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―見つかって良かった?のかな?―②

「温泉、行きたいなあ」


 昨日、皇成とイリーシャスの二人で買い物に出た。車で一時間は下らないと店が無いので留守を心配した皇成は一人で行くつもりだったが女性3人分の買い物リストを見て二度と目をやる事の出来ないメニューに早々と諦め綾奈と行く事にしていた。


 が、綾奈は看病疲れが出たのか調子を崩してしまったのだ。


 どんな病気だとしても移してもらう自信が無い、とまで言い切るメイリと添い寝して休む事になった綾奈の代わりにイリーシャスと出掛ける事になったのだ。


 皇成は綾奈もメイリも強いとは言え病気中と病み上がりに留守が心配だったが


「昨日まで最弱だったのが一回勝ったら最強気取りい?」


 との憎まれ口にしぶしぶこのメンバーになった。一言も喋らないイリーシャスとの車の中で密室2時間+αの時間ははそれなりに思い出深いものになったが、帰り道にエリコム第2敷地からさらに先に温泉地が有る看板を見つけた事を戻ってから話題にしてしまったのだ。


 皇成達が帰る頃にはすっかり調子を取り戻した綾奈がシャワーばかりの入浴に飽きて激しく温泉行き希望を主張していた。


「俺達は遊んでる訳でも旅行に来てる訳でも無いんだぞ」


「だってえ」


「まっいいじゃないの皇成ちゃん。私の全開祝いにプレゼントしてあげよ」


 日本語として微妙なズレを感じるメイリの発言だ。


 メイリの気遣いもあって大分気にしなくなれる様になってきた皇成だが確信的に触れられるとキツイ。というよりこの先何年でもこの話題には負けるだろう。


「ううん。イリーシャスさん、どう思う?」


 皇成は頭痛を覚悟してイリーシャスにも確認する。


「誰かに襲われるのならここにいても同じです。入浴中はまずいですが移動中などは備えをする事でむしろ動きがいいかも知れません。入浴中に関しては私は残って警戒に当たりますからなるべく短い時間で済ますのなら大丈夫では無いでしょうか」


「ええ? イリーさん入らないの? つまんない」


「そうだな。俺も周辺を警戒しよう」


「皇成はお風呂に入りなさい。キレて無い皇成、マシンガンを持たない綾奈ちゃん、そして今の私だったら3人とイリーシャスで同じ強さよ。てか、皇成ちゃんなんてキレてなければ数入らないしねえ」


 言ってからケタケタ笑うメイリがこうして全てを冗談扱いにしてしまおうという思惑は、目に見えいても嬉しかった。


「とにかく行こうよぉ」


 皇成は子供返りが始まった綾奈をあやしながら仕方なく準備を始める。


 マシンガンや剣はもちろん、食料まで積み込む。作業を続けながら


「考えてみたら常にこういった準備をしておくのも必要だな」


 と皇成は一人ごちる。


 イリーシャス用の武器も剣だ。運転はイリーシャスが行うので助手席に乗る皇成の足元に置く。


 1時間ほどで準備を終えると出発した。門は社屋に誰もいないので手開けだ。メイリが降りたが試しに皇成も挑戦してみる。が、


「だから皇成ちゃんはキレて無ければただのヒトよん」


 とメイリに言われすごすご車に戻る羽目になっただけだった。イリーシャスは皇成達が来る前に周辺を調べており温泉まで車で30分位で有ることを知っていた。


 イリーシャスは一応皇成に気遣い皇成の前では喋らないが、綾奈は影響を受けない事が分かって3人では結構お喋りをしているらしい。車の中で


「しかしイリーシャスさんが普段喋れるのに喋べらないのは考えてそれほど有り得なくも無いよな。見た感じ外国人だし日本語が分からないから喋らない事は有るだろうしな。」


 皇成も幼い頃外国にいたので英語は解する。それでも海外でイリーシャスの立場ならわざわざ喋らないかも知れないと思った。


「それより驚いたのは女性だった事だよ。なぜそうしてるかはメイリも知らないんだから聞かないけどさ」


 昨日の買い物でイリーシャスも自分の着替えを買って着ている。黒を基調とした基本的には男物だが女性だと知った今はボーイッシュなお洒落とも見える。


「まっもともと、なんてか、顔はきれいだし今思えば髪も長めだしね。最初から男物のスーツを着て似合ってたってだけで男だとは紹介されていないしな。こう言っちゃなんだがもっと、こう、出るとこ出てると誤魔化しようが無いんだろうけどな。あっでもメイリだってちょっと何かすれば分からなくなりそうだからなぁ」


