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―いよいよ旅立ちです―①

 国連デヌリーク市国対策会議には最初から強行派は存在した。と言うよりもいきなり三千人が殺され特殊な形態の国家とは言え一つの国が乗っ取られ、それがヴァンパイアと言う得体の知れない人外の存在だったのだからスクランブルで攻撃してもおかしくは無い。


 なまじ国ごとヴァンパイアの手に落ちてそれを取り戻そうとする国民がいなかった為に論点が定まら無かった経緯も有るし、何よりヨーロッパの盟主大英帝国が反対とは言わないまでも冷静な対応を呼びかけたのが大きい。


 そこで動きが止まったあげくに大国ロシア連邦が反対の姿勢を示したのだ。強行派はとりあえず静観に切り替わり前面に様子見と話し合いの方向を探る穏健派が出てきて現場を仕切っていたが、接触したヴァンパイア達があっさりと狂っているのを見てやはり攻撃しか無いと言う勢力が盛り返して来ていた。


「この際歴史的建造物がどうこうとか言ってる場合では無い。地対地ミサイルの100発も打ち込んでやればいいじゃないか」


「ミサイルにしても直撃させなければ意味は無い。しかし建物から出られたら我々に止める術は無いのですよ」


 ロシア連邦の特使がなだめるように切り返している。彼にしたところで実際にヴァンパイアと会った事がある訳では無く諜報部のヴァンパイア担当と言うべきミロシェビッチの長々とした講義の受け売りに過ぎない。


「なら核でもぶち込むか。辺り一帯消し飛ばせば奴らだってただでは済むまい。」


 誰でも思いつく極論だった。それでも確実に潰せるのならいい。生き残られたりもっと単純に他に仲間がいたらどうするのだ?


「その案は封印しましょう。後片付けも大変ですしね。やはり現実的には地上部隊による包囲で全方向から一斉攻撃でしょうか」


「通常兵器が役に立つのか?」


「少なくともマシンガンでアンデットは倒せますよ。日本のチームが実戦済みです。」


「そういえばあの国はまだ派遣に応じ無いのか? ええっと今回はなんだ? PKOとは言わないしな。うう、面倒な、今は公式な場では無かったかな。とにかくその連中は呼べないのか? 軍人だろう?」


「日本はディフェンスコマンダーですよ。いずれにせよ国家のチームでは無くデヌリーク市国直属の組織員だったようです。倒したのもヴァンパイアでは無くアンデットです。自衛隊、大英帝国軍、ロシア連邦軍やアメリカ軍がほぼ全滅に近い戦況で超法規的に武器使用を許可された民間人と言う立場ですね。なんでもマシンガンのフルバーストを80M先の一点にミリと狂わずに集弾する者がいるとか」


「そんな曲芸の様な真似が可能なのか?」


「わかりません。しかし他の隊員が身体を張ってアンデットの足を止めた瞬間に弾を浴びせるのだそうです。他の隊員との5センチの隙間からフルバーストを全弾必中させると言うのは想像を超えています。デヌリーク侵攻の前夜に日本でアンデットによる殺人行為が有りましてその戦闘を終了させた後は行方不明ですが」


 アメリカの諜報担当として派遣された男だった。今回、アメリカは早期から事態に介入はしていたがそれほど積極的には動いていない。アメリカもイレスシス教大国でありその信者は人口に対し最も高い比率を占めるが、ヨーロッパのイレスシス教とは教義が少し違うのだ。


 もちろんイレスシス教の本山と言うべきデヌリーク市国を救うのはやぶさかでは無いが、致命的なのは教国を救っても貿易相手でも資源産出国でも無く当然布教先にもなり得ないのでメリットが無い。


 誰一人提議しないので表面化しないが教国を救う為の予算を付ける道理が無いのだ。これがヒトによる虐殺行為なら人道に対する罪も被せられるがヴァンパイアでは地球外生命体の侵略と名を変えた方がまだ通りが良い位だ。


