貴族のお帰り
あのとんでもない道を通り抜けた俺たちは、王都についた。
なんというか、もうあの師匠には頼りたくないと思った。
あの人だけには、選択をさせてはいけない。
で、今回こんなところに来たのは、商売の為らしい。
「こんなのはいかがでしょうか?」
「そこのやつって何?」
「おっこれいいな。」
「ほほう。お目が高い。そちらは―」
とかやってる。その間俺はとくになにもせず、店を見て回っていた。
一応、銀貨は数枚もっている。
硬貨はだいたい銅貨・銀貨・金貨に分かれていて、それぞれ100ずつで繰り上がる。
銅貨100枚で銀貨一枚分とかそんな感じ。
もうちょっと細かいのとか、金貨のさらに上の硬貨とかあるが、本で手に入れた半端な知識だ。
基本あの師匠は工業魔術しか教えないからな。やはり本は偉大だ。
「ん?外が騒がしいな」
そうつぶやく俺。それを聞いたこの店の親父は、
「おう、しらねえのか?坊主。今日はヘルクス家が旅から帰ってくる日だ」
「ヘルクス家?」
「それもしらねえかい?」
「いや、しってる」
いくら平地に建っている家でも詩人は通るし、仮にも師匠は魔術工業者なんだから情報は来る。ちなみに俺が憶えたこの世界の言語は世界でもっとも使われるんだとか。
さて、ヘルクス家とは名のある貴族家だ。たしか、伯爵くらいの地位だったような・・・。
20年前、シャルという女性は戦争ですごい活躍をして、商売がうまかった。今現在のこの国は敵国と合併して新しく生まれたそうな。
敵国に一人で侵入し、お守りの兵を無力化。そして王を説得。
敵国とこの国を合併させるということをほぼ一人で成したという偉業を果たした。
こんな偉業を果たした者に報酬が出ないわけがなく、膨大な金と苗字を手に入れ、爵位までもって、さらに公爵までの地位を手に入れた。が、本人は伯爵で言いといい、自ら爵位を下げた。理由は、
「そこまでの地位を手に入れたら、王族に嫁がされてしまうではありませんか」
らしい。
その発言に国中の貴族や商人などが驚いた。自分の利益になることはいままで蹴ったことがない彼女が、
地位を手にいれ、さらには王族を夫に出来、自分も王族になれるというのに、それを蹴ったのだ。
そのことに王が「なんと欲がないことだ!」と喜んだらしい。
その後結婚し子供を産む。現在そのシャルは外国へ出勤だとか。
「で、今日帰ってきたのは息子のルア様なんだと。」
「へぇ」
息子と一緒に仕事をしていると聞いたが、本当だったか。
一応貴族なんだし様づけのほうがいいか?オヤジも様づけだし。
「シャル様はまだ帰られないのか?」
「ああ、1年後にかえってくるらしい」
「ふぅん。まあ、オヤジ、ありがとな。あ、これ買うわ」
「おうよ。銀貨3枚と銅貨20。」
「はいよっと」
「おう、まいどあり」
外に出てみるとこれまたすごいさわぎだ。
わああああああ!!とか
ルア様!!とか
すごい。
そのルアはわざわざ馬車から出ていて、手を振りながら歩いている。
あ、あれかなり無理して顔つくってんな。笑顔がぎちこない。だが俺以外だれも気づいてないご様子。
ルアは顔のつくりはいいし、目つきは優しい。髪が紫だ。目も紫なのか?俺の知る限り、この世界の
人は髪と目の色が違うっていうのはかなり珍しい。あ、うしろ髪を結んでるな。ちょっと顔が女っぽい。
女装できんじゃね?あれ。
「よう、そんなにあの貴族が気に入ったか?」
「おう、師匠じゃあありまっせんか。というか手にもっているその薄い本は何だ」
「お、これか?これは・・・大人の事情だ!」
「腐女子・・・いや腐婦人が」
「そろそろお帰りになられたらどうです?」
「おお、そうだな。帰るぞソーラ」
「はいっとライク」
まあ、帰りはさすがに森には行かんかったよ?
爵位は上から、
公爵、侯爵、伯爵、男爵、子爵
の順らしい。