Untildead
大変お上品な内容ですんでお食事中やおやつ休憩には読まない方がいいと思うよ。
路肩に乗り捨てられた車の中を、四駆が颯爽と駆け抜ける。ボロンボロンと爆音立ててその車が向かう先は小さなコンビニエンスストア。フロントバンパーには明らかに違法改造であろうデカデカとした角の様なものが取り付けられていて、その頭の悪そうなこましゃくれた鼻面をコンビニの正面向けて駐車した。
バリーン。車はタイヤ当てにタイヤを当てるより先にしゃくれ顎をガラス窓に押し当てた。そもそもタイヤが履帯だった。
【速報】コンビニに自動車が突っ込む。
原因はアクセルとブレーキ、それら以前の問題である。
何を思ったか運転手はそのまま念入りに二回三回と場所を変え駐車を繰り返し、コンビニ駐車場側のガラスを全面ぶち破ったところでようやく満足したとばかりに暫く停車して暫く休憩を挟むと、買い物もせずUターンして現場を後にした。
平時なら悪質なイタズラとして防犯カメラの映像から速やかに犯人が特定され、遅くてもその日の夕飯までには警官が自宅まで押し寄せて運転手に手錠が嵌められていただろう。あるいは近くの巡査が至急追跡を始め、帰路に着く前に停止させられていただろう。
しかし、この世界にそんな未来はもう訪れないのだ。
数字をつけていない自動車は白煙を上げながら次のコンビニへと向かっていく。路上に転がった動物っぽいナマモノをグシャリと轢き潰しながら、それ以外のゴミも踏み渡りながら進んでいく。
続いてのコンビニも車で来店。薬局にもダイレクトに。業務用スーパーにだって。
全ての店舗をドライブスルーで通り抜けた車体は至る所でくっつけて来た破片を振り払うかの様に川へダイブした。ぐおんぐおんと軋みを上げながら強引に前後して水を被る。すると、ちょっとだけ綺麗になった。
四駆は満足したかの様に川から上がり土手を登る。悠然と風を切って帰路に着く。それはさながら、野生動物の様に。
四駆は途中、道路の中央でたむろする迷惑な野生動物を発見して止まる。ひょっとしてチンパンジーだろうかと?
四駆は、ブボボンブボボン、と乾いた雄叫びをあげると、それに気圧されたお利口なチンパンジー達は素直に道を譲った。
お洋服で着飾った賢いチンパンたち。何匹かカストロール油の甘い香りにつられてトコトコとついてくる。珍しいタイプのお猿さんだなぁと感心した運転手は彼らに贈り物を投げ渡した。プレゼントされた酒瓶には飲み口に燃え盛る炎の手拭いが詰められている。一部世代交代したカミナリ族たちもこれにはびっくりしたのか、うまく受け取って貰えず、蜘蛛の子を散らす様に退散してしまった。
けれど、あまり賢くなかったお猿さんは一人楽しく炎の宴にその身を捧げて興じていた。四駆の運転手は、右サイドミラー越しに小さくなるその光景を表情一つ変えずに一瞥して、すぐに前を向いてアクセルを踏んだ。
四駆が通り過ぎた後には、生焼けの死骸と、路肩で朽ちていく車両と、ところどころ赤茶げた街頭と、無造作に転がる弁当ガラとペットボトルと。
四駆が向かう先の道路もまた、それは代わり映えのしない光景で。
この先はもうずっと、街の環境や地球の環境について議論される様な日常など、やって来ないのだろう。四駆の運転手は、そんなことを考えていた。
「たっ、助けてくれ〜」
帰宅途中、どこか遠くの方で人の叫び声の様なものが聞こえた、気がした。しかし四駆の中には奏者のいない合奏団が住んでいてブリブリとラッパを吹いたりドタドタとドラムを叩いたりしているのでよく聞こえなかった、ことにした運転手。
アクセル吹かしながらそのまま進むとバックミラーには曲がり角から飛び出してきた一人の男性と、その他大勢の人たち。
男は捕まり身ぐるみ剥がされた後、下半身に群がられて、そして……
ベキベキ、グシャリ。
長いうねうねのゾウモツを身体の外に引きずり出された男性の顔は、虚ろな瞳で目の前を去っていく一台の四駆をじっと見つめていた。運転手は最後まで気がつかなかった、と思い込むことにした。
ベンビの発生から一年ぐらいが経過した。
