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台詞の長い男

掲載日:2012/07/10

 切符を片手に指定された座席を探すため狭くて長い椅子と椅子の間を歩き続ける。

五分もしないでその場所を見つけていざ席に座ろうとしたその時、視線は自然と隣の席に座る人物に

向かう。

通路側にある座席の反対、窓際の座席に座っているその人の姿はあまりにも美しく奇抜なものだった。

 曲線を描きながら左側の顔半分を隠す、長く胸のあたりまで伸びている銀色の髪の毛。純白では無く

白銀、ラメのようなギラギラとした人工的な輝きでは無くダイアモンドダストの様な光の粒子が散らばって自然に出来た輝きを持ったその人物の顔は美しく、綺麗なラインを持つ鼻筋に高い鼻、そして滑らかでかさつきのない薄い唇。肩幅は広く、しかし肉付きはそれほど良くはない華奢で色白の身体。

見た目からして年齢は二十代中頃から三十代と言ったところだろうか。優雅に歌う鼻歌のトーンは低く

喉仏があることからして、この人の性別は男性で間違いなさそうだ。

そんな男のファッションは顔面を覆ってしまいそうな大きくて黒光りしたサングラスにピンク色の

ワイシャツ、蛍光ペンと同じ輝きを放つ黄緑色のスーツ上下。両手の指各五本ずつ、計十本の指には髑髏や十字架をあしらったシルバーリングをそれぞれの指に一つずつ付けて紅蓮のドレープブーツを履いて

いた。 そんな異様な雰囲気を纏った男は備え付けのテーブルの上に水筒とソーサーを置き、窓際には

横一直線に陶器で出来たシュガーポットにミルクピッチャー、小皿に盛られた数枚のビスケットを綺麗に配置して陶器で出来たカップに入れられたコーヒーの匂いを軽く鼻で嗅ぎながら口元を緩ませる。

「んー・・・、とてもいい匂いだ」

 満面の笑みを浮かべる男の姿を眺めていると、私の背中に何かがぶつかって来た。

何事かと思い顔だけ後ろに振り向くとそこに居たのは両手一杯に荷物を持った見知らぬおばさんが一人、凄い形相をしながらこちらを睨みつけそして大声で怒鳴り出す。

「ちょっとあんた、こんな狭い所でなに突っ立っているのよ!邪魔よ、邪魔、邪魔!」

「え?」

 何に対して怒られているのか全く分からなかった私は改めてその場で振り返り状況を確認すると彼女の後ろには数人並んでいる人が居て、みな嫌そうな顔をしながら私を見ていた。そこで初めて、私は自分が立っている場所が通路のど真ん中だという事に気付き慌てて身体を退かす。

「ご、ごめんなさい!」

 謝罪するのはもう遅いと言わんばかりにこちらをじろじろと見ながら歩くおばさんは最後、

「ふんっ!」

 と、ワザとらしく顔を逸らすという嫌な態度を取りながら自分の席に向かって歩いて行った。

私は心の中で呪詛の念を唱えながらもそれを表面には出さず軽いガス抜きのために一度大きな溜息を

付いてからとりあえず席に座ろうと思い、指定された座席に腰を下ろそうとした。

その時、隣の男は突然私に向かって叫んだ。

「待って!」

「へ?」

 いきなり呼び止められたので腰を半分降ろした状態で私は身体を制止。次の言葉を待つ。

「今、そこに座ってはいけない」

「はい?」

「今、そこには私のひよこちゃんが座っている!」

「・・・え」

 言われて座席を良く見てみると、確かにそこには紙に包まれた状態の有名なひよこの形をした饅頭が

一匹置かれていた。しかしよく考えてみればここは私が予約した席なのに、なぜこの男は無断でお菓子をこんな場所に放置しているのだろう。備え付けのテーブルの上でも窓際のスペースにでも十分置ける

サイズだろうに・・・。

それなのになんで他人が座るはずの場所にこんなものを正々堂々と置いているのだ。本来なら私が

座ろうとしていたら、先に置いた本人がそれを退かすはずなのに何で私がこんな中途半端な姿勢のままで立ち続けなければいけないのか。

ほら、私がずっとこんな格好しているから横を通る人たち皆が冷たい視線をこっちに送ってきてる

じゃない! 

「あぁ、ひよこちゃん。どうやら君とはここでお別れのようだ」

 何を言い出しているのだろうか、この人は。

「でも泣かないで。私が君のことをとても綺麗に食べてあげるからね」

「あの、もう座って・・・」

 痺れを切らして男の許可なしに座ろうとしたところで、非情にも車内に出発を告げるアナウンスが

流れる。

『発車します』 

「うぇっ!」

 車掌の声と同時に車体が前進して、何にも捕まっていなかった私の身体は前に向かって前進、中腰で

屈んだ状態のまま目の前にある座席の背凭れ部分に向かって顔から衝突。周囲からは失笑とも思われる

声が響き渡る。私は顔を真っ赤にさせながら今日の運勢を『最高な一日』だと占っていたテレビの占い師に向かって、もう一回心の中で呪詛を唱え続けた。


 電車に揺られて約三十分。私がうとうとしている真横で、隣の男はやっと先程の饅頭を食そうと

していた。優しく包み紙を外していき、何処からともなく取り出した竹製の箸でひよこ型饅頭を

持ち上げると、左手に乗せた懐紙の上へ置く。右手を竹箸から竹楊枝に持ち替えると、まず縦へ一直線に切断して二等分。さらにそれを無残に切り分けた結果、可愛い形をしたお饅頭は六等分に切断された。

一口サイズと言えばいい響きだけど、この形をしたお饅頭でそういう切り方をするのは正直、人として

どうなんだろうか。

どうも隣の男と私の波長は合いそうにない。

「・・・はぁ」

 折角の有給休暇が台無し、最悪だわ。

 これ以上、隣の男の行動にいちいち目くじらを立てていてもストレスが溜まるだけだ。

そう思い私は何となく通路を挟んだ反対側の座席へ目を向ける。窓際の席には少女が、通路側の席には

少年が座っていた。

ショルダーバッグにうなぎのような人形を一つぶる下げ、耳に掛るくらいの長さしかない

ベリーショートの黒髪少女。大判の花柄がついたワンピースを纏い、空色のレギンスと、足元には

鮮やかなオレンジ色のアウトドアブーツを履いている。

対して眉毛の太い黒髪少年は白いシャツに赤いチェック柄の毛糸ベストと短パン。白い靴下に

ローファーを履いていて、まるでどこかの私立小学校に通うお坊ちゃんの様な恰好だ。

 見た感じ兄妹のようにも見える二人だが、少女は窓際で一人黙々と駅弁を食べ続け、

通路側で座る少年は真正面を見ながらずっと空中に向かって独り言を喋り続けていた。

二人は兄妹なのか他人なのか私には分かりかねるが、一つ確実なのは私が座っている座席の横一直線に

限り変人が集中して座っているという事だけ。あぁ・・・今日は本当に最悪だ。

ここまで悪いことが続く日はなかなか無い。もしかして今日は格別に悪い日なのか、それとも

この新幹線を乗り切ればその後は超ハッピーな一日を過ごせるのか。よく言うじゃないか、

悪いことの後には必ず良いことが返ってくるって。

「それは無いですよ」

「へ?」

 隣の男はまた、突然私に声を掛けてきた。まるで私の心を読んだかのような言葉を言って。

「・・・あ・・・えっと・・・」

 男の方に振り向いたのはいいが何て切り出せばいいのか分からず口籠っていると、男はまたどこからか竹楊枝を取り出し六等分に切ったひよこ型お饅頭にそれを突き刺して私に手渡す。

