その一
興味を持ってくれてありがとうございます。間違って触っちゃった人も、一行だけだも見ていってください。
鮮やかな空色の髪に、パッチリと開かれた大きな青い瞳。
ターコイズとグリーンをあしらったアラビア風の衣装からスラリと伸びる手には、巨大な黄金の弓と槍が握られている。
所々で光を反射させてキラリと光るエメラルドの石は、大きなものが一つ、首から提げられた紐にも付いている。
とても豪華で華美な格好だとは思うが、ここでは、目立つ程ではない。
何故ならここは、至る人が派手な格好だからだ。
人工異世界。僕の世界にも、とうとうこの時代がやってきたーー
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「じゃあ何?君が私の案内役か、私は九六よ。一先ずよろしく。」
「あ、ああ。よろしく頼むよ。ナビゲーターNo.06 Code:大地だ。じゃあまず僕の名前を決めてくれるかな?」
人工異世界、その名の通り、人の手によって作られた別の世界。
簡単に言うと、魔法によって空間を作り出す術を知った人々が、ロールプレイングゲームのステージとして、亜空間に色々なものを詰め込んで形を作った世界だ。
この世界の自然は、ナビゲーターという名目で定められた7人がいることで、ここに存在している空、空気、光、水、植物、大地、電気のそれぞれを創り上げ、保つ力となっている。
そのうちの1人は、《大地》の土色をまとったこの僕だ。
「名前を決める?」
幸運にもその僕のナビゲートを受けることになったのがこの少女。
今この世界にいるのは、ゲームの中で最低限必要とする、この世界の住人を演じる製作スタッフと、僕たち7人が創り上げた敵役モンスターと、それから、元の世界では全く見ないような服装でゲームを楽しんでいるテストプレイヤー1万人だけだ。
その内ラッキーな7人には、クロクと同じように、ナビゲーターが付いている。
「そうさ。ナビゲーターの名前はプレイヤーが決めていいことになってるんだ。」
それと、さっきからプレイヤーと言うが、異世界というだけで、機械ではないからアバターは造れない。
その代わり、現代では専門職の人に頼めば魔法によって髪や瞳の色を変えたり、容姿の組み替えができるから、これといって普通のゲームと違いはない。
その中で僕らは、プログラムのような存在なのだろう。
元の世界でも、一般の人は魔法は使えない。
だから、それが使えたおかげで僕はこうして創造者になれたのだ。
「ーー大地になぞらえてearthはどうかしら?それが嫌ならつっちーでも良いけど。」
しばらく考え込んでいたらしいクロクは、ようやく顔を上げてそう言った。
「アースか、良いよ。それじゃあ僕の名前はアースだ。改めてよろしくね、クロク。」
「…」
「クロク?どうかした?」
「私の名前、変えて良いかしら、私もアースにつけてもらいたい。」
一瞬黙り込んだクロクが言った言葉を飲み込むのに3秒。
「え!?」
驚いて後ずさってもクロクの視線は鋭くなるばかりで。
えーと、九、六…。9月6日の誕生花はツリガネヤナギ。花言葉は正義、だったか。悪くないけど名前としてはなー。
えっと、9月の誕生石はサファイア、だけどありがちすぎても…。
6月は、スターチス、アジサイ、アリウム、アマリリス、サンダーソニア…。
あ、花といえば…
「ルクリアってどうかな。」
「ルクリア?」
「可愛いかな、と思ったんだけど。花の名前だよ。」
ルクリアはニオイザクラ、カオリザクラと呼ばれている、花言葉は優美な人、だ。
そういえばいつのまにか花の名前を考えていたな。
「…いいわ。それじゃあ仕切り直しね、よろしく、アース。」
「ああ。よろしく、ルクリア。」
僕、何回よろしくって言ったか??
苦笑しながらルクリアの手を取って、最初の目的地を告げる。
「じゃあまずは僕の城に行くよ。そしたら大地の加護を与えよう。」
ルクリアは僕に手を引かれ、落としそうになった弓を持ち直してから口を開いた。
「城?」
「ああ。ナビゲーター1人に一つの城。ちなみに僕の城は土でできた城だよ。」
「土…」
「さあ、早く行こう。」
ちなみに、大地の加護なんてカッコ良く言ってるが、ナビゲータープレイの特殊能力をゲットできるって話だ。
大地の場合は、《地中透視》《地形操作》《土魔法強化》《魔法攻撃防御》の4つ。
結構強い能力だから言っておくが、水の加護には、《水中呼吸》や《物理攻撃完全防御》なんてのもあるし、空気の加護は、《空中浮遊》が可能だ。
つまり、加護を受けられる7人は、幸運にもチート能力を手に入れられるというわけだ。
もちろん、ナビゲーターである僕たちはそれ以上のことが出来るわけだが。
「ほら早く!地中を進んでみる?」
「絶対いや!」
…なんか傷つくなぁ。
読んでくれてありがとうございます。