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DECOY Act3/an Outbreak

深淵にでも居るかのような部屋に一筋の光のイルミネーションと嫌に賑やかな音が鳴る。


「はい・・・もしもし」

聞くからに水を欲すように枯れた声で電話に出るのは新米刑事で田辺の二年後輩である。


"都我尻 紗流”(とがじり さる)

その声であった。


「寝起きか?わりいな」


電話を掛けてきたのは田辺浩一の直属の上司であり刑事課長の”(たちばな) (しん)である。


都我尻は寝ぼけた頭で電気のスイッのチを入れると部屋の様相が照らし出された。

清涼感溢れる青年である都我尻であったがその容姿と反面に部屋は汚い。


ハイエナが食い散らかした後の様であり、まさにジャングル野性の王国。

だがそんな部屋にも一際目立つ場所があった。

それは煌びやかなネオンで照らされた歓楽街にも似たガラスショーケースであった。


ガラス張りのショーケースには不釣り合いな昔の戦隊ヒーロー変身グッズや戦隊ヒーローのソフビ人形が大事に並べられていた。

これで分かる通り都我尻は極度の戦隊オタクである。

都我尻はその事を他人には一切他言してはいないのだが暑苦しい性格がそれを連想させる事だろう。


「仕事が仕事ですし・・しょうがないですよ」

頭を掻きながら虚ろな目でどこかを見つめる都我尻。


「回転早いじゃないか、事件だ」

少し笑いながら言う橘さんにまだ慣れない都我尻はいつも少し苛立っていた。

事件が起きたということは決して喜ばしい事などではなく、むしろ悲しい事なのだから当然である。


だがだからと言って毎度毎度泣きながら伝えろなどと言う程都我尻は頭が悪いわけでもない。


「俺の前で笑うなって言ってるでしょ?橘さん」


考える前に口に出すタイプ。

銃口を向けられれば撃つタイプ。

まさに無鉄砲の都我尻の名にふさわしく、直属上司である橘に対してこの態度である。


「おうおう悪かった悪かった」

口調は先程と一緒で悪びれる様子はなく謝罪する橘。


「田辺さんに連絡は入れたんですか?」

都我尻は思う。

{田辺さんが来なきゃ捜査にすらならない}

こう思うのも無理はなく田辺の捜査能力は折り紙付きで洞察力に優れていると署内でも有名なのである。


「連絡入れたらよ・・」

少し声のトーンが下がる橘さんの少しの変化も見逃さない都我尻。


「何かあったんですか?」

少し喰い気味に言う都我尻。


「女と居るらしい・・しかも美人だ」


「なんだそんな事か」呆れた顔で靴下を履きながら言う都我尻。


「あれ田辺好きのお前なら食いつくと思ったんだが」完全に馬鹿にして言う。

電話口からは吐息が漏れており、それが爆笑を堪えているのだと瞬間でわかる。


「尊敬ですよ!!・・・それで場所は?」

改まり襟を正しながら鏡で自分を見つめる都我尻。



「港区三丁目のポウン・ルーっていうこじゃれた喫茶店だ」


「屍街が近いですね・・殺人ですか?」

そう言う都我尻は二つ開きになった洗面所の鏡を閉じリビングへと向かう。


「BINGO!!だが少しいつもと様子が違うようだ」

少し裏がある橘の言葉。


「良くわかりませんが行けばわかるでしょう百聞は一見にしかずってね」

落ち着きながら言う都我尻は書類などをビジネスバッグへと詰め込む。


「似てきたな」


「誰にです?」

都我尻は玄関へと向かう最中足を止めた。


「田辺にだよ・・じゃあ喫茶で」

そう言うと返答も待たず橘は電話を切った。

頭に響く電話の音の名残に一瞬制止するも都我尻は少し笑顔で玄関を出て行った。


「いってきます」


そう部屋のヒーロー達に告げて・・


だが彼はまだ気づいてはいない。


心との”矛盾”を・・・・・

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