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その二

二話目です。

「ほら、ここが僕たちの城さ。」

「土城さん…?」

泥鰌どじょうみたく言うな。」


 目の前には、薄い色の土を固めて造られた城。土魔法で二週間かけた僕の自信作だ。


「城っていうか…塔よね。」

「うぐっ」


 ルクリアがそう言うのはごもっともだ。

 なんせ城を造れと言われても、僕はどんなものか解っていなかったし…。

 だから今目の前にある城は、少し高さが低くて、下の面積が大きい塔と言ったほうがいいのかもしれないが…。


「塔を作るつもりは無かったんだよ。」

「良いんじゃない?じゃあ今日から土塔よ。」

「音が怖い…」


 土塔、どとう?怒濤?……


「ほら、はやく中に入れてよ。」


 ルクリアが僕の肩を揺する。

 良いよ。でもその前に…


「な、何?」


 ルクリアの体をオレンジ色の光が包み込む。それから、ルクリアの体に吸収されたように外側から光が薄くなっていく。

 これが加護だ。


 ルクリアの弓と槍を包んだ光は消えることなく眩しく光っている。


「何よこれ?」

「大地の加護だ。どうせ土魔法まだろくに使えないんだろ、この塔に入り口はないからな。」

「どういうこと!」


 なんせこの塔(城のはずだった)は加護を受けるものの家になるのだ。相当な力のあるものしか入れないようにしておかないといけない。


「言葉通りさっ、と。」

「?」


 僕は言いながらルクリアの魔力に力を加え続けた。

 最後に、ルクリアの武器を、土属性に変換して、物理攻撃の威力を最大限まで強めた。


「さあ、塔の中に入ってごらん。」

「さあ、って…」


 僕は手本を見せるように、ルクリアをちらっと見た後、右手の人差し指を塔の土壁に当てて自分が通れるくらいの大きさの長方形を描いて、土壁をぽんっと押した。


「すごい、どうやって…」

「出来るよ、ルクリアもね。」


 土壁になぞった通りの長方形の穴が開く。僕は中に入って、呆然としているルクリアの前で穴を塞いだ。


「おーい、聞こえる?」

 …わけないか。

 あ、でも


「どうやるのよ〜!」


 ルクリアにはもう地中透視の能力も備わっているはずなのだ。

 なら、僕が高度な土魔法で造った壁ごしでも声は届くだろう。


「ルクリア!槍を使うと良い、その槍なら1発でいける。」

「わ、分かった…。」


 しばらくすると、土壁の内側にオレンジ色の線でちょうど良い大きさの長方形が描かれたのが見えた。


「良いぞ、押して!」

「うん。」


 土壁はあっけなく倒れるとそのまま消滅した。


「あれ、消えちゃうんだ。」

「土魔法で作れるけどな。」


 僕が壁のあった場所に手をかざすと、何事も無かったかのように壁は元通り塞がった。


「暗っ‼︎」

「あー、はは…」


 そう、暗いのだ。

 土だけで造られた建物で、窓も電気もなければ当然というものか。

 そいういわけで僕が穴を閉じた途端に真っ暗で何も見えなくなった。


「ちょっと待ってねー、…はい!」


 僕が差し出した手にぽっと光が灯る。

 僕はその光をガラス玉のような物の中に閉じ込めて、塔の一番上まで風魔法で持ち上げた。

 そうすると、塔全体が照らされて、よく見えるようになる。と言っても、まだ何も置いていないが。


「おー、見えるようになったね。アースって土魔法以外も使えたんだ。」

「なめんな」

「…ここさ、もっと綺麗にして良いよね!」

「良いけど。僕が入りにくくなるからあんまり外は変えないでよ。」


 ある日戻ったら完全に女の子部屋になってたとか勘弁だからな!

 不意に視線を下に向けると、ルクリアの武器を持つ手が震えているのが見えた。


「おい、それ、辛いか?」

「えっ…と。ちょっと、なんかビリビリする。」

「貸して」

「あ、ああ。」


 ヒョイと弓と槍を受け取ると、土魔法の魔力が弓の周りで力を放出し続けるのを感じた。


 あー、金属だからな、土属性が効きにくいんだ。でもま、こんなのは内側を土に変えれば…。


「おっけ。」


 槍は…、これも元々は風が良いんだよな。でも、中は木みたいだし、そんなに重くないから少し魔力を減らせば問題ないだろう。


「これでよし。ほら」

「わっ、ありがと。」


 魔力調節を終えて武器をルクリアに返すと、さっきより軽い笑顔で頷いた。


「なあ、なんで弓と槍なんだ?矢は?」

「槍が矢の代わりなのよ、ほら、ちょうど良いでしょ?私元々風魔法の方が憧れて…、ご、ごめんごめん、風魔法なんで使わないから!」


 風魔法が好きなのはその武器を持っている時点で判る。別に、風魔法が好きだって構わないし、使ってくれても構わないけど…


「別に。僕だって使うし良いよ。1番便利な魔法ではあるしな。さぞかしヴァレイアも喜ぶだろうよ。」

「バ、ヴァレイア?」


 ヴァレイアはナビゲーターの中の1人で、《空気》、つまりは風魔法の加護を与えられる、ついさっき僕にも、名前が決まったと、風に乗せて報せたからな。気に入ったんだろう。


「空気の人だよ、名前はさっき決まったらしい。」

「へー、なかなか良い名前じゃない?言いにくいけど…。」


「なあ、興味あったら後で一緒に会いに行かないか?別に、僕1人でも良いんだけど…」

「行く!そしたら、そのパートナーの人にも逢えるかな?」


 うーん。逢えるんじゃないか?

読んでくれてありがとうございます。

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