルタイルはそれを聞くなり嬉しそうに笑ってどこからか色眼鏡を取り出す。そしてポーズまで決めて感想を求めてくる。


 遅れてやってきたジョルジュとカイルがアルタイルをかっこいいかっこいいと褒めるせいで余計に調子に乗っている。言わなければよかった。


 だがまあ似合っているのも確かで、軍服とよく合うものだ。ファッションショーが始まっても困るので、俺はエルシの後についてそっと研究室に入っていった。


 研究室内では軍の技師が巻物や宝石を使って礼装に付与されている術式を解析・複製しようとしていた。見たところ作業は難航しているようだ。


「へえ、かなり古い形式の抽出技法を使っているね。新式の転写反転術は使えないのかい?」


「は。始めはそうしようとしたのでありますが、どうやら弾かれてしまうようであります」


 もうここまでの魔導工学の話になると俺の手には負えない。ウチでこういう話をするならアーツかカイルでないとダメだ。術式抽出なんて初めて見た。


 エルシに仕組みを聞いてみたが、ほとんどわからなかった。とりあえずこうしたらこうなるというような予定表のようなものを読み取り写すのだという。


「わからないのならやってみたまえ。君、術式刻印用のペンを借りるよ」


 そういってエルシはナイフとペン、それと手袋を持ってくる。魔術に関わるものだから俺は素手で触ることが出来ない。


 俺が今回挑戦するのは鞘から抜くことで刃が炎を纏う術式。初歩の初歩らしい。


「条件と発動術式を書き込んでいくだけさ。ただ、そのナイフは多すぎる魔力に耐えられないからできるだけシンプルにね」


 鞘から抜くことを条件に【ウェアリング・フレア】を発動。範囲は刀身部分に指定。鞘に収めることで停止。


 すぐに書き終わってしまったが本当にこれでいいのだろうか。あまりに簡単なので少し不安になってしまう。


 一度ナイフをしまい、再び鞘から抜くと見事に炎を纏う。今までもたくさんの魔道具を使ってきたが、自分で作れるとは思っていなかった。


 確かにこんなに簡単に作れるなら術式付与タイプの魔導具が安売りされているのも頷ける。ド素人の俺ですらものの数分でできてしまったのだから。


「それは記念に持っていたまえ。そら、何事も初歩は簡単ということさ。剣術だって、動かない的に剣を当てるだけならだれでもできるだろう?」


 俺に魔導工学は難しすぎるという先入観で、何もしていなかったのが馬鹿らしい。少し勉強すれば戦場で特殊な武器を用意することも難しくない。今度カイルに教わってみよう。


 俺がナイフを懐にしまったところで、作業をしていた技師が大きめの声を上げる。


「礼装複製完了しました、動作確認に入れます!」

次回、132:誰にでも お楽しみに!

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