 言いながらメイリは髪が長いから誤魔化せ無い、と言いそうになったが慌てて言葉を飲み込む。今は皇成に受けた傷の治療の為に傷の辺りは一度髪を全部剃りあげて、合わせる様に他の部分も肩程度に切り詰めていた。頭に巻いた包帯は本来もう必要なくその見苦しさを隠す為だ。


「すぐ伸びるしちょうどいいタイミングよ。気にしないで」


 と普通に言われており、確かにすぐ伸びるだろうし本当に気にしていない風なので皇成もそれほど気にしていなかったが、ちょうどいいタイミングだった訳は絶対に無い。


 しかし皇成が気にすべきは髪の話題を避ける事ではなかったのだ。


「ちょっと皇成ちゃあん? 今の発言はどういう意味かしらあ? 私でも誤魔化せるってなにおう? 大きなお世話通り越して喧嘩お売りになってますう? 綾奈ちゃんまで巻き込んで私たち3人を敵に回すつもりねえ?」


「えっなになに? なんで私?」


「お兄ちゃんはねえ、私達3人は出るトコの出かたが少ないねえ、とおっしゃったのよお。これって大きなお世話だと思う? それとも喧嘩をお売りになってらっしゃると思う?」


「いや待て。綾奈の事など一言も言ってないぞ? つか別にそれが悪いとは言ったつもり無いしな」


「それってなあにそれってえ。はっきり言いなさいよ、胸が小さいのわってねえ。ねえ綾奈ちゃん? こんな挑戦されてどう思うう?」


「あのメイリさん? 確かにお兄ちゃんは私には言ってませんよ? 確かに発言内容には敵対心が湧きますがストレートに私を巻き込んだメイリさんもちょっとアレです。第一お二人と違って発育中ですし」


「あら? いくら綾奈ちゃんでも聞き捨てならない事言うわね。私の見るところ少なくとも大きくなる事はなさそうな感じがするけど?」


 何となく話題を、と考えて始めた話しに失言が含まれていた事を悟った皇成が一度も喧嘩した事の無い綾奈とメイリが言い合いを始めそうになるのを慌てて止めようとする。


 綾奈が何か言い募るのを遮ろうとした時に腕に強い痛みを感じる。驚いて右腕を見るとザクッと運転中のイリーシャスが太めの錐刀のような刃物で皇成の腕を刺していた。


「訓練です。この程度の傷なら温泉に着くまでに治して下さい。やる事が無いからそんな下らない話しをするのです。ダンピレスなら造作も無いはずです」


 イリーシャスが小声ながらはっきりした口調で告げる。一瞬驚いたメイリも


「そうねえ。余計な心配している時間が有ったら力の開発を急がなきゃねえ。そうそう、戦いながらは難しいけど落ち着いて傷口の補修に集中すると治りは100倍早いわよお。」


 これまた一瞬意味が掴めず抗議の声を上げようとした綾奈だが、ダンピレスにとっては大した怪我の内に入らないと悟ると


「へええ。お兄ちゃん修行中だね。私は嫌だな。まだヒトだから無理だし」


「だから俺もヒトだってば。これは痛てえよ。ひでえよ」


 イリーシャスの声でガンガンする頭を押さえながら抗議する。


 錐刀は本来非常に細く刺しても血を出さずに心臓を刺し貫いたりする暗殺武器だ。イリーシャスが常に隠し持っていた刃物は少し太めに作られていたがそれでも血はほとんど出ていない。


