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空の世界とサーヴァント  作者: 崎守さん
3/4

#2 もし、やり直せるなら

 目が覚めると俺は大勢の人間に囲まれていた。


『〜ッ!!-ー・ーー!!』


 真っ先に目に飛び込んできたのは綺麗な赤髪の、妙齢の女性だった。

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔と、目の下の深いくまのせいで陰気な顔に見えるが、恐らく相当な美女と見た。

 顔立ちも西洋風と言えばいいのだろうか。

とても整っているように思う。


  ちなみになにを話しているのか、その言葉は聞き取れない。というか、聞き取れはしても理解はできないのだ。

 ただ俺は、泣き腫らし澱んでいた黄色の瞳に、光が戻っていくのを見た。

 うん、笑うとやはり美人だ。



 ……で、この人誰だっけ?汗

俺にこんな美人の知り合いはいない。


 他にも周囲に人はいたが、知っている顔はだれ一人いなかった。

ただ、誰もが喜び、ある者は涙を流していた。

 落ち着いて観察してみると、彼等は不思議な服を着ている。

中世ヨーロッパ……もしくはファンタジー風とでも言おうか。

どちらにせよ、現代日本におけるファッションとは異なる。


  ……俺は、火事によって死んだのではなかったのだろうか。

もしくは運良く救出され、今この瞬間に目が覚めた?

いや、だとしたらここはいったいどこなんだ。

見たところ病室や手術室ではない。

質素で、それでいて落ち着く雰囲気の部屋。

それに、周囲にも見知った顔は無い。


  とりあえずはこの状況について聞きたくて、俺は口を開く。


「あー、ぅあー……」


 声が出なかった。


 頭ではわかっているのに、それが言葉として喉から出てこない、変な感覚。

 喉か、もしくは舌がやられてしまったのか。

  それならせめて体を起こそうと試みるが、それも叶わない。

ただ、小さい手が伸ばされるだけ。

もしや、火事で全身に火傷を負い、寝たきりになってしまったとか……。



「小さい手」

 小さい手……?

俺は再度、伸ばした手を見た。

それは、いつも見ていた自分の手ではなかった。

一言で表すなら、そう。赤ん坊の手だ。



『……_______________。』


 言葉にならない声を発し、手を伸ばす俺を、その女性はそっと抱き上げた。

人に抱かれる感覚は久々過ぎて、俺は目を見開く。

 この女、怪力か!?

栄養不足とストレスで平均的な成人男性より若干軽いとは言え、仮にも29歳の男。

それを軽々と持ち上げた!?


  そして、それをその女性の夫と思しき男性が包み込むように抱いた。

  癖毛の茶髪に蒼い瞳。細身だが、その体に触れると引き締まった筋肉を持っているのがわかった。


 男に抱きしめられるなんて不本意なこと甚だしいが、不思議と嫌な気持ちではなかった。

むしろ、暖かくて安心してしまう。


 ああ……人ってこんなに暖かかったんだな……。


 うとうとと、薄れゆく意識の中で俺は一つの仮説を立てた。



 俺は人生をやり直すチャンスを得たのだと。





_______________俺は、転生したのだと。


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