表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/758

123:探偵と助手

「俺は魔導遊撃隊特務分室のレイ、こっちはカイルだ。よろしく」


「私は探偵のエルシ、こちらは助手のジョルジュだ。よろしく」


 なるほど、探偵に助手とは。小説に出てくる探偵のようだ。よく見れば恰好も『探偵とはこういうものだ』と言わんばかりだし、カイルのように何かそういうものに憧れがあるのだろう。


 しばらく現場で話を聞き、念写などのより詳しい資料を貰って立ち去る。エルシが家に招待してくれるようだ。なんでも考えるには自室が一番いいらしい。


 エルシの家は案外特務分室と近くだった。俺の足で歩いて10分程、肉まんじゅう屋と同じくらいの距離だ。これなら何か話がしたい時もすぐに会うことが出来る。


 家の中はすっきりとしており、簡素ながらも家具や装飾品などから上品さを感じる。色は全体的に暗めだが、だからといって陰湿さはなく、むしろ気持ちの良い暗さだった。


「ちょいお待ちくださいね、お茶持ってきますから。先生、いつものでいいですよね」


「ああ、頼むよ。ついでにお茶菓子も。マドレーヌなんかがいいね」


 ジョルジュがエルシを『先生』と呼ぶには少し違和感があるような。少し考えてみたが体格のせいだろう。


 ジョルジュは俺よりも少し筋肉質な結構がっしりした感じなのに対し、エルシはいわゆるもやしというような感じだ。典型的な学者タイプと言えばいいだろうか。


 別に力こそ正義だなんて思っちゃいないが、なんとなく。きっとジョルジュの方が存在感があるからだ。


「僕たちの関係が不思議かい?」


「不思議というか、微妙な違和感があってな」


「それは君が武人だからかもね。君、肉弾戦を得意とするタイプだろう。対格差は戦闘で重要な意味を持つからね、体格がいい方を格上と見るのは生存本能のようなものなのだろう。そら、隣のカイル君を見てみたまえ」


 エルシに言われるがままにカイルを見てみる。カイルはエルシではなく俺の方を不思議そうに見ていた。


 なるほど、探偵と助手のイメージが明確にある者にとっては彼らの関係性はさしておかしくは見えないということか。確かにエルシの言う通りかもしれない。


「エルシさん、すごいっすね! なんでレイさんが接近戦が得意と分かったんすか?」


 カイルが少々興奮気味に尋ねる。探偵ものの小説なんかを読んでいるカイルにとってはこういうのはまさに物語の中の探偵そのものだろうから、それも当然か。


「はは、それに関しては簡単なことさ。刀は新しいようだけど、鞘が使い込まれているからね。制式剣しか帯びない魔術師は、たいてい剣を鞘ごと替える」


 よく見ているものだ。確かに俺は鍛冶屋の親父に何度か刀を打ってもらっているが、鞘は交換したことがない。使い古されているが未だに強度は十分だし、何も支障はなかったから気にしていなかった。


 魔術師が腰にさげている制式剣は大抵彼らの位の高さや財力を示す装飾品、勲章のような扱いだ。むしろメインは鞘なわけだから、古びたものなど使うはずがない。


 ただ刀を持っているだけでは根拠にはならない。警戒されることもあるからできるだけ刀は晒さないように上着や脚で隠すようにしているが、いつの間に見たのだろうか。探偵の観察眼というものに感服する。


「お待たせしましたー」


 お茶やお菓子の乗ったお盆を持って、ジョルジュが部屋に入ってくる。お茶は香りがよく、お菓子もラ・ベルナールで出されたものと同じくらいに上質なのが分かる。


 これは食べ過ぎると止まれなくなるタイプだ。一個だけにして我慢しておこう。


「しかし、狙撃の腕に優れたアルタイル氏にわざわざ狙撃で攻撃するなんて不自然ですよね。彼は無傷ですし。先生はどう思います?」


 確かに。狙撃するのならもう少し、反撃の痛くない相手にするはずだ。そんなに特別な人間でなくとも、一般的な魔術師では誘導力のある魔術でもないと遠くにいる相手に当てるのは難しい。


「確かに不自然だね。レイ君、君はどう思う?」


 そう聞かれるとすぐには浮かばない。ただ、何かを得意とする相手をその方法で殺すというのには少し覚えがある。


「……恨みだと思う。アルタイルに狙撃で殺された奴の遺族が同じやり方で復讐しようとした、とか。よくある話だと思うが。お前はどうなんだよ」


 仕返しのつもりもない訳ではないが、エルシに聞き返す。どうせ彼なりに予想は付いているが、俺の考えがどんなものなのかを聞いて楽しもうという魂胆だろう。


 エルシは足を組み替え、お茶を啜ると少し笑う。


「結論から言ってしまうと、腕試しだろう。一般人でもある程度の狙撃が可能になる魔術礼装か何かのね」

新キャラコンビのエルシとジョルジュ

彼らはどんな活躍をしてくれるのか!?

次回、123:呼ばれた理由 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