4魔王、高校に編入す。①
少し短めで、輝視点ではありません!
高校編?スタートです!
俺は、高原悟。普通の高校二年生。
まあまあ仲の良い友達もいて、成績も悪くない。顔もまあ悪くない方だと思っている。公立高校に通う帰宅部。もっとも、そんな部活はないんだけどもね。 朝のホームルームが暇すぎたので、ラノベの冒頭でよくありそうな自己紹介を脳内でしていた。あぁ女の子でも空から降ってこないかなぁ。
とてつもなく無駄な事を考えていると、俺の前の席に座っている幼馴染、東條薫子が身体を傾け話しかけてきた。
「今日は、編入生が来るらしいわ。先生達が話してるのを職員室で聞いたの!女の子かな?男の子かな?どう思う悟?」
「まだ四月の終わりだって言うのに編入生かよ。まあ、可愛い女の子なら嬉しいかな。目の保養にもなるし」
「こんな美少女を目の前にして、そんな事を言うのは悟くらいだよ。まったく、男の子はしょーもないわね」
少し自信家だが、確かに薫子は美少女だ。黒くしなやかに伸びたロングの髪に、猫目で大きな瞳、その他パーツはそれを補うかのように整っている。小柄ながら胸も大きく、ファンクラブができるほどだ。
しかしながら、小さい頃から見慣れてすぎていて今更ドキドキもしない。昔からずっと失踪した人間を好きでいる程の一途で、お互いに恋心はなく気軽に話しかけやすい。
まあ、薫子に気軽に話しかける男子など俺くらいだろうが。
「言っとけアホチン」
そんなやり取りをしていると、周りからの視線を感じる。これもいつもの事だ。男子からの羨ましさと妬みがこもった視線が俺に突き刺さる。
中、高とその視線を受けている俺は気にならないほどに図太く育ってしまった。
担任の先生も一年と同じ人なので、毎度の事で慣れてしまっている。
「高原、東條。少し黙っててくれると先生もやりやすいんだが」
「「はーい。すいません」」
「では、編入生を紹介するぞ。待たせたな、入ってきてくれ」
ガラリとドアが開く。 皆がどのような人が来るのかドキドキしながら見守っていると、そこに居るはずのない、ありえない人物が現れた。
十年前、突然失踪した近所のお兄さん。面倒見がよく一緒に遊んだり、ご飯を作ってもらったりと世話になった。薫子の想い人でもある、その人が、失踪した時と変わらぬ容姿で現れたのだ。
他人の空似というレベルではない、漂う雰囲気まで似ている。
ありえない!!あれから十年だから、あの人が戻ってきたとしても二十七だぞ!?
驚きと混乱の中、こちらの視線に気づいたその人は不敵に笑いながら人差し指を口元に当てた。
周りの女子から悲鳴のような歓声が上がる中、薫子は驚いた顔で後ろを振り返り、涙を少し流していた。
「じゃあ、紹介するぞ。編入生の天野輝くんだ。家庭の事情でこの学校に編入してきた。皆、仲良くするように」
「天の野原に輝くで、天野輝です。皆さんよろしくお願いします。」
間違いなく、十年前に失踪した輝兄が、同い年で編入してきたのだった。