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2魔王、再会す。

遅くなってすいません。投稿できていませんでした。

 一階に降りると、掃除機の音がした。上からは全く聞こえなかったので掃除機も十年の時を経て進化しているようだ。どうやら母親がいるみたいである。

十年前は仕事へ出ていた時間なのでいないもんだと決めつけていたが、俺や妹の咲が居なくなって、お金はかからなくなったはずだ。専業主婦に戻っていても不思議ではない。



まだこっちには気づいていない。久々に見た母は、容姿は十年前と変わらない美人なままだったが、痩せこけていて、表情が抜け落ちたような生気のない目をしていた。

以前は、笑顔が似合いよく笑い、鼻歌交じりに家事をこなしていた。




自然と涙が出た。随分と俺も涙もろくなったな。

十年だ。十年という長い時は、母を変えてしまった。更には咲のこともある、正気でいられる母親などいないだろう。




声を掛けようとしたが、なんて言っていいのかわからない。ただ涙だけが溢れた。

ふと、母さんが顔を上げ目が合う。まるでその空間にスロウの魔法がかけられたかのような感覚に陥った。




どれだけ時間が経ったのかわからない。たぶん数秒の間であったが、母さんの目に光が戻り、その大きな瞳から涙が溢れ、膝から崩れ落ちた。



俺は直ぐに母さんの元へ駆け寄り優しく抱きしめた。その身体はガリガリで力を入れたら崩れてしまいそうだった。食事も喉を通ってなかったのだろう。その後は自然と言葉が出た。考えてみれば簡単なことだった。俺は家に家族の元へ帰ってきたのだ。



「ただいま、母さん。突然消えてしまってごめんなさい」



「おかえり、輝ちゃん。生きていてよかった。よかった」






それから、母さんが父さんに連絡したらすっ飛んで帰ってきた。帰ってきていきなりぶん殴って来たもんだがらびっくりだ。俺は十年もの間、両親を心配させてきた。



避けることもできたが、ぶん殴られ、その後に抱きしめられた。久々の父親の鉄拳は、痛みは感じなかったが、心に強く深く突き刺さった。



「どこをほつき歩いてたんだ輝。母さんも父さんも心配したんだぞ」

「ごめん父さん。」

「この十年間何をしていたんだ」

「それは・・・・。話すと少し長くなるけど」




少しためらいはしたが、これまでの十年間のことを包み隠さず、話すことにした。事は、咲のことも関係してくるからだ。

アースアトラスという世界に魔王により召喚されたこと、魔王は意外と気さくで魔族の国はとてもいい国であったこと、それと人間との戦争のために自分が呼ばれたこと。



最後にその戦争で咲が人間側の勇者として召喚されていたことなどを話した。洗脳されていたことと俺が魔人になったことは迷ったが隠すことにした。



最初はファンタジックな話で信じてもらえながったが、俺が物を浮かせたり、手から炎を出したりして魔法を見せて信じてもらった。



咲の話で母さんが


「じゃあ、咲ちゃんは魔王を倒したのだから少ししたら戻ってくるのね!」



と言っていたが、その可能性は低いだろう。送還用の魔法陣が出来てるかも不明だが、あの強欲な国王が折角手に入れた勇者を手放すわけがない。




長いこと日が沈むまで俺たち家族は話していた。こちらの話も色々と聞いた。俺が居なくなってから大変だったこと、その五年後に妹の咲がいなくなってしまったこと、それから両親ともに落ち込みながらもいつか戻ってくると信じ、頑張って暮らしていたこと。




母さんもそうだが、父さんもだいぶやつれて若白髪や無精髭も目立つ。相当苦労したのだろう。ひどいことをしてしまった。




しばらくすると母さんが手料理を作ってくれた。久々に食べる日本での家庭の味は涙でよくわからなかったが、兄貴達といた魔族の国とはまた違う暖かさを感じるのであった。


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