「血が出てくれればちょっと舐めさせてもらうのにな」


 というメイリの発言に


「私が今飲んだらどうなるんだろ?」


 と真剣に考え込む綾奈を見て皇成はヴァンパイアの集まりにはなるべく参加しない事を決めた。


 ううん、と傷に意識を集中するが変化が分からない。血が出ていないので見た目にも緊迫感が無く後ろの席のメイリと綾奈は窓から外を見て騒ぎ出している。結局損をした気分の皇成だった。



 温泉地に着き広い駐車場は空いていたので入り口に近く車の少ない敷地の中心付近に車を止める。来敵時に把握しやすくするためだ。


 さすがに武器を持ち込んでも入浴中はどうしようも無いので全て車に置いていく。


 改めて待機を主張した皇成だったがメイリの一睨みで入浴が決定した。


 無防備さを感じても第2エリコムで常に緊張していた訳でも無く、実際入浴を終えて何事も無く3人が出てきた後でイリーシャスが入って行く。


 イリーシャスは入浴せず隠れて警戒を続ける恐れが有るとの理由で露天風呂の画像を撮って来る様にメイリから携帯を渡されていた。


 携帯は水に弱いぞ、とか、風呂場を写真に写すってどうなの? とかの皇成の進言はまたもや一睨みで却下された。


 基本的には皇成にも、イリーシャスにもゆっくりお風呂を楽しんで欲しいと言うメイリの優しさだが強制を通り越して脅かしのレベルだ。こうと決めたらやり遂げる、強い意志の使い方を間違っている。


 それでもやはり何事も無くイリーシャスが戻り帰路についた4人は心地よい疲れを楽しんでおり運転は皇成に変わっている。


 修行で刺された傷の痛みは全く無く皇成自身、忘れているほどだ。


 しかし走り出して5分も経たない時皇成はイリーシャスの顔をチラと見るとイリーシャスも軽くうなずく。


「振り返るなよ。どうもつけられている様だ。車1台で3人。でも、その後ろも仲間の様な気配だ。どうする?」


「もうエリコムも知られているかしら? それなら待ち伏せで挟み打ちね」


「それなら今のタイミングで現れ無いんじゃない? 知ってるかも知れないけどエリコムにはいないと思うな」


 驚いた事に綾奈がメイリの分析に被せてきた。しかも的を得ており一考に値する考えだ。状況が状況なので誰も突っ込む余裕は無い。


「そうね。それでも武器も有る以上エリコムに戻る理由も無いわ。イリー、どこか迎える事が出来る場所は無い? そもそも敵意も感じ無いしヴァンパイアの気配も感じ無い。単なる思い過ごしの考えは除外しても得体が知れな過ぎるわ」


「エリコムの手前を左に曲がり10分ほど走った所に空き地のような場所が有ります。そこはどうでしょう」


 ガンガンする頭を軽く押さえながら


「そこでいい。向かおう」


 と皇成が決断し誘い込む事にした。


 街道から入り30分ほど走るとイリーシャスの言う空き地が左手に見えてきた。車はついてきている。


 皇成は決して飛ばしておらず、またイリーシャスが下見した時は一人だったと思われるがそれにしてもこの距離で20分も目算が狂うのは下見の時はどれだけ飛ばしていたんだ? という疑問をすぐに忘れた皇成は素早く空き地を把握する。


 かなり広い空間が駐車場の様に砂利敷になっている。実際、この近くの何らかの施設の臨時駐車場として使われる土地なのだろう。


 一休みするのに絶好なので他の車が止まっていても不思議は無かったが1台もいない。山裾に向かってなだらかに盛り上がっているのを見取るとゆっくり敷地にハンドルを切って侵入した後で急にスピードを上げ盛り上がりを目指す。


 少しでも高い位置に陣取るのが有利なのは戦いの基本だ。山の木々からも少し距離を取った位置でサイドブレーキを引き盛大に砂埃をあげながらスピンターンで元来た方角に車首を向ける。