「どうぞ」

「どうも」

「美味しいですよ、ひよこちゃん」

「は・・・はあ」

 でもこんな切り方したら美味しいものも美味しく感じられなくなりそうなんだけどなー・・・。と、

心の中で思いながらチラリと男の方を見る。

もし心が読めるのなら何かしら反応をするのではないか、そう読んでいたのだが男は全くの無反応。

私のことなどどうでもいいと言わんばかりに竹楊枝でひよこ型お饅頭を楽しそうに何度も突いて

遊んでいた。

いや、だからそういうことするのは止めなさいって・・・もう、言うだけ無駄か。

「いただきます」

 考えるのを止めて貰ったお饅頭を口に入れる。

「!!」

 おいしい。やはり名菓と名乗っているだけあって、いつ食べても同じ風味と味を味合わせることに

よっって出来る安定したおいしさ。そして疲れた脳を解してくれる上品な甘みと食感。

完璧、完璧すぎるわ、名菓ひよこ!

私は堪らずその場で両足をバタつかせて感動を体現化していると、

「あ、埃が立つので足をバタバタするのは、やめて下さい」

 冷静なツッコみが容赦なく繰り出され、高まっていた私の感情は一瞬で冷めてしまう。

あぁ、どうしてこんな神経質な人間の隣に座るハメになってしまったのだろうか。

胸の中で今日の運勢を最高だとか言った占い師を心から恨みながら、数回目の溜息をつく。

「はぁ」

 普段なら後輩たちに檄を飛ばし上司にも喰って掛るような仕事人間であるこの私が、まさかこんな

新幹線の中で、しかも隣に座る見知らぬ変な格好をした奇人に、何でここまで諭されなきゃなんない

のよ。あー・・・もう、ムカつく!

「コーヒー」

「え?」

「飲みますよね」

一方的にそう言って男は私の意見も聞かずに、いつの間にか用意していた紙コップの中に水筒の中身を

注ぎだした。注ぎ口から漂うコーヒーの匂いを嗅ぐと自然と気持ちが和らぐ。

だからさっきまでのイライラした気持ちを改めて、今この時だけは彼の行動に目くじらを立てないようにしようと思った。

しかしそんな私の気持ちなどお構いなしに彼は紙コップの中に数杯の砂糖と大量のミルクをドバドバと

容赦なく投入していき、最後に小皿に盛られていたクッキーを一枚蓋の様に乗せるとゆっくりとした

手つきで私の方へと運んできた。それを受け取ろうと思い手を伸ばすが、なぜか紙コップは私の前から

消え男の方へと戻っていく。

「?」

意味が分からず手を上げたまま固まっていると男は私に指示を飛ばす。

「サイドテーブル、出してください」

「・・・」

 どうしてここまで他人に指図をしてくるのだろうか。彼の態度に疑問を抱きながらも渋々肘掛の下からテーブルを取り出してセットすると、男は満足そうな顔をしながらそこに紙コップを置いた。

「どうぞ」

「どうも・・・・・・、ありがとうございます」

文句を言われる前に謝礼の言葉を先に述べてから、私は蓋代わりのクッキーを退かして淹れて貰った

コーヒーをいつもの癖で一気に口の中へと流し込んだ。そこで私は思い出す、さっき隣の男がこの中に

何をどの位入れていたのか、を。

 瞬間、大量の砂糖とミルクで出来た濃厚過ぎる甘みが喉を焼き付け、さらにそこへ熱湯の如し熱さの

カフェイン飲料が加わり器官が灼熱の太陽のように熱く燃え上がる。

「ぐむっ」

 しかしこれを飲み込まないと逆流したコーヒーが今度は口腔内に留まり口の中を大火傷してしまう。

そうなると実家に帰っても口が痛くて母の手料理が食べられなくなるではないか。

「んぐっっ」

 覚悟を決め痛みに耐えながら一気にコーヒーを飲み込むと、流れ込んできた熱さが鈍い痛みとなり両胸に浸透していく。痛い・・・胸が痛くて熱い。

痛みに耐えかねて判断力を鈍らせた私は誤って隣の男に援護を求めてしまう。

そんなことは意味が無いと頭の中では分かっているのに。

「・・・あの」

「何ですか」

「水・・・ありませんか・・・?」

「コーヒーならありますけど」

「・・・くっ!」

目を潤ませながら席を立ち自動販売機が置いてある車両へ向かって全速力で走り出す。

途中、走る私の姿を見て「痴話喧嘩かしら」とか「お母さん、あの人泣きながら走ってるー」

「しっ、見ちゃいけません」などと背後で散々言われていたような気がしたけれど、もう星占いとか

結果とかどうでもいい。ただただ、早くこの電車の中から逃げ出したかった。


「・・・」

 数分後、ペットボトルの水一本を飲み干して席に戻ってみたら隣の男は楽しそうに車内販売の女性と

お喋りをしながらアイスやポテトチップスなどを購入して、サイドテーブルの上いっぱいにそれを

広げているではないか。・・・なんて奴なの。

「あ、おかえりなさい」

「どうも」

 少し突き放すように返事を返して席に着くと、また隣の方から何かが運ばれてきた。

テーブルの上に置かれたのは「夜のお菓子」というキャッチフレーズが有名な、丸みのあるフォルムが

印象的なパイ菓子。何のつもりなのだろう。

「えっと」

 若干の不信感を抱きながら彼に尋ねようとすると、男の方が先に口を開いた。

「すいません」

「え?」

 この男が謝罪をするなんて、少しだけ他人と感覚はズレてるけどそれでも彼も普通の――・・・

「さっきあなたがテーブルに置いておいたクッキー。床に落としてしまったので拾って食べちゃい

ました。なので、その代わりにこれでも食べてください」

「・・・」

 普通の人と判断するには、まだ早かったようだ。

「そうですか」

それでもこれは彼なりの謝罪の形なのだから、ここは黙ってパイを受け取るとしよう。

「ありがとうございます」

 だけどこの男と関わる度に私は何かしら、普段の生活では起こさないような問題行動を起こしては

その度に周囲から寒い視線を送られているので、これ以上隣と関わらないようにしようと心に誓い

それ以上は彼とは何も喋らず、だけど貰ったパイだけは食べようと思い袋を開けて口の中に運ぶ。

味は・・・やっぱりおいしいかった。


 あれからどれくらい時間が経ったのだろう。

 車内では喋り声が徐々に減っていき、今はいびきや欠伸をする声の方が多くなってきた気がする。

私は読んでいた文庫に栞を挟み何となく通路を挟んで反対側の席に座る二人の方を向いてみる。

窓側に座る少女はサンドイッチを相も変わらず黙々と食べていて、通路側に座る少年はまだ一人で喋り

続けていた。うん、見なきゃよかったかも。

仕方ないから視線を戻して改めて本を読もうと思い下を向くと、栞の隣にはポテトチップスが二枚ほど

置かれていた。

「・・・」

 こんなところに置かれたら本に油が染みついちゃうじゃない。

 そう心の中で思いながら隣の男を見ると、本人は悪びれる様子も無くニコニコしながら楽しそうに

笑いながらポテトチップスとアイスクリームを食べながらこちらを見ていた。

一度視線を文庫に戻し、挟まれていたポテトチップスを摘まみ上げてテーブルの上に置き再度男のほうを見ると、男は未だにこちらを見ている。このまま無視をし続けるとまるで私が悪者のように見えなくも

無いし、このまま放置していても埒が明かないので仕方ないから隣に座る男に話しかけてみた。

「何ですか?」

「暇です」

 そんなことを唐突に言われても困るんですけど・・・。

「そう。でも私に言われても何もしてあげられませんよ?」

「なのでこれから話をします」

 本っっ当に人の話を聞こうとしないな、この人は!