 アメリカにおいてもアメリカのイレスシス教にとって旧教義と言えるヨーロッパ式を信仰するヒトはいるものの議員や有力者には少なかったのも派兵議論が高まらない理由かも知れない。


 日本のアンデット渦に特殊部隊を派遣した経緯でその後の状況も自動的に追跡調査の対象になっていた。なにしろ優秀な特殊部隊30名以上がなんの戦果も無く殲滅させられた状況をたった一人の少女が変えたのだ。ヒトが惨殺されているのに何故か最初からシークレット性を高く求められたのも今では理解出来る。


 アンデットはヴァンパイアが作り出すことを知っていた日本の有力な何者かは当然忍者と呼ばれる一団がヴァンパイアで有ることも承知しており、万一日本国とヴァンパイアのつながりとアンデット渦が結び付いたとき非難の対象が政府に向く事を恐れたのだろう。


 デヌリーク市国がこうなってしまった後でさえ、日本が前進、後退、静観までどんな方針も示せ無いのはさすがに国家としてどうなのか? とも思う。それでもアメリカとしては自国のヴァンパイア集団と共に忍者と呼ばれた集団への接触活動も独自に始めてはいた。


「その連中を探してはいるのかね?」


「日本政府が庇護しているのでも確保しようとしているのでも無いことは分かっています。探しているのかと問われれば、多少は、と言った程度ですね」


「日本国政府に話しを通して我々も探そう。数少ない対ヴァンパイア戦経験者だからな」


「ヴァンパイアでは無くアンデットです」


「それはどう違うんだ?」


「貴方は昨日のブリーフィングを聞いていないのですか? マシンガン少女は探すとしてとにかく直近の対応を検討すべきでは?」


 ブリーフィングにおいて現在ヴァンパイアとアンデットについて分かっている事、つまり詳しい事は何も分からないが、この両者は違う存在らしい事は共通認識として説明されていたのだ。


「やはり地上戦闘部隊を展開させましょう。奴らは外に出て行こうとしていない。出ようと思えば我々には止める術は無いと思われます。理由が有るのか無いのか知りませんが立て籠っている今はチャンスです」


「もし、地上部隊を派遣するとしたらどの程度の時間で可能かな?」


「すでにスタンバイは指示しています。ここスエリに参集させるのは1日で可能でしょう。攻撃決議から3日で現地展開は可能ですし先にスエリ国内に部隊を集めておけば次の日には展開出来ます。中東どころかバルカンよりも近いのですから」


「そうか。ならば皆さん、まずは戦闘部隊をスエリ国内に集めておいてはいかがでしょうか。即応態勢と言う訳です」


「駐留が長引くと予算の問題も出てきますよ?」


「その時は」


 議長役の様な立場になっていた出席者はニヤリとしながら


「開戦すればいいじゃないですか」



 メイリ、イリーシャス、皇成、綾奈と彦助は大きめのテーブルを囲んで椅子に座っていた。


「メイリ様、彦助さんの一族が今回の一件にどういう立場をとるかは本日夕方までに結論するそうです」


 イリーシャスが報告する。皇成の前でだ。朝起きて皇成とイリーシャスが始めて顔を合わせた時


「おはようございます、皇成」


 と挨拶された皇成は


「ああ、おはようございます。ってあれ?」


 頭に違和感は有るが、わずかで有るし声を聞いているときだけだ。確実にダンピレス化は進行したようだが、一緒にいたメイリに


「大丈夫だが違和感は有るな」


 と告げると


「そう。やっぱり完全にダンピレス化させる事はできなかったのね。でもかなり近づいているのは間違いないみたい。研究レポートにまとめようかしら」


「つか、メイリはイリーシャスさんになんでもかんでも報告しているのか?」


 状況を把握してもらう事に抵抗は無いが、昨日は首から吸っていたことでその姿勢だとか行為そのものがはずかしい感じもある皇成だ。それを逐一描写報告されているのでは善し悪しは別にしてもイリーシャスの顔をまともに見れない気がする。


