片思い2
清水先輩が帰った後、俺は煙草に火を付けてぼーっとしていた。
部屋には煙が立ち込めている。
俺の実家は定食屋の傍ら農業をやっている。
5人兄弟で、このご時世には多い方だ。
大学には奨学金を使って進学している。
「はぁー釣り合わないよなー…」
俺と清水先輩が付き合ったら、どうなるのだろう…。
清水先輩はお金持ちのお嬢様というイメージが強い。
実家は都心のマンションで、今住んでいる所も良い所に違いない。
俺は落胆のため息をつくと、布団に潜り込んだ。
起きるとこの時間、俺のマイフェバリットタイム、20時だ。
この時間になると、ニット帽に伊達メガネ、ジーパン、シャツ、カーディガンを着る。外出の準備だ。煙草も忘れない。
お気に入りの公園へと向かう。
「ふざけんなよっ!」俺は吠えた。
公園には「工事の為、立ち入り禁止」の標識が掲げられていた。
俺はここから、家の反対側にある公園に、向かうことにした。
長い道のりで、体の節々が痛む。野菜を食べていないことが原因なのかもしれない。最近はカップラーメンだけしか食べていないから。
いや、運動をしていないことが原因なのかもしれない。
最近、運動をしていないから。
俺の体はボロボロなのかもしれない。
「っくそ!」たかだか、2km程度じゃないか。俺は自分の体に悪態をつく。
何もかもが上手くいかないような気がしてくる。
最初に留年をしたのは、大学2年の時だ。実験が俺の人生を狂わせた。
朝が苦手な俺は、実験に遅刻していった。
遅刻した俺を待ち受けたのは、糞教授だ。
「君、今何時なのか分かってる?君のせいで僕の仕事が増えるんだ。それに実験の班の人にも、協力して貰わなくちゃならない。」
俺は実験の班の人に手伝って貰いながら、実験を終えた。終わったのは、15時頃だった。班の人も教授も仏頂面だ。
幸い13時からの授業はなかったので、この日は助かったと思った。
俺は16時40分からの授業に向かった。
一日の授業が全て終わり、英気を養おうと思い、食堂へと向かった。
食堂に着くと、カレーうどんを注文した。
この頃は、カレーうどんに唐辛子を沢山掛けて食すのに、はまっていた。
席に着こうとするときに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「まじないわー。俺、今日昼飯食べられなかったんだぜー。」
「だなー。あいつまじないわー。何て言うんだったっけ?」
「私、覚えてるよ-。確か田中達也だったと思う。」
俺は目眩がして、お盆を落としていた。飛び散る、麺、カレー。
赤く染まっていた。
飛び散った汚物と田中達弘を凝視する実験のメンバー。
俺は逃げ出していた。