「私の話です」

「あなたの?」

「はい。実は私こう見えても脚本家でして」

「そうなんですか!」

 あ、でも何となくそう言われれば今まで行ってきた奇行の説明が付く・・・かな?

「自称ですけど」

「え」

 ――・・・やはりただの奇人でしかなかったか、残念。

「では、始めましょうか」

 そして男は勝手に語りだす、男が描いたひとつの物語を。





タイトル  「 白昼の刺客 」

 

○家・外観

とあるベッドタウンの一角。

  特徴的な装飾も何もされていない、どこにでも有るありふれた一戸建てが立ち並ぶその中の一軒。

少し大き目な鉄製の表札には家族全員の名前が書かれている。


○同・一階 応接間

質素な雰囲気の室内。薄暗い色のカーテンに木製のテーブル、それを囲うように置かれた四脚の椅子には現在四人の人間が対面するように座っている。

上手には初老の男と中年の女という一組の老夫婦、下手には年齢不詳の男と少女らしき人物が座って

いた。テーブルの上には紅茶の入ったカップとビニールに包まれた状態の信玄餅がそれぞれの席に

置かれている。

  老夫婦は浮かない表情をしているのに反して、下手の二人は対極的に明るい表情を浮かべ

ながら各々で勝手気ままな行動を起こす。

少女は手に持っていたタスキを肩に掛けた黄色い鶏の人形を弄り遊ぶ。

  年齢不詳の男は目の前に置かれた信玄餅を食べるべく、ゆっくりとビニールを解いていき透明な蓋を外すと『ニヤリ』と微笑み付属していた黒蜜の容器を片手で高く持ち上げて、容器の中に入っている

きな粉と餅目掛けてユラリユラリと波を描きながら黒蜜をたっぷりと掛けていき、蜜が溢れだしたのを

確認してから竹楊枝で餅を抉り取り口の中へ運んでいく。口に入れた瞬間、目を閉じてその美味しさに

酔いしれる。

年齢不詳の男「・・・あぁ・・・おいしい」

  満足そうに言うと、男は目の前に座る初老の男に礼を言う。

年齢不詳の男「お父様、とても美味しゅうございます」

初老の男「(戸惑いながら)え・・・あ、そうですか。それはどうも」

年齢不詳の男「やはり銘菓はどこのものを食べても美味しくていいですね。何を買って食べても外れが

無いの所が特にいい」

初老の男「そうですね」

年齢不詳の男「それに比べて子供っていうのは、やっぱり当たり外れがありますよねー」

  男の言葉を聞き初老の男の表情が険しくなる。

  隣で座る中年女は口元を手で押さえながら肩を震わせ、声を殺して泣く。

初老の男「・・・まったくです」

年齢不詳の男「折角手塩にかけて大事に大事に、傷つかないように大切に育ててあげたのに。それなのに恩を仇で返すなんて・・・、まるで不良だ」

中年女「(叫ぶように)優ちゃんはそんな子じゃありません!」

  机を叩いて声を荒げる中年女。初老の男は彼女の肩を擦り彼女を宥めようとする。

初老の男「やめなさい・・・」

中年女「嫌よ!だって優ちゃんは不良なんかじゃないもの。優ちゃんの『ゆう』は優しいの『優』。優しく心穏やかな子供に育つ様に付けた名前なのに・・・。なのに、それなのに・・・!」

  中年女は泣き崩れテーブルの上に顔を埋めた。

中年女「うううううっっっ・・・優ちゃん・・・優ちゃん・・・!」

初老の男「お前のせいじゃないよ。あの子があんな風になってしまったのは・・・」

中年女「アナタ・・・。くっ・・・ううううううううう・・・ううううううううううう」

初老の男「・・・」

  中年女の肩を優しく擦り続ける初老の男。

  目の前で繰り広げられる事態に何も動じず少女は人形を机に置いて信玄餅を食べ始める。

年齢不詳の男も何も言わず黙々と餅を食べ続けていた。

  数分間その状態が続き、やっと中年女が落ち着きを取り戻した頃、年齢不詳の男は話を再開する。

年齢不詳の男「と、まあそんな感じにあなた方家族の関係は現在、かなり崩れ始めている訳で

すよ。そのドラ息子のせいで」

 男の言葉に項垂れる老夫婦。

年齢不詳の男「そしてインターネットで色々調べていたら、我々に行き当たったと・・・」

  口元を緩ませ微笑む年齢不詳の男。

  そんな男の顔を隣に座っていた少女は無言で見つめていた。

初老の男「そうです」

中年女「もう・・・私達だけではどうにもっ・・・うぅぅ・・・」

  また泣き出しそうになる中年女とそれを慰める初老の男。

そんな二人の姿を気怠そうに見る年齢不詳の男と少女。

  年齢不詳の男は最後の信玄餅一個を口の中に入れて、噛まずにお茶を飲んでそれを流し込んでから

改まった様子で話を再開すせる。

年齢不詳の男「そうでしたか。でも誠に申し訳ないんですが、あなた方の家族が今どんだけ荒れていようが、荒れていなかろうが我々の仕事にとってそれはどうでもいいことなのですよ」

初老の男「・・・」

中年女「・・・」

  黙り込む老夫婦。

  不快感からか、中年女は年齢不詳の男を睨み付ける。

中年女「そういう言い方は、どうなんでしょうか」

年齢不詳の男「は?」

初老の男「おい・・・」

  間に入ろうとする夫の声を押しのけて、中年女はヒステリックに喋り始める。

中年女「確かにこんなことを依頼する私たちの様な人間のことをあなた方は軽蔑するでしょうね、親失格だって!でもね、それでも私たちはこれまで自分たちで頑張ってきたのよ。息子を更生させるために毎日毎日、自分の気持ちを押し殺してまでしてあの子の機嫌を損ねないよう一語一句気を掛けて、あの子本位で生活してきたの。その苦しみと辛さが分かる?