みんな、元気にしてるかな?俺は便器に糞してる。
即売会の悲劇から一年。嘔吐ブレイクの発生で衛生観念が失われ、今や世界中で中世ヨーロッパ並みの茶色い景観が楽しめる世の中になったぞ〜。初めて訪れる人がいれば、そいつはまるで異世界にでもやって来たかのような新鮮な気分になれること間違いなし。なんたって住んでる人間のお墨付きだからな。小汚い街はベンビが下水で待ち構え、今日も生きた人間の腹わたで作られる新鮮なうんこを求めて彷徨ってる。時はまさに世紀末、淀んだ街角で出会わないことを願うばかりだ。
だがしかし、宅配サービスが営業を止めてからというもの、我々は外出の機会に事欠かない訳であるからして、出逢いを求めてシャバに繰り出している訳でもないのにうっかりバッタリと、そんな望まぬ遭遇のリスクは避けられない。ベンビ以外の健康的な人間、それも若くて綺麗な女性との出逢いなら大歓迎なんてすがねー。今はただ、未だ見ぬ俺のヒロインがトイレ落ちしない事を願うばかりか。
乾いたうんこに火をつけろ。今日こそ反撃の狼煙を上げろ。けども風化して飛散したソレらを吸い込まないように気をつけろよ。コレラを恐れ、トイレの神様に祈るのだ。ちょうもちょうのちょうしは悪くないでちょうか?と。うーん、これは、悪くないね。硬すぎず、柔らかすぎず、程よい感じで仕上がっている。今日も絶好調だ。
そんな訳で、本日も気張って進行を務めさせていただきますよー。トイレのレディオをお聴きの皆さん、おはようございまーす。いつも個室に篭ってます、パーソナリティの御手洗でーす。まあ今は手を洗うために外へ出ている訳ですが。
おおっと、凄いです。澄み渡る空の向こう、素晴らしい朝日が顔を出してきました。現在の時刻は6:11分。気温は20℃。湿度は60%程で風も穏やか。たぶん今日は一日中ずっと心地よい陽気が続くでしょう。外出の際はズボンのベルトをしっかりと締め、マスクをしてベンビに十分気をつけて散策に出かけたいですね。
今日のラッキーアイテムは大きめの傘と、それから貞操帯を身につけると良い、と言ったところでしょうか。ケツの穴に指突っ込まれて奥歯ガタガタ言わされないためにも、厚着をして絶望的な状況に備えておくのが今を生き抜くためのミソというワケです。ヒールを履いて香水振りまく時代はとっくのとうに終わってしまいました。ああ、諸行無常の響きかな。
と言ったところで、本日も熱心なリスナーからお便りが届いているので紹介に移ろうと思う。ペンネーム、カマドゥーマンさんのお便りから。「御手洗さん、なんで毎朝トイレで糞ラジオやってるんですか?便所みたいな名前だからですか?ウンコマンって呼んでもいいですか?」とメッセージを頂いたぞ。カマドゥーマさん、いつもクソみたいな投書をくれてどうもありがとうございます。なんか臭う手紙だったので汚いものには蓋をして汚物と一緒に流そうと思います。ウンコマン、いいじゃないですか。トイレは一般的に建造物の中でもっとも堅牢な場所と言われているんですよ?柱に囲まれてるから何とか。だもんで籠城にはもってこいっていう訳っすわ。常在戦場の心構えがこのクソッタレな世の中を生き抜くための秘訣です。まあトイレでの事情中は映画ん中じゃ大体が死亡フラグ立ってるんですが……。
それはさておき、続いてのお便り。ペンネーム、ブリブリブリジットさんから。「先日、未だ行ったことの無いディスカウントストアーの近くで、大量のベンビが集まっているのを目撃しました。たぶん駐車場の金網の下を通ってる下水の臭いに釣られてやってきているんだと思います。あそこにはまだ大量の物資が眠っている筈です。既に手持ちが少ないので出来るだけ早いうちに回収をしたいのですが、何か良い方法は無いものでしょうか?」ということのようです。
そうですねぇ、ところでこれをお聴きの皆さんはバラの花の香りを嗅いだ経験はございますでしょうか?実は俺、まだ経験が無かったりするんですが、オナラの香りをウンと薄めるとバラの香りになるそうですよ。確か千倍ぐらいだったかな?
