op02:契り
目を開くと見慣れない石造りの天井が見えた。少しだけ考えて納得した。
両親を殺されて孤児となった自分を、村長がガイア教の運営する孤児院に連れてきたのだ。
身体を起こそうとすると、全身に激痛が走った。思わず声が漏れる。
「あ、気が付いた」
声と共にダークブラウンの髪と瞳をした少女が現れた。確か、リアと呼ばれていた少女だ。
「気分はどう?」
「……」
「お腹は、空いてない?」
「……」
「何か言ってよ」
「……」
はぁ、とリアはため息をついた。
「なぜ、助けたの?」
沈黙していた黒髪の少女がリアに、小さな声で聞く。
「やっと、しゃべったね。あんなところ見たら普通助けるでしょう?」
「そう……」
また沈黙が支配する。
「なにか辛い事があったんだね。でも、あの時言っていたよね。父さまと母さまは命がけで私を守ったんだって、外まで聞こえたよ。それが本当ならあなたは生きなきゃ、ね。生きて幸せにならないと駄目なんだよ。それが生きているあなたが、やらなきゃいけないことだから」
黒髪の少女の黒檀のような黒い瞳に、みるみる涙が溢れる。少女は頭から毛布を被った。
部屋の中に、少女のすすり泣く声だけが響く。
リアは少しだけすすり泣く声が落ち着いた頃に声をかけた。
「そういえば自己紹介まだだったよね。私、フェンリア=ヒルデガルド。みんなはリアと呼ぶわ、あなたは?」
「ルノア、ルノア=ティア」
「じゃあルノア。私たち姉妹にならない。私も一人なの。事故だったのだけどね。もう一人は嫌。どうかな?」
ルノアが毛布から顔を出し頷いた。
「ルノア、あなたも忘れないで私達は一人じゃない。私にはあなたが、あなたには私がいる。忘れないで。ね?」
第2話投入。
お暇なら暇つぶしにお付き合いください。