気晴らしに旅行にも行けないし買い物だって時間内に帰って来なければ怒られる。バランスのいい食事を取りたいのにずっと肉だけの食生活、値段の高いスナック菓子やアイスクリームを買わされて家計は

圧迫。しかもお風呂はまともに入らなくて、臭くて不潔な格好なのにそのまま近所を徘徊されるから

近所からはいつも白い目で見られたり陰でコソコソ言われたりして・・・本当に・・・

本当にもうっ・・・」

 言葉を詰まらせた中年女は全身を震わせながら再び涙を流す。

 横に座っていた初老の男は妻を慰める事もせず、どこかぐったりとして肩を落としていた。

 そんな光景を目の当たりにしても年齢不詳の男と少女は顔色一つ変えず、無表情のまま。

  少女に至っては、新しく餅を食べようと巾着袋の中に手を入れて探り出そうとしている。

年齢不詳の男「で?」

中年女「・・・・・・え」

年齢不詳の男「だからあなたはそんなことを我々に言って、何を訴えたいと言うんですか?」

  机を片手で叩きながら、強めな口調で中年女に問いかける年齢不詳の男。

中年女「だから・・・だから私たち夫婦は」

  疲れた様子の中年女は男の質問の意図が分からず口籠ってしまう。

その姿を見た年齢不詳の男の顔が歪み、顔を俯かせながら両手で机を何度も叩き始める。

年齢不詳の男「あー!あー!あー!あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあ!」

  突如手を止めて顔を上げる年齢不詳の男。そして目の前に座る二人の方を見ながら早口で一方的に

話し始める。

年齢不詳の男「邪魔な子供を消したいと心から願っている。だけど自分たちの手は汚したくない。

なんだかんだ言ってドラ息子だけどそれでも愛している、だからどうしても決意が固まらない。困った、インターネットを見て回っていた、そしたら巡り合った。我々に。そしてあなた方は決めた。

第三者である我々に頼もうと、自分たちが殺せないから、だから我々を雇って愛する息子の存在を抹消

して貰おう、そう決意して我々にコンタクトを取った。

たったそれだけのことなのに、なんでそこに事情だの境遇などの話を絡ませるんですか。あなた方は自分たちにそれなりの理由を付けて、依頼をしたことを正当化したいのですか?

残念、それは絶対に無理だ。だってあなた方は御自身の子供を消すことを自分たちで決意した、そして我々を呼んだ。あなたたちには確実に自分たちで自分の子供を殺そうという意思を強く持っている。

その時点でもうダメでしょ、どんな理由も事情も通用しない。ちなみに、そんなことを聞いても今さら

仕事をキャンセルして頂くことは出来ませんよ、ホームページの説明書きにも書いていますしそれを

読んだ上での依頼ですよね。文句を言われても我々は完璧に無視しますよ。ガン無視です。

それどころかあなたがたも合わせて殺してやっても構いませんがいかがいたしますか?」

  最後の言葉を言いながらもう一度、念押しの様に机を一回叩く年齢不詳の男。

  老夫婦は茫然と口を開けたまま何も言い返そうとしない。少女は何事も無かったかの様に

信玄餅に黒蜜を掛けている。

年齢不詳の男「・・・ふう。ま、こんな感じなので二度と御託はお止めくださいね?」

  笑顔でそう言うと、年齢不詳の男は机に置いてあったお茶を飲み始める。

  未だ固まった状態の老夫婦、今の状況に見兼ねた少女は仕方なく二人へフォローを入れる。

少女「(指に付いた黒蜜をしゃぶりながら)えっと、つまりね、お二人とも」

初老の男「はい」

少女「私たち、この仕事をしてきて毎度毎度色々な事情やらお話を依頼者から聞かせられるの」

初老の男「・・・でしょうね」

少女「この人も言ったけど、私たちそんなこと聞きたくないの。私たちはただ依頼者からの依頼を

実行するためだけにここへ来たの。人生相談しに来たわけじゃないの」

初老の男「すいません。ですが家内は最近ヒステリックな体質になってきているもので・・・」

少女「それ、要らないから」

初老の男「はい?」

少女「言い直して」

初老の男「・・・えっと・・・」

少女「あなたの奥さんが今どんな状況なのかなんて、聞く気は無いの」

初老の男「・・・え」

少女「謝罪の言葉だけでいいの。他は要らないの」

中年女「ちょっとあなた!子供の癖に大人に向かってそんな言い方」

  少女に突っかかろうとする中年女、それを直ぐに止める初老の男。

初老の男「やめなさい」

中年女「あなた・・・」

初老の男「やめなさい」

中年女「・・・」

  俯き黙り込む中年女。初老の男は少女を一瞥してから改めて深々と頭を下げる。

初老の男「すいませんでした」

  その姿をつまらなそうな顔で見つめる少女。そして何事も無かったかのように食べかけの信玄餅に

手を付ける。

  少女の態度に声は出さず、しかし身体を震わせ唇を噛みしめる初老の男。そんな夫の姿を見て堪らず二人を睨めつける中年女。

  年齢不詳の男は我関せずと言わんばかりに出されていたお茶を飲み干すと、明るい声で老夫婦に

話しかける。

年齢不詳の男「えっと、いい加減この辛気臭い家から出たいんでお仕事を執行してもよろしいで

しょうか?」

  年齢不詳の男の発言に老夫婦は何も言わず、ただ首だけ縦に振った。


○同・二階  息子の部屋

扉の前に立つ老夫婦。それより少し距離を置いて立つ年齢不詳の男と少女。

年齢不詳の男の手には信玄餅、少女の手に黄色い鶏の人形が握られていた。

  恐る恐る部屋の扉をノックする中年女。

中年女「優ちゃん、居る?」

優太(優ちゃん)「・・・」

中年女「実はね、優ちゃんにお客様が見えていて・・・」

  中年女の言葉に反応して部屋の中に居た優太が扉に向かって叫びだす。

優太「嘘つくんじゃねえぞ、ババア!!!!殺されてえのかよ!!!!!」

  興奮状態の優太、近くに置いてあったレコーダーを扉に向かって投げつける。

  扉から鳴る衝撃音に驚き、腰を抜かす中年女。

中年女「ひいいっっ!!」

優太「俺に友達が一人もいないこと分かってて言ってんだろ!!!クソババアッッ!!!!

死ね、今すぐ死ね!死んで詫びろ!!!」

 叫びながら様々なものを扉に向けて投げつける優太、鳴り響く衝撃音の数々。

  中年女は扉の前で頭を抱えながら恐怖に慄く。

中年女「あ・・・ああああああ・・・うああああああああ・・・」

  そして首を激しく左右に振りながらブツブツと呟き始める。

中年女「違う違う違う教育を間違えたんじゃない私たちが間違えたんじゃない指導を間違えたんじゃない違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」

優太「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

  雄叫びを上げながら優太は扉を蹴破り部屋の外へと現れ出る。

  開いた扉に身体をぶつけた中年女の身体は壁の方に飛ばされ激突した。  

中年女「あぁっ!」

初老の男「大丈夫か?」

  中年女に駆け寄り声を掛ける初老の男。その呼び掛けに怯えながら答える中年女。

中年女「あっ・・・あなたっ・・・あなたぁぁぁ・・・」

初老の男「しっかりしなさい!」

中年女「・・・うぅ・・・うううううう・・・」

  初老の男の言葉に涙ぐむ中年女。その身体を優しく抱きしめる初老の男。その背中に目掛けて、

金属バッドが叩きつけられる。

優太「死ねよ蛆虫共があああああああ!!」

初老の男「ぐあああああああっっっ!!!」

中年女「あなたぁぁぁぁ!!」

  泣き叫ぶ中年女。

優太「(バッドで叩きながら)くっそ!しぶとい蛆虫だ!さっさと死んで、さっさと消えちまえ!」

中年女「やめてっ!!やめてよ優ちゃん!!!」

優太「気持ち悪いんだよ蛆虫!誰がユウちゃんだ!俺は知ってるんだぞ!お前らが俺のことを 

 ずっと疎ましく思ってたことを!邪魔者だって言っていたことを!近所のババア共に愚痴を

 言ってることも!全部!全部!」

中年女「そ・・・そんなこと・・・」

優太「聞いたんだよ、見てたんだよ!お前らが俺の事をそういう風に言いふらしている所をさ!」

中年女「違・・・違うの」

優太「(手を止めて)違わねえよ」

中年女「っ・・・」

優太「・・・お前らはいつだって俺に理想を抱き過ぎてたんだよ。いい子の息子、頭のいい息子、

家族思いのいい息子。うちの息子は理想的だって、勝手に思い込んで。俺にそれを押し付けた」

中年女「優ちゃん・・・」

優太「受かりもしない大学を受験させて、落ちたら落ちたで、その原因は俺が努力を怠ったからだ?