「なんにも。こう言うことで、ましてこんな近くにいてイリーに隠す事なんて不可能よ。いちいち報告なんてしなくてもみいんなお見通しと思った方が早いわ。でも、そお。だめだったのねん」


 落胆しても良さそうだがメイリはあまり気にして無いようだった。


 ヴァンパイアは基本的に頭がいいので研究として自らを対象に選びその宣言をした者には出来るだけ協力する習慣がある。


 もともと禁忌ゆえにダンピレス研究はなされていないらしいがもとよりダンピレスを作り出したところで誰に糾弾される訳でも無い。この機会を詳細に書き留める事に意義は有るのかも知れない。


「それじゃイリーシャスさんの声を聞いて違和感が無くなったら報告すればいいかな」


「それは有りません。皇成がダンピレス化した後は指向性攻撃にて狙い撃ちに影響を与え続けます。少なくとも二人きりの状況において私の声を何の問題も無く聞ける日なんて来ません」


「どうしてそんな事するの?」


 イリーシャスの重大発言に困惑する皇成の前であっけらかんと聞き正すメイリ。


「皇成が嫌いだからです」


 しかし皇成にはイリーシャスが自分を嫌っている感じはしない。確かに拒絶の意識は感じるが憎いや嫌いとは全く違う単に相入れない、それでも気が合わないとも違う不思議な拒絶だ。


 皇成は自然と相手の心を理解するヴァンパイアの能力を使っている事にも気づかず


「いや、そんなにはっきり言われても。一緒にいたくない、って事ですか?」


 心から、言葉の本当の意味で嫌っている訳では無いことを確信するゆえにヒト同士なら問い難い事でも問い正す事が出来る。イリーシャスの発言にも興味を持ちながら皇成の発現ぶりにも少し満足しているメイリ。


「いえ、共に行動する事はかまいません。むしろ歓迎します。単に嫌いなだけです」


 意味分からん、と疑問符だらけの皇成に構わずメイリも質問する。


「でも指向性って私たちがいる中で皇成にだけ攻撃波を送るって事でしょ? そんなこと出来るの?」


「出来ません。これから研究します」


 そこまでして、と頭を抱える皇成にも深く気にする事では無い、と言う認識はある。


「いまさらだがメイリはこれからどうするつもりなんだ?」


 皇成の質問はしかし実は素直な疑問でもある。ダンピレス化することで単にヒトが殺されたと言う事実だけの怒りが薄まって来ているのかもしれない。


「コムネナを滅する。アーニアもね。このままだとヴァンパイア全体がヒトの敵になってしまう。ヴァンパイア側としてはそれでも構わないと考える者もいるでしょうけど私は嫌よ。もっともいまさらコムネナを排除したところで責任はヴァンパイア全体で取らされる可能性も高いけどね」


「それはそうですね。我々もそこの問題に尽きます。昔から共存してきたとは言え人類社会はヒトのものですから我々全体が排除されるでしょう」


 いつのまにか現れていた彦助が応じる。


「しかしヴァンパイアはヒトが転換してなるのなら一概に異種族とも言えないとも言えるんじゃないかな。ダンピレスの立場が微妙だが俺だって一週間前まではただのヒトだった訳だし」


 皇成がコメントするとメイリの顔が輝きうるんだ目で皇成を見つめながら


「皇成ちゃあん、やっと脳みそにヴァンパイアエキスが届いたのね? 作戦行動以外でまともな意見を聞いたの初めてだわあ。うんうん、よかったよかった」


 目がうるんでるどころか本当に涙を流し始めたメイリを見て皇成は


「俺ってそんなにバカっぽかったのかな」


 と素に考えてしまう。彦助が


「ヒトはいさかう動物です。国同士や肌の色が違うのならまだしもですが、隣村の住人と言うだけで憎しみ合う事が出来る。ヴァンパイアがいっそ宇宙人ならその能力の高さからまず和睦の道を探り出すかも知れませんがなまじヒトの変化、当然外見はヒトと全く変わらないのに突出して優れていればとことん憎んでくるのは目に見えている。世界規模の魔女狩りですよ。いくらヴァンパイアが強くても食事だってしなくてはいけないし寝る所も必要です。やはりヒトとは良好な関係で無ければとても生きにくくなります。ただ、生きて行けないとは思えないところにも問題は有りますがね」


