プロローグ
目が覚めると涙を流していた。周りを見渡す。見覚えのある自分の、天野輝の部屋に間違いない。俺は戻ってきたみたいだ。いや、ある人物に帰された。地球にある日本という国に。
長い夢を見させられてたみたいだ。そんな気分にさせられる。いや、どちらかと言うと悪夢か。長い、長い悪夢だった。
人の焼け焦げた臭い。城に反響する悲痛な叫び。
一つ、また一つと命の灯火が消えていく。
仲間か、敵か、もうわからない。ただただ、この地獄の様な惨劇が繰り返される。
救いも、願いも、もう届かない。
目の前でまた仲間の一人が勇敢に散っていった。
十年間という短い間であったが、ある青年にとっては故郷も同然であった。青年は必死に足掻いた。だがもう疲れてしまった。
もう、やめてもいいんじゃないか。
強力な見知らぬ魔法により力は制限され、数による一方的過ぎる蹂躙、略奪。
俺らが何をしたというのだ、人間達よ。
この戦争の先に何があるというのだ。誰か教えてくれ。豊かであった土地も田畑も荒れ果て、血と汗と涙の染み込む戦場と化してしまったではないか。
だが、青年は歩みを緩めることなく、ある場所へ向かう。
兄貴と慕い、異世界でたった一人になってしまった家族の元へ。そこには、まだ希望が残されている気がした。兄貴がまた不敵に笑って大丈夫だ、と言ってくれると信じていた。兄貴と初めて出会った玉座の間で、あの時と同じ様に・・・。