はっ・・・ははははは・・・ははははは。――・・・ふざけんじゃねえぞおおお!!!」

  鉄バットを床に叩き付ける優太。豹変した息子の姿に怯え、恐怖で震え上がる両親。

優太「受かりもしない試験を受けさせたのは、どこのどいつだ!そこ一本に絞れとかほざいて俺の

選択肢を消したのは誰だ!俺をこんな風にさせたのは変えさせたのは、どこのどっ・・・」

年齢不詳の男「誰でもありません!」

  突然、三人の間に入ってきた年齢不詳の男。見たことも無い男の登場に驚き怯む優太。

  年齢不詳の男は優太の方を見ながら、笑顔で話しかける。

年齢不詳の男「誰の所為でもありません」

優太「・・・何だと・・・」

年齢不詳の男「あなたが受験に落ちるのも、引き籠りの根暗ニート野郎に成れ果てたのも・・・、それは誰かの所為ではありません」

優太「・・・」

  年齢不詳の男はゆっくりと優太の方に指を指す。

年齢不詳の男「全てはあなたの所為」

優太「(はっ、として)なっ・・・!」

年齢不詳の男「言い訳染みてんですよ、あなたの人生」

優太「言い訳・・・だとぉ?!」

年齢不詳の男「両親が望んだからってその通りの人生を歩まなきゃ死んでしまう人間なんて、そうそう

居ません。もし居たとしても、それでもそれならその人たちはきっとあなたの様な言い訳など言わない筈ですよ?だってその人たちには確固たる覚悟を持って生きているから」

優太「・・・覚悟・・・」

年齢不詳の男「そう、彼らは皆理解している。それを守らなければ確実に殺されるという事を」

優太「・・・」

年齢不詳の男「あなたは?あなたは両親の希望を叶えなければ「殺す」と言われて今まで生きてきたの

ですか?」

優太「それは・・・」

年齢不詳の男「言われてないでしょ。でもあなたは両親の希望に従って生きてきた、自分の意見を

胸の中に抑え込みながら」

優太「そうだ・・・少しでも期待に応えてやりたいと思ってた」

中年女「え・・・」

初老の男「・・・優太・・・」

年齢不詳の男「――・・・でもダメだった」

優太「どんなに頑張ったって、努力は必ず報われるわけじゃなかった。だから、俺は受験に失敗して

結局他の大学に受験も出来ないまま浪人生活を送るハメになったんだ」

年齢不詳の男「だけど絶対に浪人生活を送らなければいけない、ということは無かった」

優太「でも二人は俺が働きに出るのを拒んだ。いい大学に入って、いい会社に就職しないさ。

フリーターなんてものにはなっちゃいけないって。そう言われ続けて・・・だから最初は予備校へ

通っていた。だけど周りは皆、年下ばっかりでバイトや部活に励んでいてとても楽しそうで。

友達のいない俺には眩しすぎた、だから耐え切れなくて辞めた」

年齢不詳の男「別の大学に行っても、予備校を辞めても、働きに出てもそれはそれでよかった。

だけどあなたはその時もご両親の言いなりになった」

優太「そう。そしてそんな俺に対して二人は理由も聞かずに頭ごなしに怒ってきた。そして言ったんだ、「お前は出来損ないだ」って。そんなことを言われたら、さすがに俺も気持ちが抑えきれなくなって、

それからはもう何もせず部屋に籠ったり風呂に入らなかったり、汚い恰好で近所を徘徊したりして、

二人が嫌がりそうな行動ばっかりとったんだ」

年齢不詳の男「随分としょぼい復讐ですね」

優太「そうだな。俺は・・・ちっぽけな奴だから」

年齢不詳の男「くくくくく。でも私、あなたをそこまで嫌いにはなれそうにない。ちっぽけな人生観?