「メイリは後ろ、イリーシャスさんは左、綾奈は右から前方を車内から警戒」


 こんな時は皇成の指揮官としての采配が光る。


 ヴァンパイアは非常に頭脳明晰でも、そもそもチーム行動を取らない為に人を配置する能力には欠ける。


 メイリとイリーシャスの方角は木々が迫っており敵を認識イコール肉弾戦だ。綾奈は敵と思われる車の侵入する方角でありその気になれば車の姿が見えた瞬間に200発の弾をぶち込めるのだ。


 車内の様子が分からない為に必殺とはいかないだろうが考えうる最高の布陣だ。皇成は車を出て車の前で銃を構えた。


「戦闘中はイリーで結構です」


 イリーシャスが呼称の長さに対する矛盾を解消する。


「了解。全員武器はしっかり構えちまえ。一般車なら謝るなり脅かすなりすればいい」


 その時後続車が顔を出す。ついてきたと言っても尾行の疑いを持ってから道を一度曲がっただけで、何の関係も無い事は十分あり得る。


 一般人を殺してしまえば言うまでもなく重罪だ。皇成達がおかれた昨今の状況を鑑がみれば無条件に攻撃するのも有りだが綾奈を犯罪者にする訳にはいかない。


 車はゆっくりと敷地に乗り入れて来る。あたかも運転に疲れて丁度良い待機場所を見つけた風にも見えるが皇成はもろに拳銃を構えており本物と思わなくても異常者とお近づきにはなりたく無いと走り去るのが当然だ。


 その場合通報されるのを心配する事になるがそれはそれだ。距離をとって相対するように車が止まる。


「メイリ、イリー、どうだ? 気配は感じるか?」


「ヴァンパイアの気配はしないわ」


「ですがヒトの気配もしません。やはりおかしいです」


 メイリとイリーシャスが答え皇成の緊張も高まる。皇成はイリーシャスの声を聞いても頭が痛まない事を確認できた。ダンピレスの力が出てきているのだ。


「後続車が来ない。森を廻り込んでいるのかも知れない。メイリ、イリー、警戒を厳に」


「了解」


「了解しました」


 助手席のドアが開けられまず高く上げた手が見える。武器を持っていない事を示す様にゆっくりとした動作で現れた姿は日本人だ。


 この時点で敵である可能性がかなり低くなった。コムネナ直轄のヴァンパイアであれば少なくとも日本人の可能性は極めて低い。メイリは日本人の風貌だが生まれも育ちもヨーロッパだし、狂った母の風貌は日本人っぽいのだろう。


「近づいていいか?」


 男が叫ぶ。


「ゆっくりだ。運転席と後ろの席の男も出て来い」


 皇成も叫びながら身体を前に進める。綾奈の射線を十分に意識しながらだ。運転席と後ろの席からも降り立ち3人で歩いてくる。3人共に日本人に見える。


「メイリさんのご一行と見受けたが如何か?」


 助手席から降りた男が声を上げる。


「お宅ら名前は? 何者だ?」


 皇成は気を抜か無い。


「我々はこういう者だ」


「ヴァンパイアよ!」


 メイリが叫ぶ。男達が気配を解放したらしい。


「各自自分の前方を集中して警戒!」


 皇成の勘が何かを告げる。言い終わるかどうかのタイミングで


「ガシッ」


 と何かが交わる音が響く。


 メイリとイリーシャスの前にそれぞれ男が立ちはだかり剣や剣の様な武器をメイリ達と交えていた。


メイリ達が使っている剣は日本刀のように切れ味のいい鋼で作られている訳では無い。


 イリーシャスの剣こそ金属製だがメイリのはなんとポリカーボネートだ。適度な重さは有るが当然金属より圧倒的に軽い。もちろん刃は付いているし腕位なら落とせるがアンデットの胴を真っ二つにする事は出来ない。


 メイリもイリーシャスも刃の部分に電位を持たせレーザーを纏わせた様にしているのだ。言わば巨大なレーザーメスでありゆえに切断能力は極めて高い。


 同時に磁界を発生させ物体を弾く力場も形成しているそうだ。さすがに岩の様な固い物体を切る事は出来ないが人体であればバターを切る様なものだった。


 それが衝撃音を出したと言う事は力場を破りカーボンや金属の元の身に直接当たったと言う事だ。相手がヴァンパイアである以上、同じような仕掛けの反作用で磁界が中和されてしまったのかもしれない。


