op08:約束
「カイン!待ちなさい」
外に飛び出そうとしたカインを、リアが捕まえた。
「待ちなさい。行くのは準備が終わってからよ。それに、相手はプロじゃないから何とかなると思う」
カインがリアの手を振り解こうと暴れる。
「なぜ、そんなことが分かる」
「プロだったら人質を取ったりしないわよ。強行なんかしないで見つかった時点で引いているわ。それに、歩いて15分足らずの場所に行くのに1時間くれたのよ、有効に使わなきゃ」
そこにルノアがリアのカバンを抱えて戻ってきた。
「相変らず、いろいろ入っているわね」
「備えあれば憂い無し、てね」
カバンを開くと小さ目の武具や武器がぎっしり入っている。リアが趣味と実益を兼ねて集めているコレクションの一部だ。教団の上層部は良い顔はしないが、武器のコレクションを禁止した規則が無いため黙認状態だ。
「ルノア、ガントレットぐらい付けたら? 私は鎧を着てきたし」
「鎧着ているのに、何故こんなもの持っているのよ?」
「趣味よ」
きっぱりと言い切るリア。そして、カインに細身のショートソードとダガーを渡す。
「カイン。暗殺者の相手は、私たちがする。貴方の役目はおとりとミシェイルを守ること。いいわね?」
「僕にも、戦わせてくれ」
「駄目よ。狙いは貴方だと言うことを忘れないで」
カインはまだ不満そうだ。そんなカインにルノアが静かに言う。
「私からも一つ。カイン、自己犠牲は駄目よ。貴方が死んで命が助かっても誰も喜ばないわ。貴方はその辛さを知っているわね。ギリギリまで生き残る事を優先しなさい」
「ルノア達は?」
その問いにはリアが答える。
「安心なさい。危なくなったら貴方を置いて逃げるから」
「ちょっと姉さん」
リアはルノアを無視して続ける。
「だから、貴方も危ないと思ったら逃げなさい。あ、でもミシェイルは連れて逃げてね。なんて顔しているのよ。私達が死んだら、貴方はともかくミシェイルが、悲しむじゃない」
それだけ言うと、鎧の装着を始める。
「カインごめんね。リア姉さん、あんな言い方しか出来ないから…… でも、約束。必ず4人でここに帰ってこようね」
ルノアが差し出した小指にカインが小指を絡めた。
よし、半分以上更新完了。というわけで第8部をお届けします。(全14話の予定)
フェンリア!お前何者? という感じのop08でした。
フェンリアには後に『剣の神官』というふたつ名が付きます。
ルノアふたつ名は『蒼の聖女』です。
聖魔戦記では、基本的に戦闘を行うメインキャラにはふたつ名を与えていこうと思ってます。
次回の更新は、お昼前になると思います。ひとまずお休みなさい(笑