ベンビは基本的により強い香りに反応して行動していますが、生きた人間の新鮮なうんちの香りには特に敏感で、そいつを嗅ぎつけると一斉に群がってきます。オナラなんかも好物です。なので奴らには千本の薔薇をプレゼントしてあげると喜ぶかもしれませんね。やおい穴をつけねらって彷徨い歩くバラ園のベンビたち。そら恐ろしいですね。お花摘みにはくれぐれもご注意くださいね。
とまぁ余談はさて置いて。奴ら、臭いに反応している事は確かなんですよねー。一度シュールストレミングの缶を投げつけて上手い事破裂させたらそっちの方に群がっていったり、混ぜるな危険の薬剤を合体させて下水に流し込んだら大量に炙り出せたりしましたから。奴らにも好みがあるらしいので、奴らが最も好む香りの方、あるいは嫌がる匂いを使って上手いこと誘導できたら、あとは悠々自適な快適ショッピングが約束されるでしょうね。あるいは標的にされないよう芳香なウンチが出せるように食生活を見直すというのもいかがでしょうか?フローラルな香りがして意中の人から好印象が得られる事間違いないなしな、究極のモテ男テクニックです。女性の方でも役立つ事でしょう。
それでは続いてのお便りですが、何やらきな臭い感じですねぇ。ペンネーム、ニュルンベルクさんから。「御手洗さん、御手洗さん。どうしよう。最近おトイレに向かっても全然お通じがありません。やはり感染による変異の兆候なのでしょうか?それとも単純に、最近野菜をあまり食べていなかったから?毎晩布団に入るまで気が気でなく、朝目覚められなかったらと考えたら怖くて眠れません。私は一体どうなるのでしょうか?」とのご質問。
そうですねぇ、野菜をあまりとられて無いという事ですので断言は出来ませんが、やはり危険な状態と言わざるを得ないでしょうね。あの日、ニュースを見ていたらご存知かも知れませんか、感染の初期症状は排泄障害。それまで健康的であった人でも唐突にうんちが出なくなり、長くて二週間程度の便秘を引き起こします。続いて一気に訪れるお通じの瞬間は、あの歴史に残る惨劇を引き起こした原因として有名でしょう。まだ健康的な人間が数多く存在した一年前のあの日。既に多くの人々が同じように便秘に苦しんでいながらも前例がなく、内科に患者が溢れかえっても対策の施しようがなかったあの時。我々人類は一斉にトイレを求めて、彷徨い、そしてソレは大規模な暴動を引き起こすまでに世の中を混沌に陥れました。
半月ほど溜め込んだ人々の排泄物が一勢に押し寄せた処理設備は機能不全を起こして故障。出したものを流す水で上水道及び地下水が枯れ、断水が発生して水の奪い合い。続く第二陣、三陣と出現して短い期間で爆発的に増殖して便意に狂わされていった彼らは無事な設備の前で順番を取り合い争い、怒りと憎しみとパンツの中にデカイものを産み落として都会はパニックに陥りました。田舎は既に野糞でいっぱいでした。
そしてそれから続く下痢の症状は彼らから体力と水分を奪い、患者をどんどん疲弊させてゆき、社会機能も麻痺していきましたよねー。
テレビは真っ先に映らなくなりましたし、医療現場でも二次災害が広がり受け入れ先を失い、全員が全員自宅療養。そしてそのままお亡くなりに。そんな最悪の状況のまま時は進み、やがて奴らが産まれたんです。
「ゔゔぁあ」
「な、なんだこいつ?!うわっ止めっ、ウワァァァーー」
人のトイレタイムに勝手にお邪魔して、出したもの目掛けて襲いかかるスカベンジャーたちが。その者たち、又の名をベンビと言った。
