その四
突然だがこの世界にはナビゲーターの領地と称する7つの地域に分かれている。
北側にあるのが、《空》の地区と《空気》の地区。西が《光》の地区。東が《植物》の地区で、南に《大地》の地区と《電気》の地区、そして中心に《水》の地区が存在する。
そして。
今僕たちが向かっているのは水の地区だ。
水の地区には、中心部ということで開始直後に使用可能となった、向こう(もとのせかい)と連絡の取れる緊急通信センターがある。
こうして呼ばれているということは、向こうの人から連絡をしてきたのだろう。
対応したのは、場所からして水の者だと思うが。
さて。
どうしたものか。
「さあさあ、ようこそ!皆さん、水流城へ!やぁ、大地くんとエアりんさんもお久しぶり。いやぁ、今はこんな長話している暇は無いんですけどねえ、本当ですよ?あ!もしかして君は大地くんのパートナー!?そ、そして君はエアりんのパートナーかあ!いやいや、どうも初めまして。この水男アリン、お会いできてとても嬉しいですよ!!」
ヴァレイアの風魔法でひとっ飛びしてきた僕たちを迎えたのは、『水流城』とやらから出てきたアリンだった。
空からの光を受けてキラリと輝く、水色のウォータースーツのようなものを着ている。
顔立ちは少年のように幼いが、僕より年上で能天気、よく大人気ない言動を繰り返す、
…少し困った性格だ。
まあ、悪い奴じゃないが。
ちなみに、さっき言っていた『大地くん』は僕のこと、『エアりん』はヴァレイアのことだ。空気=エア だかららしい。
彼の後ろにそびえる『水流城』は、称されている通り、水の流れで城の形を作っている。
それが城のように形を保ち続けていられるのは、彼の力のせいだろう。
「それで?緊急連絡って何なんだ?」
「それがね〜社長が、時間がないから一刻も早く全員集めろって言うんでね、ぼくらも、まだ何も聞いてないんすよ。」
「社長様が?」
「そうすよ〜?」
水の流れた城の廊下を、流れにそって速足で進んでいく。
僕がアリンに質問をすれば、その答えにヴァレイアも反応した。
社長というのは、この異世界ゲーム計画を始めた張本人で、僕たちの雇い主だ。
「社長様」なんて呼ぶのはヴァレイアくらいだがな。。
「なあ、こいつらは連れてきてよかったんだよな、アリン。」
僕が後ろを必死に付いてくるルクリアとコウトを顎で示すと、同じく後ろを振り返ったヴァレイアと目が合う。
「もちろん、大歓迎だよ、部屋に行けばみんなのパートナーも一緒だよ!ちなみに僕のパートナーは、可愛い女の子だよ!」
「そんなこと聞いてないから。居ていいならいいんだ。」
「えーー」
そんな会話の後もう一度ルクリア達を振り返ると、二人とも、かなり息が上がって辛そうな表情がうかがえた。
コウトはもう、自分の足で走るのを諦めたのか、空中浮遊で足を浮かせたまま進んでいる。ルクリアは…
「おい、ルクリア、大丈夫か?」
「へ…平気、大丈夫…っぅわっ!」
言ってるそばから足がもつれて流れる水にダイブする。
「おいおい…」
「あららら、大丈夫ですかぁ?大地くんのパートナーさん。」
「起こしてあげるわ。無理に起きるとまた転ぶわよ。」
バシャンという派手な音ち他の二人も慌てて後ろを振り返る。
ヴァレイアがルクリアに近づいて両手を広げると、そこに白い輝きが生まれる。
ルクリアの体を包み込んでゆっくり浮かせ、だった状態まで持ち上げて再び水の上に足をつけさせた。
「ふー、ありがとうヴァレイア。」
「あ、あれ?濡れてない。あ、ありがとうございます!!」
「いいのよ。」
「よーし、それじゃあ行こうか!」
その様子を見ていたアリンが、急かすように声をあげる。
「あら?コウト、そんな後ろで何やってるの?早く行かないと社長様に失礼よ!」
風魔法で進んでいたために進む速度はみんなの倍以上遅い。実際、コウトは100歩ほど離れた場所にいた。
その声を聞いて慌てたコウトがスピードを上げるとどうなるか。
「きゃ!?」「どわっ」
どっしゃーん
と、こうなるのである。
歩き始めたルクリアにぶつかって、二人で盛大にこけた。
「ごめんなさい…」
「けほっ、けほ、いいいえいえそんな!」
「ヴァレイアのせいじゃないだろ、ほら、ルクリア、手を取れ。」
「すす、すみません、うちの…うちのコウトが。」
「そんな、謝らないでください、ヴァレイアさん!」
「……(やべ…)…」
「ほらほら皆さん、その辺で。コウトさん撃沈してますよ〜」
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