―プロローグ―
前回の作品の完成版です。今度は必ず完結まで投稿を続けます。一度の投稿文字数についてアドバイスいただけるとありがたいです。
―プロローグ―
その屋内遊戯施設はデパートほどもある大きな建物の中で、一時間一定の金額を払えば様々なアトラクションで自由に遊べると言う面白いルールで運営されていた。
関東にいくつかあるイレスシス教会系の子供保護施設で過ごす子供たちを合同で遊ばせる遠足のような企画で15名の子供達を3名が引率して遊びに来ていたのだ。様々な理由で親を失った子供はしかし各施設の努力によって明るく元気に成長している。施設によっては1人しか在籍しておらず学校には行っているものの同じ境遇の子らとの交流は意義有ることと考えられた企画だった。
色々なアトラクションで奇声を上げて遊ぶ子供達の中に一人の女の子の姿があった。サラサラの髪を肩口で切り揃え少し大きめで奥二重の目を持つスッキリした顔立ち。小学3年生の彼女も施設の一つに子供は一人で過ごしており、最初こそ大人しかったが30分もすると馴染んできていた。
アトラクションの一つに射撃がありエアガンと8M先にプラスチック製の的がかかっている。経営者の方針なのかなかなか本格的なエアガンが置いてある。エアガンは玩具では有るが立派なスポーツでもあるので正式な競技も存在する。本格的な道具はそれだけ命中率も高い。一緒にいた男の子が始め、奥二重の女の子も銃を手にする。
パスン
的外れに着弾しブッと可哀想な音が響く。
数発撃っている内に的が隣の男の子に合わせて紙の標的に差し変わった。男の子のおみやげにと付き添いの男の子がオプション料金を払って変えたのだ。
「いいかい、えっと綾奈ちゃん。両手で持って、そう、的の真ん中の黒いところをこことここの延長線上にして狙うんだ」
あまりにも適当に射っていた女の子に見かねたのかオプション料金を払った男の子がアドバイスを始める。男の子は引率している方の人間だが見た目にも大変若く中学生かせいぜい高校生の容姿だ。追加料金は教会の経費であり、臨機応変に使用するように渡されていたお金だった。
幼い女の子にも丁寧に教授するのは要するに男の子は銃が好きだったからである。今は教会の施設員でありれっきとした神職だが過去にはある国のゲリラ部隊で上位な訓練を受けていた。幼くして生死をかける生活からちょっとしたきっかけで教会のある筋から声をかけられ今の立場にいる。女の子は言われた通りに構え撃つ。
パスン
真ん中の黒点に命中していた。エアガンそのものが本格的なので男の子にも相当な精度で命中をさせる自信は有った。なにしろ本物の射撃訓練を受けていたのだから。女の子がいきなり命中する偶然もあるだろう。
パスン パスン
今度は的に変化は無い。的を外すと可哀想な音が流れるはずだがそれも無い。
パスン パスン パスン
なんの変化も無い的に引率の男の子は気のない視線を向けるだけだ。
規定の弾を射ち終えて男の子は大事そうにお土産の的紙を丸めて両手に持っている。全体にまんべんなく散らばった弾痕は一生懸命真剣に狙った結果だ。
一緒に撃っていた何人かが持ち帰りを希望する中で女の子は射ち終わってもボーッとしており費用負担者の男の子に女の子の使った的紙が手渡された瞬間、男の子は硬直した。偶然当たったと思っていた初弾。その後は気にしていなかったが全弾的を外れたと思っていた。
しかし手元に来た的の中心の弾痕は縁がギサギザになっていて全弾が中心のその一点に命中した結果としか思えない。
ゾッとして慌てて女の子を見るとボーッとした顔をこちらに向けて微笑んだ。思わずその可愛らしい顔を見つめた男の子はわずかに充血したような女の子の赤い目を気にする事は無かった。
お読みいただきありがとうございました。