「仮にヴァンパイアとヒトが全面戦争になってもヴァンパイアがどこかに小国を構えるか各国に治外法権の区域を作らせるかどちらかだろう。今いるヴァンパイアを全て滅ぼしたとしてもヒトからヴァンパイアが生まれる限り全滅と言うゴールもありえない。最終的に共存になるとしてもそこに辿り着くまでに流れる血の量が問題だよな」


 この皇成の弁にワンワン、と言うレベルで本当に泣き出したメイリ。


「よかったよお。よかったよお。これで皇成ちゃんも立派に……」


「もうそれはいいから……」


「とにかくアンデットは潰さなくてはなりません。アンデットの能力は作り出したヴァンパイアによりますからこの騒ぎが終結すれば集団行動をとれるアンデットなど二度と現れないでしょう。コムネナ様の一団が存在すればまた増やす事は出来るのでしょうが、まずは既存のアンデット共を殲滅する事を念頭に置けば良いのでは無いでしょうか」


 イリーシャスはコムネナを的にした議論に結論が出ない事を看破している。チームメイリの方針としてもっとも現実的な行動目標と言える意見をすっきりと提起していた。


「そうですね。第一コムネナとまともにやりあって勝てるかどうかも分からない。もちろん勝てる陣容を整えて行くべきでしょうがね。それでは我々はそれに協力するかどうかも結論出来る様にしましょう」


 彦助が言い話しはひとまずまとまった。


「それじゃ今日のお稽古いきましょっかあ。今日は私もやるわよお。イリー、手加減なしね。綾奈ちゃんにも教えたい事があるのよね」


「えっ? なんですか?」


「剣よ剣。確かにマシンガンは有効だし状況によっては最強だと思うけど弾だって無限に持ち歩く訳にはいかないし万一切れた状態で戦闘の真っ只中だったら、分かるでしょ? 一振りでいいから使えれば全く違ってくるわ」


「一振りでもって普通は皆一振りだぞ? 二刀流なんて小説のダークっぽい侍しかいないぞ。ましてあんな曲芸じみた……」


 皇成がぶつぶつと混ぜ返していると


「皇成ちゃあん、ぜひ私の剣術とお手合わせ願いたいわあ。今度はギッタギタに切り裂いてあげるわよん」


「いや技術的には興味は有るが遠慮しとくよ。ギリギリ治りの遅い深さで切られそうだ」


「私やります。教えて下さい」


 なおもごちゃごちゃ言い合っている二人をよそに綾奈が元気良く宣言する。


「それでは武器を選びましょう。基本的な部分は私が教えます。綾奈様、行きましょう」


「どれ、私も何かアドバイス出来るかも知れません。ご一緒しますよ」


 イリーシャスや彦助まで二人を無視してさっさと席を立つ。そんな中でも皇成とメイリはこづき合いまで始めて戯れていた。


 やっとじゃれあいを止めた二人がいつもの大部屋に顔を出すと綾奈は大振りの剣を背中に背負っている。


「おいおいそれは重く無いか? いくら発現して力が上がっていると言っても」


「軽いんだよ。持ってみなよ」


 すでに抜き方はさまになっている綾奈から剣を受け取る皇成。


「うっ確かに軽いがそれでも結構有るな。振れるのか?」


 皇成も両手で持てば有効な武器として使いこなせそうだが果たして綾奈に扱えるのか?