いいじゃないですか。小さな世界の中でしか生きることができない塵のような人間。

くくくくく、いいですよ。屑人間は嫌いですが塵人間はまぁまぁ好きです」

優太「それは・・・どうも」

年齢不詳の男「では私の好きな塵人間、あなたに私から最後のプレゼントを贈りましょう」

優太「は?」

  年齢不詳の男は笑いながら指を優太から壁際に座り込んでいる両親の方へと向ける。

年齢不詳の男「実は我々、刺客なのです」

優太「我々?」

年齢不詳の男「あなたのご両親に依頼を受けまして、こちらへ参りました」

優太「え」

驚き、両親の方を見る優太。目が合いそうになり慌てて顔を逸らす両親。

中年女「っ・・・」

初老の男「・・・優太・・・すまない」

優太「二人とも一体何を言って・・・」

  両親の方を指していた指を戻し優太の唇にそっと当てると、厭らしく笑う年齢不詳の男。

優太「なっ!」

年齢不詳の男「お二人からの依頼内容は・・・」

優太「・・・それは?」

年齢不詳の男「あなたの存在をこの世から消し去ることです」

優太「・・・・・・!」

  驚愕し、口を開けたまま立ち尽くす優太。突然その身体全体に透明な糸が巻きつけられる。

優太「へ?」

少女「バイバイ」

  優太に巻き付いた糸を軽く引き寄せる少女。

  同時に優太の身体は「サクッ」と小気味いい音を立てながら、六等分に切断される。

中年女「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

  悲鳴を上げ両手で顔を覆う中年女。初老の男は声も出せずず、ただ茫然と床に落ちて行く息子の

破片を眺める。 

  少女はバラバラになった優太の身体を拾い上げると、持っていたバッグの中へ糸と一緒にそれを

仕舞い込んでいく。

年齢不詳の男「いやー・・・いつ見ても鮮やかだーーー!」

  少女に賞賛の拍手を送る年齢不詳の男。

  それに全く反応せずに、黙々と肉片を拾う少女。

  老夫婦はただ何も言えず茫然とその様子を眺め続けていた。


○同一階 玄関

  年齢不詳の男は靴ベラを中年女に返す。

  浮かない顔で受け取る中年女。隣に立つ初老の男も表情が暗い。

  少女は手に信玄餅が入った袋を持ちながら年齢不詳の男の横に立つ。

年齢不詳の男「では、任務完了しましたので我々は帰らせていただきます」

初老の男「・・・どうも・・・ありがとうございました・・・」

中年女「・・・」

年齢不詳の男「(明るい声で)どうしたんですか?表情が暗いですよ」

初老の男「そんなことは・・・」

中年女「うっ・・・くぅ・・・!」

  溜まらず泣き出し、その場にしゃがみ込み嗚咽を漏らす中年女。

中年女「うあああああああああっっ・・・、優ちゃん・・・ごめんね・・・ごめんねぇぇぇぇ・・・!!!!」

初老の男「・・・」

年齢不詳の男「分からない人たちだ。依頼をしたのはあなたたちなのに」

初老の男「・・・あんたみたいな人には、一生こんな気持ち・・・分からんだろうさ」

中年女「(泣き崩れ)うわあああああああああああ・・・・・・あああああああああ・・・」

年齢不詳の男「ですね。我々には一生縁が無い感情のようだ」

少女「こんな堕落した感情、寧ろこちらから願い下げ」

少女の言葉に伏せていた顔を上げて睨めつける中年女。

中年女「酷い子っ・・・!きっと碌でも無い家庭環境の中で育ってしまったのね。可哀想に」

少女「お前に憐れんで貰う筋合いは、ない」

中年女「はっ、この外道が。地獄へ落ちろ!」

年齢不詳の男「おー・・・怖い怖い。これが自分の子供を他人に消させてしまうようなママのお顔

でちゅー。キショイでちゅー、最低でちゅー」

中年女「こんのぉぉ・・・、いい加減にっ」

初老の男「やめなさい!」

二人に襲いかかろうとする妻を止める夫。

中年女「でも・・・でもこいつら・・・こいつらぁっ!!!!」

初老の男「もう、やめよう」

中年女「・・・っ・・・くっ・・・!」

  夫の言葉で初めて我に返った中年女はその場で立ち尽くし、口を閉ざす。

初老の男「大変失礼いたしました」

少女「本当にね」

初老の男「・・・本日はどうもありがとうございました。どうか、お帰り下さい」

  そう言って二人に深々とお辞儀をして見送る老夫婦。

  少女はつまらなさそうに二人を見つめ、何も言わず身体を反転させ、ドアノブに手を掛けた時、

何かを思い出したかのように年齢不詳の男は振り返り老夫婦へ話しかける。

年齢不詳の男「あ、最後に」

中年女「えっ」

年齢不詳の男「(微笑みながら)がんばってくださいね」

初老の男「・・・・・・はい?」

  男の隣に立つ少女は、袋から新しい信玄餅を一つ取り出しながらをゆっくりと年齢不詳の男の顔を

無言で見つめる。

年齢不詳の男「これからあなた方お二人は死ぬまで嘘をつき続けなければいけません。

そして同時に一生、他人に疑われながら生きて行かなければなりません」

中年女「・・・何を言って・・・」

年齢不詳の男「遺体なき殺人事件が今ここで行われた。結果、息子さんの存在はこの家の中で消えた。

でも遺体は出てこない、我々が回収したから。しかし周囲はそのことを知らないし、いつも近所を徘徊

していた息子さんがある日突然姿を消したならば、必ず何かあったんじゃないかと疑いをかける。そしてあなたがたに聞いてくるでしょう。『息子さん、最近姿が見えないけど、どうかしたの?』ってね。

だからあなたたちは嘘をつかなければいけない。出来るだけ疑われないような嘘を。『旅に出た』

『引っ越しをした』『就職が決まって忙しい』など。でも息子さんのそんな素振りも声も聞いたものは

居ないし、駅で彼の姿を見かけた人も居ない。なんせ、今『ぱっ』と消されてしまいましたからね。

電気を消すみたいに。だから近所の人たちはいずれ何か物言えぬズレをこの家に感じ始める。

『あんな風に言われたけど』『本当?』『分からない』『まさかあの夫婦・・・』『あー・・・あり得るかもね』などと勝手な憶測を立てられ、気が付けばあなた方は周囲の人全員から疑いの目を向けられる

でしょう。そして、もし誰かが 匿名希望で警察に通報したら。『どこへいつ、どの飛行機で出かけ

ましたか?』『どの町のどの場所へ就職したんですか』『引っ越し先の御住所を教えてください』そんな質問攻めにあったら、どう対処しましょうか。相手は警察だ。調べられれば直ぐに住所も何もかもが

嘘だとばれてしまう。そして本格的に疑われ始めたら、今度はこの家に家宅捜索が入る。どこかへ息子の遺体を隠しているんじゃないか、凶器は無いか。警察は血眼になって探すでしょう。でも遺体は我々が

持って行ってしまったから、どこにもない。でも息子の姿が消えたのは事実。だから今度はあなた方に

対してしつこく取り調べをするでしょう。『本当に殺していないのか?』『本当のことを言った方が楽になるぞ?』『なぜ息子さんが居なくなったのに捜索届を出さなかったんですか?』『もし失踪したのなら、それなら失踪届を出さなければいけないでしょう。なんで出してないんですか?やましいことでも

ありますか?』朝から晩まで同じ質問の繰り返し、署から家へ帰るまでの間ずっと道を通る度に周囲から噂され、に怪しまれ、疑いの眼差しを向けられて。それでもどう頑張ろうが証拠も何も見つかるはずが

ないから警察は捜査を打ち切る。だけど周囲からの視線は変わらないまま、誰かと軽く世間話も出来ないままこの家の中でひっそりと息を潜めなきゃいけない。引っ越しをしたとしても、どこでまた噂されるか分かったもんじゃない。だからそんなあなたたちに送る一番適切な言葉を、傍観者的立場から送る当事者への励ましの言葉を今、私はあなた方へ去り際になりましたがお伝えしました。長々とお話してしまい

大変失礼いたしました。それでは我々はこれで」

  言いたいことを一通り一方的に伝えた年齢不詳の男は満足そうな顔で家を出て行く。

  その後ろに黙って付いていく少女。

  老夫婦は放心状態のままその場に立ち尽くす。               (終わり)                                   


「て、お話です」

「え」

 あまりに突然、物語の終わりを告げられて私の目は点になる。だって、え?・・・えー!?

「今ので終わりですか、これ?滅茶苦茶バッドエンドじゃないですか!」

「滅茶苦茶ハッピーエンドですよ」

 男は真顔でそう言った。なんて人だ、こんなお話のどこに幸せがあるって言うんだ。

「全然ダメですよ!こんな後味の悪い終わり方は無いでしょう。大体なんですかこのお話の・・・

えっと、年齢不詳の男?でしたっけ。何なんですか、彼は!」

「何って?」

「口は悪いし、言いたいことばっか言ってセリフ長いし、性格破綻しているし。最悪ですよ」

「失礼な。最悪じゃないですよ、彼は。なんせ彼のモデルはこの私自身なんですから」

「・・・あー・・・」

 通りで。そりゃ、こんな偏屈的で毒舌な変人キャラが作られてもおかしくないわ。

「納得しました、そして物語を聞いた一人間として言わせてください。

すぐにでもこのキャラクターの性格及び発言の全てを変更するべきです」

「嫌です」

「なっ!」

「人の意見は聞かない質なので」

 男はそう言って満面の笑みを私に送る。そのあんまりな態度に呆れてしまった私は口を開けたまま硬直してしまう。

 じゃあなんで私にこんな意味わかんないストーリーを聞かせたのよ。暇つぶし?それとも陰湿な

嫌がらせか?もう、本っっ当に今日は最悪!

