op09:対峙
ターシャスの森の入口についたのは、指定時間の20分前だ。緊張をほぐそうと持ってきた水筒に口をつける。
「速かったな、カイン王子」
月明かりの下、縛られたミシェイルを連れた女暗殺者が現れる。
「だめ! 逃げて!」
女が叫ぶミシェイルのみぞおちを鞘で突く。ミシェイルが地面に崩れ落ちる。
「その娘に、乱暴はするな」
「余計なことを言わなければ乱暴はしないさ。それより自分の身を案じたほうがいいと思うけど」
言い終わる前に女が間合いを詰め、剣を振るう。剣を抜く間のないカインは、剣の鞘でどうにか受け止めるが、細身のカインとは体格差が有り過ぎた。後ろに弾き飛ばされ仰向けに倒れる。
カインの目の前に剣の切っ先が突きつけられた。
「本当に来るとは思わなかったよ。たかが孤児の女の子を救う為に出て来るなんて。王族としては失格だろうけど、嫌いじゃないよ、あんたみたいな子」
「自分を殺そうとしている人に言われても嬉しくないね」
なるべく平静な顔をして減らず口をたたく。
「それじゃ、死になさい!」
ガッキン、女の構えた剣が弾かれように跳ね上がる。
「プロ目指すなら獲物を前に舌なめずりしてはいけないわよ。こうして邪魔されるからね」
ウォーハンマーを構えたリアの姿が浮かびあがる。
「く、魔法を使える人間がいるのか」
「ええ、ガイア様に愛された娘がね。カイン。ミシェイルを頼んだよ」
カインがミシェイルに向かい走る。それを追おうとした女の前にリアが立ちはだかる。
「あなたの相手は私。逃がさないから」
「ミシェイル大丈夫?」
苦しげにうめくミシェイルを抱き起こし縄をダガーで切る。
「すまない。君を巻き込んでしまった。許してくれ」
「あ、危ない…… 逃げて」
ミシェイルの呟きと共にパシッと軽い音がして、折れた矢がカインの足元に落ちる。
「隠れていて正解だったわね。カイン、向こうにある岩の陰にミシェイルを連れて行きなさい」
カインがミシェイルを抱えて岩陰に隠れるのを確認してから、森の奥に隠れている暗殺者に向き直りショートソードを左右の手に持つ。
「ガイア教の神官戦士を相手にするなら、魔法のことも頭に入れることね。飛び道具はきかないわよ」
黒装束に身を包んだ男が現れた。
「まだ、いるかもしれないぞ。可愛い神官さん」
男が馬鹿にした声で言う。
「あいにく様。岩の周りには結界を張っているから、私を倒さないと2人には手出し出来ないわよ」
「く、ならば死ね!」
男が剣を振り上げた。
カイン王子がんばるの図(笑
さて、このままラストまで連続更新していきます。