何故そのようになってしまったのかは現在もわかってはおりませんが、彼らはゾンビのように彷徨い歩いては人間に襲いかかります。しかし、その目的は新鮮な血肉ならぬ出来立てホカホカの排泄物で、だがその先をもっと求めんと欲する奴らに直接ケツの穴をほじくり返されて、結局は内臓を外に暴かれて死んでしまうことから恐怖の対象に違いなく。誰がいい始めたのかは知らないがその名は言い得て妙でしたよねぇ。
奴らに落ちるまでの過程は大雑把に分けて三つ。
最初は一・二週間続く便秘。
次は一週間続く下痢。
そして最後は出すものを全て失い、泥の様に昏睡へ陥った先に訪れる、新たなる人生の幕開け。
ニュルンベルクさんの便秘が今どれぐらい続いているかは知りませんが、お通じが来ても安心はしない方が良いでしょうね。もし感染していたら下剤や浣腸は効果がないばかりか、続く二段階目で無駄に苦しむ結果に終わってしまうことは、先達の治療結果をみれば明らかです。正直、同情せざるを得ませんね。
でもまあ、逆説的に考えれば、もしダメだったらそれまで、と割り切り、一度試してみるのもいっそ気分が楽になるかも知れませんね。賞味期限が切れて状態が怪しくなった美味しいものでも食べて忘れるか、あるいはこんな時こそ祈りましょう。そう、トイレの神様に。
という訳で本日のナンバー、聴いてください。上村華奈で「トイレのかみさま」
中三の頃から何故か、おトイレで暮らしてタァ〜
マイクのボリュームを切り、出力をレコーダー側に切り替えた俺は、便座に腰を落とし深くため息を吐いた。
長い夏が終わろうとしている。あの日の残滓は頭から未だに離れないでいる。世界が変わった日の悪夢は……。
その日、俺たちはデートに出かけていた。
「ごめん、待った?」
「もー。遅いよみーくん」
レイヤーの彼女と知り合ったのは中学の頃。席替えの度何故か隣同士になる偶然が重なり、席が近いこともあってお互いの趣味とかについてよく話し合ってたら意気投合して、なし崩しにそのまま交際が始まって。
「あ、今日は姫執事のコスで来たんだ。じゃあヒメくんって呼んだほうがいい?」
「勘弁してくれ。だいたいお前が変なリプ飛ばすからこうなったんだろ?」
それから高校三年生になる現在まで変わらずコスプレデートなどをしてアツアツの毎日を過ごしていた。おかげで今日は女装なのか男装なのか分からない格好で過ごすことになっているわけだが。
「今日は来てよかったね〜」
「たく、馬鹿な男たちだ。わたくし、こう見えて立派な男児ですのよってな」
まあ、存外それも楽しかったり。
「え?ねえあの人、ちょっと」
「……やめてとけ。あんまりジロジロと見るものじゃねぇ」
でも、世の中良いことばかりじゃない。一年に何度か開催される一万人規模のイベントだけあって、ちょっとしたハプニングやイザコザなんてものも絶えないわけで。
「すみません、そこの方。宜しければドレッシングルームにご案内させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あ、んだよ?」
そのカメラ野郎は着ているツナギの、右脇腹の左斜め下あたり(後ろ側)を茶色いもので汚していた。臭いものを現在進行形で体外に排出しながら、不思議そうに警備員の顔を見ていた。
「あ?アレ……なんで俺」
「イャァァァア!」
そして、ツナギの男から少し離れた場所で甲高い悲鳴をあげて注目を集めている女性は、スカートの内側から特別開催中のイベント非売品を大放出している最中で。
この手のトラブルは実際多いのだとは噂には聞いていたが、実際目の当たりにするのは御免被りたいわけで。
「は、早く行こう」
「そうだな」
その時はただの噂の現場を目の当たりにしただけだと思っていた。
「トイレ、並んでるね」
