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~八月六日(昼)~ 長部京子

 私と政樹くんは島外接触とかいう無茶苦茶な罪により互いに殺し合うという罰を受けることになった。私は政樹くんのために死んでもいいかなと思ったのだけれど、政樹くんは私に生きて欲しいと言ってくれた。お互いに自分が死んで相手が生きることを望んだ。お互いに策を巡らして自分を殺してもらうよう図ったけれど、上手くいかなかった。私と政樹くんの考えていることが悉く同じで、相手の考えていることが我が事のように把握出来てしまう。

私は息を深く吐いた。

 銃を構える。

 政樹くんは柱を背にしていた。

 政樹くんの心臓辺りに銃口を向ける。

 銃声。硝煙の匂い。

 政樹くんの身体が柱にもたれかかる。

 色々な葛藤や紆余曲折はあった。けれど結局、私は集会所から出た。眩しい太陽が目に刺さる。荒くなった呼吸を整える。

「やはり島にいるべき人間はお前じゃったの」

村長が私の近くに寄ってきた。周囲に般若はいない。もう帰ったとは思えないので近くに潜んでいるのだろう。ここから脱走したり自殺したりしたときに射殺出来るよう、近くに待機しているに違いない。


「お前なら必ず余所者の小僧を始末してくれると思って居ったぞ」

別に私が生き残っても政樹くんが生き残ってもどちらでも良いと思っていたくせに。白々しくも私に満面の笑みを見せる。

「なんでこんな罰を作ったの?」

私は村長に聞く。

「あの小僧を生かしておくわけには行かないからの。儂の考えた罰に欠点があるだの抜かしおってからに」

「もし、私が政樹くんに殺されていたらどうしたの?」

「適当な罪を着せて殺していたわい。あんな余所者の小僧生かしておけぬ」

「それは島のため?」

「そう島のため、儂の考えた罰に欠点など無いということを示すためじゃ」

本当に禄でもない村長だと思う。この島で生きてきたことに恥ずかしささえ覚える。

「私はね、この罰にも欠点があると思うの」

「何じゃと?」

悦に浸っていた村長の顔が一気に強張る。

「この罰の欠点はね」

 銃声。硝煙の匂い。

「犯罪者に銃を持たせることよ」

村長が膝を着いて倒れる。私の撃った弾丸は村長の眉間に風穴を空けた。素人ながらよく当てたものだと思う。これは即死ものだろう。

 念のためもう一発撃っておく。

「何をしている?」

近くに隠れていた般若が出てきた。二人。集会所の様子を監視カメラ越しに見ていたのだろう。私が政樹くんを殺したのを見て、猟銃を持たずにやってきた。

「動かないで」

私は般若に拳銃を向ける。般若は二人揃って手を挙げた。

「こっちは撃つ気満々だからね」

ゆっくり歩いて般若との距離を詰める。私みたいな素人の腕なら二メートルの距離でも外しそうで不安だ。

「あと二人はどこ?」

私と政樹くんを連れてきた般若は全部で四人いた。

 その時、私の背後で銃声がした。四連続。続けて人の倒れる音。

「京子さん。狙われていたよ」

政樹くんが般若二人を銃で撃ち殺していた。

「何故、お前が生きている?」

般若の一人が政樹くんの登場に驚いていた。

「あなた達は監視カメラで集会所の私達の様子を見ていたのでしょう? 私が政樹くんを撃つとき、監視カメラからは分からないように政樹くんの身体からずらして撃ったの。丁度、柱の陰に隠れて見えないようにね。あなた達がもう少し注意深かったら政樹くんの身体から血が出ていないことに気付……」

私が説明をしている途中で、政樹くんは般若のもう二人を撃ち殺した。

「長々と喋っていたら駄目だよ。殺すと決めたらすぐ殺さないと」

 そう、私達は決めた。

 お互いを殺さないといけないのならば。

 村長含め邪魔をする島の人間全員を殺そうと。


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