「そう?」


 と言って剣を受け取った綾奈は片手で軽々素振りをする。


「!」


 これには皇成も驚いた。


「完全に発現したのか?」


「いえ、綾奈さんはまだヒトですよ。由香里、いえアーニアの血筋、つまり我々と良く似た戻りです。ヴァンパイアの力を自由に出し入れ出来る段階ですね。もちろん発現した方がさらにパワーが上がりますが必要な分は出せるみたいですね」


 彦助が注釈するが皇成はもう一つ納得しない。


「なら俺だってメイリの血筋なんだからそんな便利に力を使えてもいいだろうに」


「もともとその辺りは個人差も有りますよ。メイリさんもイリーシャスさんも戻り自体経験していないんですからね。第一貴方はキレればいいじゃ無いですか。一番タチの悪いパターンですがね」


「なんだよそれは」


 皇成の不満をよそに綾奈とイリーシャスが立合いを始める。


「そうです。剣の身に意識を集中して身体から出た電流を纏い着かせる様に。反応が良くなる様に設計されていますから」


「はい」


 軽く素振りしながら刀身を見つめる綾奈。2分もすると刃の辺りが白く輝き始める。


「そうです。私に打ち込んで見て下さい」


 言ってからイリーシャスは自分の剣を振り上げて顔の前で斜めに静止させて構えをとる。


「えいっ!」


 鋭い打ち込みだ。綾奈は剣術は素人同然だが体術は一通りマスターしている。ヒトのまま屈強な兵士と戦っても遅れを取る事は無い程度には、だ。それでも筋力的な力の差を考えれば抜群のセンスと言える。


「セイッセイッセイッ」


 コツを掴んだのか形も美しく見える。


「そうです。剣の重みに逆らわず振り抜いて構いませからすぐ切り返して」


 20分程打ち合うと


「やめっ」


 とイリーシャスが鋭く発する。


「素晴らしいです。格闘の動きが剣に無駄も与えていますが力は乗っています。素手のアンデット相手なら直ぐにでも戦えるでしょう。メイリ様を思い出します。メイリ様は格闘技の経験も無いのに最初から無茶苦茶に振り回してそれがまたいい具合でお強くなって行きました。当時は天性の野蛮人だとつくづく……」


「ちょっとイリー? そんな事思っていたの? いつも無表情で黙って相手していたクセに」


「いえメイリ様の異常な戦闘センスを見込んでエリコムの開発スタッフに推薦したのは私なので」


「基本的にはお褒めの言葉だと思うけど異常って言うな異常って」


 今まで喋ら無かったのでイリーシャスの性格は皇成も綾奈も良く分かっていなかった。 が、


「「イリーシャスさんて面白い」」


 と共通して心の内で叫んでいた。


「さって次は私ね。皇成、相手して」


「おっ俺でいいのか?」


「ちょっとお。一回勝った位で最強にでもなったつもりい? 手加減したら腹にぶっ刺すからね、もう簡単には死なないんだから」


「いやそれでもイタイだろ」


「それならこいつを試して下さい。双剣とは相性いいですよ」


 彦助が黒い棒の1/4位の位置にまっすぐ枝が出たような武具を出してくる。枝の先には丸い球が付いていてそこを握る手のすっぽ抜けを防止している。表面はカーボンの様だがかなり重い。


「表面は超硬質カーボンを巻き付けていますが中身は無垢のステンレスですよ。当然剣類の様に相手を切り捨てることは出来ませんが敵が剣だった場合は剣で対抗するより処理しやすいです。ナイフはお得意な様ですから両方装備出来れば接近戦では相当有利ですよ」


「トンファーですね。一応使った事はありますよ。確か木製でこんなに重くは無かったですけどね」


「ヴァンパイア用ですから。これでどうです?」


 彦助から何かが放たれると同時に皇成は身体が浮くような感覚と共にトンファーの重さが消えている事を認識する。彦助の気によってダンピレス化したのだ。


「ムム」


 主軸の短い方を上にして軽く腕を振ってみる。重さは全く障害にならない。


「んっ」


 握りを軸に主軸をクルリと180度回転させ長い方を上にする。80センチ位だろうか。短剣はもちろん、長剣に対しても十分なアドバンテージだ。


 主軸の短い方を直接握り構えをとる。短い方の先端にもいくらか小さい球がついてすっぽ抜けを防ぎ表面はザラついている。






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