「何時ものことだろ」
だけど、事態はもっと深刻で、残酷で。
「……電車、動かないね」
「車内清掃でウン休みたいだな」
こんな酷い結末が待っているなんて、思いもしなくて。
「……」
「ちょっと歩き疲れたからさ、ほら休憩しようぜ」
だからあの時は、とにかく今できることを思いつく限り実行して。
「申し訳ございません。ただいま化粧室は清掃作業中で使用できない状況でして」
「なっ?! 俺ら男だから、男子トイレ使っても問題ないっしょ」
「もういいよ。ごめんね変に気を使わせちゃって」
後から考えれば、あの時こうしてれば、もっと上手いやり方があったんじゃないかって。
「こらっ、君たち何やってる!」
「ヤベッ、見つかった」
「ごめんね、みーくん。ホントに……ゴメンねッ!」
「気にすんなよ。こんな言い方しか出来なくてアレだけど、無理すんなよ」
でも、もう全てが手遅れで。
「ごめんね、ごめんね」とお腹を抱え、泣きながら謝る彼女をそのまま人目につかない路地裏に置いてコンビニへ着替えなどを買いに行った俺の選択は、果たして正しかったのだろうか?と。
急いで戻ったその先に、彼女の姿はなく。一時間ぐらい呆然としていたら一人で家に帰ったという彼女に呆れ、苛立ってしまい。
それから二、三日しても体調は良くならず、でも見舞いに行くのも気が引けて。
そして一週間後。
俺は走って彼女の家に向かってた。
スマホに入ったメッセージがいつになく真剣で、まるで最後の別れかのような雰囲気を醸し出していて。だから部屋に入るなり。
「ユキナ!大丈夫か?」
そんな月並みな言葉しか言えなかった。
だが、彼女は既に……
トイレには、それは、それは綺麗な〜
ベンビ。そいつらは新型の嘔吐下痢とからが引き起こした高熱で脳をやられた人間が起こす異常行動に基づいて定義された症例の俗称だ。
彼女の部屋で見たものは、衣類や書類が散乱した床面と、赤茶色い手形で汚れた壁面と。
blood eなんちゃらかんちゃらウイルス。それは人間の代謝に対して作用する、医療目的で研究開発されていた病原菌が引き起こした悲劇。
婦警コスをした時購入した手錠で自らをベッドの柱に拘束した彼女の姿と。
最近テレビで報道され始めた、異常行動の詳細。
立ち竦んでプリンとか入ったコンビニ袋を力なく落とす俺の存在に気がつくや否や、手錠の鎖を引きちぎった彼女がやって来て、目を血走らせながら押し倒して来て、ズボンをいきなり脱がせようとして来るから……。
脳裏に過るのは、グラップラーと化した患者たちが非感染者の内臓を暴き出していた裏サイトの画像。
やられる!
貞操よりも命の危険を感じた俺は必死に抵抗してパンイチで逃走を続けた。
そして使われなくなった母屋に駆け込み、そこで彼女は……
えー、本日のナンバー。トイレのかみさま、でした。いくら受験勉強の為とはいえ、トイレで暮らすのは衛生上あまりお勧めできませんね。ボトラーに通ずるものを感じます。でもそんな頑張る我が孫の為に色々尽くしてくれたお婆ちゃんこそが、実はトイレの女神様だったのかもしれません。
え?トイレでレディオを流してるお前が言うなって?はて、そんなマナーのなってない奴は一体誰のことでしょう?シリマセンネ。一説によると、トイレの女神様は花子とも呼ばれてるらしいですよ?嘘松?シリマセンネ。
さて、そろそろ今日もお別れの時間のようです。皆さんもトイレを出るときはしっかりと消臭スプレーして、後に入る人が不快な気持ちにならないようにトイレは清潔に使いましょう。それでは。
放送を切ると、汲み取り式便所の先の彼女に行って来ると言って、俺は蓋を閉めた。俺は、生きる。彼女を元に戻す為に。