「それに、これ実は実話なんです」

「・・・え?」

 無言のまま見つめ合う私と男。

そこに愛も想いも存在しない。あるのはお互いの腹を探り合い、どちらが先に屈服をするのかという

不屈の精神だけ。そして十秒ほど経過した所で、先に折れたのは男の方だった。

「・・・・・・嘘です」

「でしょうね」

 私は男の言葉を聞き遂げると、彼に満面の笑みを送り返してから顔を逸らして閉じていた読みかけの

文庫本を開き、栞が挟まっている場所から再び本を読み始める。

 隣の男も疲れたのか話題が尽きたのか、席を少し後ろに倒して静かに瞳を閉じた。

これでやっと少しは落ち着いて考え事ができる。そう思った私は本のページを開いたまま、

ゆっくりと瞼を閉じて一人思案する。これからのこと、生まれ育った町に戻って、両親に会いに行って、それで・・・自分はどうしたいのか。そんなことを考えていたら、下腹部が蠢いた。   

私に何かを訴えかける様に。

「お母さん、お願いだから消さないで」

「っ!」

 声に驚き目を開き立ち上がり周囲を見渡すが、車内には何の変化も無い。

 それどころか辺りを見渡している最中、他の乗客と目が合ってしまい怪訝な表情を浮かべら

れてしまい、気まずくなった私は慌てて席に着き大きく溜息をつく。

「むにゅ・・・お母さん・・・そのゲームには沢山のデーターが入ってるから・・・ふにゅ・・・」

 そんな私を尻目に隣の男は悠長に寝言を言っていた。どうやら先程の声の主は、彼の様だ。

まったく、どうも私とこの男は何もかも全てが相違する。まさかあんなタイミングでそんな

寝言を言われるとは。

「・・・」

 でも、もしさっきの声がこの男であっても、そうじゃなくても、私はきっと謝らない。

だって、だって私一人が悪いんじゃないのだから。あの人にだって責任はある。何も言わな

ないでいた彼にだって非は有るんだ。だから私は・・・悪くなんかない。


 目が覚めた時、隣の男は姿を消していた。そして反対側の席に座っていた二人の姿も。

「あれー、寝すぎたかな・・・」

 そう思いながら私はふと顔を上げて電光掲示板を見る。次に止まる駅の名前が横に流れていくが、

やはりまだ次に止まるべき駅にはまだ電車が止まっていない。ならばまだ彼らは車内のどこかにいるの

だろうか。

「・・・」

 だけどそれならば、なぜ私の隣に座っていた男はこんなにも綺麗に身支度を整えて席を発って

しまったのだろう。窓際に並べられていたシュガーポットなどは全て片付けられ、私と話している最中

ずっと出しっぱなしだったサイドテーブルの上に置いて有った物は全て無くなり、テーブルも元の場所へ仕舞われている。

食べていたお菓子などのゴミも少し倒していた背凭れも全て綺麗に元通りにされていた。まるで、

元からここにあの男なんて人間は元から存在などしていなかった、そう言っているかの様に。

 そんなことを思っていたら到着駅の名前を伝えるアナウンスが車内に響き渡る。私は手早くゴミを

纏めて袋に入れると、鞄に文庫本やペットボトルを仕舞い急いで席を立つ。

通路に出た時、ちらりと反対側の席も確認してみる。

やはり全て片付けられ、先程まで人が座っていたとは思えない程に綺麗に整頓されていた。

「どこ行ったんだろう、自称・脚本家さん」

 頭の中で微かに男の顔を思い描きながら、私は出口のある車両に向かって歩き出す。


 駅に着いたところで、母から電話が掛って来た。

久しぶりに聞く母の声、昔はそんなことなかったのに今はその声を聞くとで少しだけ気持ちが落ち着く。世間話をしながら、用事を済ませてから家へ向かうと電話口の母に伝える。

「そう。じゃあ、気をつけて帰ってきなさいよ」

「わかった」

「母さんたち、お前の帰りを楽しみに待っているからね」

「うん、ありがとう。お母さん」

 母の優しい言葉。それに感化された私は普段あまり家族に対して言うことはない恥ずかしい台詞を

、懐かしい家族の姿を思い出しながら受話器の先に居る母へ伝えてみた。

「私も早くみんなに会いたいな!なんてね、あはははははー」

「――・・・・・・・・・・・・へ?」

「ん?お母さん、どうかしたの?」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの、調子でも悪くなった?辛いならタクでも呼んで・・・」

「あっ・・・あっ・・あ・・・ああああああああああ・・・・・・っっっ!!!!」

怯えるような声を出しながら母の声は徐々に遠退いていく。何が起きているのか分からず、私は必死に

母へ呼びかける。

「お母さん!お母さんどうしたの?!誰も居ないの?タクも父さんも居ないの!?ねえ、お」

「はっー・・・はーっ・・・はっ・・はっ・・はっ・・・・・・っあ」

     プツッ!

 ツー・・・     ツー・・・      ツー・・・    ツー・・・

「・・・もしもし?もしもし、お母さん!?お母さん!!」

 電話は一方的に切られた。母が切ったのか、それとも他の誰かが切ったのかは分からない。

「・・・お母さん!」

 だけど今そんなことを推理している場合ではない、一刻も早く家へ帰らなければ。

私は走りながら携帯電話を離して母との通話を切ると、急いでとある番号へ電話を掛ける。

「はい、○○産婦人科病院です」

「すいません、今日そちらに予約を入れていた者なんですが、・・・はい。

実は、急な用事が入ってしまいまして。予約をキャンセルさせていただきたいのですが・・・」


 少年の目は開いた。

 目の前に広がるのは真っ白い天井、耳に響く音は幾つもの電子音。

 リズミカルに音を立てるそれが何のか分からず、ただ茫然と白い天井を見上げる。

 重い体を起こすことが出来ない少年は、しかし意識だけは戻ったので状況を確認するため

必死に聞き耳を立てる。すると、電子音とカーテンの更にその向こう側、自分の身体からもっと離れた場所から話し声が聞こえる。会話の内容を少しでも聞き取ろうと片耳に全神経を費やす少年。

二種類の声、どちらも声の高さがとても低い。だけど一人の声は落ち着きゆっくりとした口調だけど、

もう一人の声はくぐもっていて、言葉が上手く聞き取れなかった。

「・・・っ」

 それでも少年は耳を傾ける、自分の記憶を辿るために。なぜ自分はこんな場所で悠長に寝ているのかを知るために。

「だから、ちょっとした教育的指導ですよ」

「しかしですね、医師からの話によると身体のあちこちに痣や火傷の跡がありましてねぇ。

特に一番酷いのが口内全体に出来ていた火傷の跡だとか・・・」

「あー、それはあれですよ、あれ。息子が水と熱湯を間違って飲んでしまいましてね」

「でもねー・・・普通、これぐらいの年のお子さんならコップを持った時に熱さで水かお湯か

判断できますよねぇ」

「だから、それはこいつがおっちょこちょいだから・・・」

「それにどうして全裸で一晩中ベランダに座っていたんでしょうか。こんな真冬です、

あんな恰好でずっと外に居たら凍死してしまいますよ?なぜ入れてあげなかったんですかねぇ?」

「・・・」

「そこのところも合わせて一度、署の方でお話を」

「娘が・・・」

「え?」

「娘が姿を消したんです」

「・・・消した?」

「密室の中で俺の大切な娘が神隠しにでも遭ったかのように消えてしまったんですよ!

