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6魔王、高校に編入す。③

どんどん行きます!

校舎裏から戻る途中、見覚えのある人物達がこちらに向かって来ていた。悟と薫子だ。

校舎裏の悲惨な現場を見て絶句していた。


「不良のボスがそうとうヤバい奴ってクラスメイトに聞いてきたんだが・・・・。あんた、本当に輝兄なのか?」



「何を言っているんだ、悟。俺は十年前失踪した天野輝本人だ」




「じゃあなんで金色の瞳をしているの?輝お兄ちゃん!それに自分の顔をちゃんと見てごらん。酷い顔してるわよ!」



薫子が折り畳みの手鏡を俺に向けながら言った。俺の顔は憎悪に塗れ酷い顔をしていた。

無意識であったが、根深い人間への憎悪が顔に出てしまっていて、魔法で黒に見せていた瞳も金色に戻っている。



「ブッサイクだな、俺」



人の心は弱い。大切なモノを奪われ続けてきた輝は心が壊れかけていた。

それを何とか、妹すら奪っていった王国へ復讐する事に精神を傾ける事によって、心の穴に栓をしていた。その栓が外れたら、また心が崩壊するのも当然の道理というものだ。



「輝お兄ちゃんに今まで何があったのかわからないけど、折角また、こうして出会えたんだもの。力になれる事があるのなら、私たちに相談してくれてもいいのよ」



「あぁ、そうだぜ!輝兄!薫子が言ったように、どんな事情があるかは知らないけど、辛いなら頼ってくれ」



十年前に、寂しそうに近所の公園で親の帰りを待ちながら、二人で遊んでいたガキ共が大きくなったもんだ。

俺は涙が出るのが止められなかった。本当に涙脆くなった。歳かな。



「こんな顔をしていたら、兄貴に笑われるな。ありがとう、薫子、悟。おかげで目が覚めた」



縁とは不思議なものだ。十年前のちょっとした出来事や出会いが自分を救ってくれている。

この学校に悟や薫子が入学していなければ、俺の学園生活は復讐心に取り憑かれ、何かしら問題を引き起こしていただろう。それも取り返しのつかない何か大きな問題を。



「俺たちは十年前、輝兄に感謝してるんだよ。俺たちは両親も共働きで家に居なくて、学校でも孤立してて、とても寂しかったんだ。そこに颯爽と現れて、咲姉と一緒に遊んでくれたじゃんか。家族みたいに扱ってくれて、輝兄は俺たちにとってヒーローなんだよ。薫子なんて輝兄にまだベタ惚れなんだぜ??十年もだ。クソ重い女になっちまってるよ。責任くらい取ってやりなよ」



「な、ちょっと悟!!!こんなタイミングで言わなくても!!このバカ!アホ!トンチンカン!」



なんだか、暖かい気分だ。両親との再会とは、ちょっと違う。古い友達と再会したかのような。



「お前ら相変わらず仲良いな。悟、お前が貰ってやれば解決するんじゃないか?」


「「それは嫌!!ってお前がそれを言うかーー!!!」」




最後まで見事なまでのハモりだ。本当に仲が良い。薫子の気持ちは正直嬉しい。こんな美少女に十年も思われて嬉しくない男はいないだろう。しかし、俺にはやらなければならない事がある。



異世界では王国にやられっぱなしだった。あいつらに反撃の一つもしないで、こっちで全て忘れたかのように暮らすのは、生かしてくれた兄貴達に申し訳が立たない。



悟と薫子には今までの事を話しても良いだろう。その方が事がうまくいく気がした。巻き込むようで心が痛むが巻き込まれたとしても全力で守ってやれば問題ない。



むしろ、守れないで何が魔王だ。兄貴は言っていた。

「力とは大事なものを守る為にある。それを奪う事に使うのは卑怯な奴がやる事だ。俺らが行く道を誰もが見る。王となったなら全てを守り抜く力を手に入れろ」と。

ならば、何も気にすることはない。俺はこの十年間の全てを話す事にした。



「悟、薫子、編入して早々だが話がある。長い話になるんだが、立ち話もなんだ。ちょっと学校を抜け出して座れる所に行こうか」

〜幕間〜


カシャッ!

「泣き顔の輝兄、いただきました!!」

「あ、やりやがったな」

「な、悟!!なんて事をしてるの!!後で送りなさい!画質が落ちるからメールで圧縮なしで送るのよ!絶対よ!!絶対!!」

「薫子さん、怖い!もはやストーカーだよ!!落ち着いて!!輝兄が見てる!」

「お前らな・・・。大人をあまり舐めるなよ!と」

「うわー!!!」

悟のスマートギアを一瞬で奪いデータを削除してやった。これで恥ずかしい記憶が消された。泣いた写真を撮られるなんて一生の不覚だ。

撮られた腹いせに悟のスマートギアを色々と覗いてやった。すると面白い機能を見つけた。

「輝兄!悪かった!悪かったから早く返してーー!」

「仕方ないなー。今回だけだからな。これが終わったら返してやる」

そう言うと悟と悟以上に落ち込んでいる薫子を引き寄せシャッターを切る。


カシャッ!

自撮り機能というのは便利だな。よく撮れた。

二人の驚いた顔が傑作だ。


「あ、汚ねえ!」

「あの、輝お兄ちゃん。撮るなら一言言ってからにしてほしかったかも」


思い思いのリアクションを二人がする中、悟のスマートギアに俺のアドレスを入力し、メールで写真を送っておいた。ついでに薫子のアドレスにも送ってやった。

俺から一本取るなんて百年早いというものだ悟よ。



それから一週間ほど盗撮魔と化した悟を懲らしめるのだが、それはまた別のお話、と言うことで。

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