DECOY Act0/BOUND MAN
いっぱい連載やってますが全部終わらす気ありますからね。
----Act0/BOUND MAN
彼女は満開に開いた扉から隣の部屋へ顔を覗かせる。
まるで世界の終わりでも来たかのような顔で。
その四畳程の部屋ははっきり言って使っていない部屋というより物置と化している。
その乱雑な部屋は通称ゴミ部屋。
いつもは依頼書やら何に使ったのかわからない物ものもので溢れかえっているはずなのだが今日は様子が違うようだ。
「浮かない顔だな」
そう彼女に話しかけるのは少し雪が積もった様な髪の男である。
その男は妙に体格が良く、よもや一般人ではないといった様相である。
「それはおかしな表現だ、敢えて乗って言えばいつも浮いているさ」
彼女は振り返り笑顔を見せた。
その笑顔は笑顔などではなく、ただ頬の筋肉を引き上げているだけの顔。
顔には怒りや悲しみを感じる事もなく、まるで空気を吸う人間が如く、彼女にとっては生理現象。
それを表すかの様に左頬には古い傷の痕がある。
今の技術があれば簡単に消せるその古傷が彼女の揺るがぬ心情の源なのであろう。
「そうかい・・で・・・どうすんだ?」
「どうするも何も」
彼女は扉から離れ向かい合ったデスクの上から冷め切った珈琲を手に取った。
「あとはあいつがどうするかだ」
椅子に座り珈琲を一口。
眼差しは真っ直ぐでどこを差しているのかは不透明。
心情が不透明であるが彼には透明そのものだ。
「冷たいな」
彼はそう言うと少し眉を引き上げ奥へ踏みしめる様にぬるりと歩いた。
「レム・・私はいつだって」
「珈琲だよ」
被せる様に言う彼ことレムは奥のキッチン通称やかん部屋へと消えて行き、消えた数秒後には鉄の擦り切れた音と水の音と火花の散る音が聞こえた。
それを悟った彼女は珈琲の入った白と黒のストライププリントマグカップをひっそりと机に置き。
「思うように運べばいいが」
彼女は誰にも聞こえぬ音量ではっきりと言った。
それは心の吐露なのか、それとも自分自身への自問自答であるのか・・今はわからない。
一本に結った髪を解き、もう一度結び直し彼女は鉄皮面で扉の場所へと密かに足を運んだ。
ゴミ部屋には椅子に縛られ、目元を隠した男が一人。
茶瓶色ランプに照らされたその男は完全に制止していた。
「起きろ・・起きろ※※※※※※※!」
まだまだ続きます。