平凡な毎日
「つまらない…」毎日毎日をだらだらと過ごしている。
12時を指す時計を横目に、布団にうずくまる。
携帯を手に取る。電源を入れると、画面にはサイトからの着信があるのみ。
テレビはつけたままで、アナウンサーが映し出されている。
子供の頃はアナウンサーに成りたいと思っていた時があった。
親が俺を見たら、「お前は社会の屑だ!」「そんな子に育てた覚えは無い!」というに決まっている。最低だ。
大学は留年を2回繰り返した。研究室には来るのは、馬鹿かキモいオタクとかだ。
高校入学後、アナウンサーに成りたいと思った俺はテレビ会社の募集に応募した。オーディションでは、有名私立の連中がごろごろ集まっていた。
「私の夢はアナウンサーを通して、元気な一日を皆に届けたいです!」
「僕の夢は世界各地を回って、世界の実情を皆に知らせたいです!」
など、バイタリティ溢れる志望動機の数々だった。
俺はオーディションの採用担当に志望動機を見せると、鼻で笑われた。
「君の志望動機には、アナウンサーになって、夢を叶えたいとあるけど、何を叶えたいの?」
「僕はアナウンサーになって、クリエイティブな仕事をして…」
「それで…?」
「クリエイティブな仕事すれば、視聴率が上がると思う…」
「君は自分のことしか考えていないんじゃないかな。友達はいる?」
「あんたはいるのかよ!」
「どうしたんだ!?」
俺は赤ら顔で、オーディションから抜け出していた。
その後は帰って、寝た。
気付くと、外は真っ暗だ。俺はこの時間になると、外に出る。
この日も公園に向かった。公園に着くと、煙草をふかす。
こうしながら、通行人を眺めるのが落ち着く。
通行人の中に見慣れた顔が目に付いた。俺は急いで煙草の火を消した。
見知った顔は長田先生、通り過ぎていった。
研究室の先生だ。見つかったらまずい。また説教を受ける羽目になるからな。長田先生は留年している俺によく声を掛けてくれる。
長田研を選んだのは、これが理由だ。
人情溢れる先生だが、話が長いのが玉に瑕。でも、憎めない先生なのだ。
俺は一息ついてから、家路についた。