op12:戦闘 フェンリア
月下、女暗殺者の持つ剣が妖しげな銀光を放つ。リアは鋭い攻撃はウォーハンマーの柄で受けフェイントの軽い攻撃は鎧の防御力に頼り当たるに任せる。隙を見て攻撃を仕掛けるが捕らえることが出来ない。
元々、ウォーハンマーは身軽な者に対する武器ではない。基本的に円の動きでの攻撃に加え、ある程度の間合いが必要になるために懐に入られると攻撃できないのだ。
ドス!避けられたウォーハンマーが地面にめり込む。リアはウォーハンマーから手を放し、腰からハンドアックスを抜いた。
甲高い金属音が断続的に響く。軽快な動きで攻撃を加える女暗殺者、しかし重い板金鎧を着たまま、その動きについていくリアも普通じゃない。こうなると、防御力では圧倒的に有利なのだが、持久力では女暗殺者の方が有利だ。
決定打をあたえられぬまま、女暗殺者が間合いを取ろうとする。しかしリアがそれを阻止する。肩あての裏に装着した投げナイフを牽制に投げて女暗殺者の足を止める。
「なんで、神官が私より武器を携帯している?」
女暗殺者がリアに履き捨てるように言う。
「ふん、趣味よ」
リアも負けていない。すかさず言い返す。
女暗殺者が、リアのハンドアックスを剣で受け止める。リアはそのまま体重をかけ押し切ろうと力をこめる。
「さっさと降伏しなさい。ガイアの名において命の保障はするから」
「失敗したら、反逆罪でどのみち死刑だ」
「だから、ガイア教団が身柄を預かるといっているのよ。暗殺が成功したならまだしも、今なら未遂じゃない。身柄を引き渡すことはないわ」
「そんなことを言って私を騙すつもりか?」
女が剣を押し上げる。
「まさか、もちろん黒幕の正体は話してもらうし、黒幕の裁判では証言してもらう。あなたにも罪は償ってもらうわよ。命の保障はするけど甘く考えないことね」
「………」
「あんたね。少しは人の言うことを信じなさい」
リアが女暗殺者を突き飛ばし距離をとる。そして、ハンドアックスを足元に落とすと背中から1メートル20センチほどの剣を引き抜く。剣の峰にサメの歯のようなノコギリ状の大刃がついている。
「ソードブレイカー、私たちガイア教神官戦士の標準武装よ」
突如、爆発音が響きわたる。目の端で音のした方をみるとルノアの周りに白く耀く槍が浮いていた。
「あっちは、終わったようね」
言い終わる前に女暗殺者が間合いを詰めてきた。リアはその剣を剣の峰で受け止め、ノコギリ大刃の間に絡め取り、ぐいっとねじる。とたん、剣が澄んだ音をたてて折れた。
「言ったでしょう。ソードブレイカーだと…… さあ、どうするの? 次は素手でやる?」
女暗殺者がキッとリアを睨む。
「こうなったら、あんたが折れるまで付き合うわ。やるなら立ちなさい」
リアはソードブレイカーを鞘に収めて拳を突き出した。
フェンリアの戦闘スタイルは、魔法は使わない通常戦闘です。ただ武器使用のエキスパートでありこだわって使用する武器が無いということでしょうか。
あえてあげるなら『己の拳』かな(笑
もちろんフェンリアも魔法使えますよ。ルノアのように複数の術者で起動させる魔法を1人で発動させたり、複数の魔法を同時展開することは出来ませんが。
それからガイア教の神官戦士の標準武装『ソードブレイカー』ですが、実際に存在するソードブレイカーとは別物です。(機能と目的は一緒ですが)
実在するものは全長40センチほどの片手で盾代わりとして扱う小剣で、折れる剣もレイピアやサーベルなどの細身の剣に限られます。
作中のように通常の剣を叩き折ることは出来ません。