 だが状況を冷静に判断した皇成が


「綾奈、撃つな」


 と叫ぶ。


「良し、了解した。話をしようじゃ無いか」


 皇成が自分の拳銃をワザとらしくゆっくりとホルスターに落とす。


「あんたらも腕を降ろせ。メイリとイリーシャスさんも剣を下ろして待機だ。綾奈も、もういいぞ」


 皆がゆっくりそれぞれの得物を下ろすとメイリとイリーシャスに相対していた二人もゆっくり前に廻って来る。


 パチパチパチ


「やるじゃないかダンピレス。参謀タイプには見えないが?」


「ただ実戦慣れしているだけだ。恐らく、貴方達よりもな」


「我々より長い戦闘経験は有り得ないが確かに慣れてはいる様だな」


 最初から後ろにも展開させる気だったら車と同時に攻撃すればいい。こちらが広場に入ったのは分かっていたのだからあと20秒もあれば展開出来た筈だ。


 それに後ろの2人はあまりにも素直に切り込み過ぎだ。フェイントの一つも無く多人数でも無い。もちろんメイリ達なら多少の外連な攻撃もかわしただろうが、これでは構えている剣に当てに来た様なものだ。


しかし威力はあったはずでこちらが一定以下のレベルならやはりあっさり負けていただろう。いずれにせよ全てがご挨拶であり、かつこちらの実力を見極めようとする動き方としか思えなかった。


「改めてお聞きしたいがメイリさん達かい? 俺達は甲賀から来た頓宮の者だ。聞いた事有るかな?」


「ジャパニーズ忍者……」


 イリーシャスがつぶやく。


「イリーシャスさん、知っているのか?」


「頓宮グループと言う企業集団が日本の近畿地方に有ります。オーナー企業である頓宮一族は忍から変化してきた一団で全ての者が血縁では無くても非常に発現率が高い集団とされています。ヴァンパイアには珍しくまとまって生活している特異性と合わせて何らかの人為的な操作も推測されていると聞いています」


「全くその通りですよ。貴方は?」


「……」


「なぜ俺達がここにいると分かったんだ?」


「こんなところでも何ですからお近くの隠れ家にご招待いただけませんか」


 頓宮一族を代表する者は言いながら片手を軽く上げる。森の中から更に二人現れ、二台目の車が空き地に入ってくる。


「メイリ、イリーシャスさん、綾奈、どう思う?」


 イリーシャスはもちろんだがメイリもすぐには答え無い。沈黙に綾奈が


「えっと大丈夫だと思うけど……」


 さっきの車内での綾奈の状況分析能力がどの程度この先頼れるものなのか知りたい皇成の気持ちを察したメイリとイリーシャスが発言を控えたのだ。本当にどこまでも聰明な二人だ。イリーシャスが喋らないのは戦闘が終了したゆえに皇成のダンピレス化が弱まってしまったかも知れない気遣いもあっただろうが。


「そうね。気配が消せるならこれで全部かは分からないけど敵にも思えないわ。第一、本来敵自体の数は少ない筈だしね。いいんじゃない?」


 メイリも了承する。


「オーケイ忍者の末裔の皆さん懇親会といきましょうか」


「分かってもらえたのは嬉しいが一つ訂正ですね。忍者の末裔ではなく忍者からの転職組ですよ。あのコムネナの娘にして兵器企業エリコム社の筆頭開発スタッフだったメイリさんにご面会するんだから実戦派じゃ無いと話しする前にスマキにされちまう。ここにいるメンバーは皆江戸末期には幕府御用達の忍です。まっ今でも時々アルバイトしてますがね」


 300年前の日本は江戸時代だった。彼の話しはヴァンパイアで有ることの証の様な長寿である事を示している。


「なるほどね。裏から襲撃してきた二人は相当な使い手なのは分かるわ。そんなヴァンパイア滅多にいないものね。まっいいわ。とにかく戻りましょ」


 皇成達は計3台の車を連ねて第2エリコムの敷地に戻る。





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