俺が横に寝ていたのに、こつ然と!・・・だから俺、娘のことだけしか考えられなくってしまって・・・それで!」

 くぐもっていた男の声が徐々にクリアになっていく。その声を耳にした時、少年の記憶は歯車の様に

回り始めそしてなぜ自分がここに居るのか、その経緯と理由、全てを彼は思い出した。

 

 アパートの一室。

 少年と少女は二人身を寄せ合っている。

ボロボロのシャツと穴の開いたズボン、裏面が擦り切れた靴下というみすぼらしい恰好の少年とは

対照的に、少女の纏う服はすべて綺麗で純白のレースが付いたシャツに赤いスカート、刺繍の入った

ソックスなど釣り合わない格好の二人は、いつも鍵の付いた個室に閉じ込められていた。

 そこへ一人の男が入ってくる。だらしないシャツの着方、ベルトで固定していないズボンは下へ

ずり落ちて足で裾を引き摺っていた。

 男は少女だけ連れ出すとまた部屋に鍵を掛けていく。少年は一人部屋の中で腹を抱え空腹に耐えながら少女の帰りを待つ。

 それから一時間以上経ってから少女は少年の居る部屋へ戻された。裸の姿で。

 裸の少女を部屋に押し込めると、男は鳥に餌を与える様に袋に入ったバターロールを二個部屋の中に

投げ捨てると、また鍵を掛けてどこかへ行ってしまう。

 少女は身体を震わせながら啜り泣き、少年は来ていたシャツを少女に掛けてからパンを拾いに行く。そしてそれを半分に分けると、少女に切り分けた分とまだ手を付けていないもう一つのバターロールを渡して、そっと微笑んだ。

 少年の微笑みを見た少女は泣くのを止めて、彼に微笑みを返す。それを見て少年の顔は更に緩んだ。

そして半分のバターロールを口に淹れようとした所で、また先程の男が部屋に入ってきた。今度は乱暴に少年の頭を掴み、部屋から少年の身体を引き摺り出すと男はそのまま風呂場へと向かい歩き出す。

到着するなり直ぐに浴室へ投げ飛ばされた少年はバスタブに頭を強打して、意識を朦朧とさせる。その

身体に掛けられたのは電気ポットの中で高温に温度を上げられた熱湯。男はそれを数回に分けて少年の

身体に掛けて行く。熱湯が掛けられるたびに部屋の中で少年の悲鳴が響き渡る。

その姿に興奮して高笑いする男。ポットの中身が無くなると今度はシャワーのヘッド部分を少年の口の中へ突っ込み、蛇口を捻り一気に水を噴射させる。強引に流し込まれる水に耐え切れず呼吸が出来なく

なった少年の身体は酸欠状態になり激しい痙攣を起こす。それでもまだ男は口の中からシャワーヘッドを抜こうとしなかった。そして少年の意識は途切れ口にヘッドを入れたままその場に倒れ込んだ。


気が付くと少年はびしょ濡れのまま居間で倒れていた。重い体を起こして周囲を見渡すと先程まで自分がいた風呂場の方から少女の呻き声が聞こえてくる。少女の声を聞き、少年は無力な自分を呪う。

本当ならすぐにでも助けに行けばいいのに、そうすれば少女はこれ以上苦しまなくていいのに。しかし

足が竦んでその場で立ち上がるので精一杯だった。また熱湯を掛けられたら、水を入れられたら自分は

確実に殺されてしまう。そうしたら少女は一人だ。少女一人を残して死ぬ訳にはいかない。

自分は最後まで生き延びて、ほんの少しでも彼女に安らぎを与えなければ・・・そうしなければきっと

少女の心は壊れてしまうから。・・・だから・・・。

 唇を強く噛みしめながら、部屋に戻ろうと歩き出す少年。そんな時、足元に落ちていた一枚のチラシを目にする。そこには『随時依頼募集中』や『二十四時間受け付けています』などと書かれ電話番号も

載っている。そしてチラシの真ん中に煽り文句と思われる言葉が太い字で書かれていた。

『あなたが望む、その人の存在を消去します』

 少年は風呂場の方を一度見て男がまだ風呂場にいることを確認すると、固定電話が置いてある場所へ

ゆっくりと歩きだしチラシに書かれていた番号に電話を掛ける。

 2回の呼び出し音の後、電話は繋がった。出たのは女性、決まり文句の様に謝礼の言葉と会社名を淡々と喋りはじめる。少年は落ち着かない様子でそれを黙って聞く。そしてやっと会社名を聞き終えて用件を聞かれ口を開こうとした瞬間、電話は『ブチッ』と大きな音を立てながら消える。

瞬間、嫌な予感と気配が電流の如く身体中を走り出す。

身体を震わせながら恐る恐る振り返れば、少女の頭を鷲掴みにしながら片手でコードを握りこちらを見る男がいつものアノ顔で、いつも悲鳴を上げても止めることなく煙草を肌に押し付ける時の、身体を何度も蹴飛ばして、テーブルに頭を叩き付ける時の顔で男は少年の方を笑いながら見ていた。


 チラシはライターの火で炙られ灰になり、その灰を口の中へ含まされた少年の口内には炭と火傷の跡だけが残る。

少年が目覚めるとそこはベランダだった。全裸の状態で柵に身体を縄で縛りつけられた状態で真冬の空の下、少年はそこに固定されている。それでも少年はただただ少女の身を案じた。あんな男と二人っきりで部屋の中にいたら、恐怖で眠ることも出来ないだろうしもしかしたら男が少女を眠らせない位にまた酷いことをしていたら・・・。

そう考えただけで無力な自分を心から呪う。結局自分はなにもしてあげられないのだろうか、

いくら微笑みかけてもそれは一時の救済に過ぎない、もっと根本的な原因を彼女から取り除いてあげる

ことは出来ないのだろうか。上を向いても空は見えず、ただひび割れたコンクリートだけが無慈悲に存在しているだけ。寒さと痛みに耐えかねた少年は決して望んではいけない願いを口にしてしまう。

「・・・死んでしまいたい・・・」

 少女のことも男のことも全て投げ捨てて、一人だけ楽になりたいと願ってしまった。そして少年の瞼は閉じられる。願わくば、このまま永遠の眠りにつければいいと胸の中で願いながら。

 

 夢の中もしくは死後の世界の中。少年は電車に乗っていた。

黒ずんでいない臭い体臭のしない肌に綺麗に整えられた身なり。

隣には見知らぬ少女が、反対側の席にも見知らぬ男が座って二人でこちらを見ている。不思議そうな顔をする少年に男は話しかけてきた。

自分たちは君の依頼を受けてここへ来たこと、ここは精神世界であり死後の世界ではない。だから、

少年はまだ死んではいない。君をここへ連れてきたのは依頼を聞くため。少年が望む存在を消去したい

人間の名前を聞くためだと一気に説明して、言い終えると少年に綺麗なカップを差し出す。

中に入っていたのは温かいコーヒー、それをとても美味しそうに少年は口に含んだ。

とてもおいしいです、そう感想を述べると男は優しく微笑みかけ、そして改めて問う。  

一体誰の存在を消したいのかと。

質問の答えは決まっていた。

だから少年は迷うことなくハッキリとした口調で少女の名前を言った。

 あの男ではないのか?今度は隣の少女が問う。少年は答える。あの男が消えても自分たちの傷が癒えることは無い、何も解決なんかはしない。だから彼女の存在を消す。自分勝手な願いを少女に押し付けてしまうけれど、それでも存在を消してしまえばあの子にこれ以上の苦痛も陵辱も味合わせることは無く

なる。それだけが今、自分に出来る最大級の彼女への救済だ。

無力な自分を悲嘆しながら少年は泣く。泣きながら出会ったばかりの二人に心の底から願う。

「どうか、彼女だけは助けてあげて下さい」

男と少女は少年の願いを受理する。そして二人は少年に色々な注意事項を伝えた。

存在を消しても、少女の魂はまだ現世に残り続けるし肉体が滅ぶことは無い。消された人間は皆、

見えない存在として依頼主の隣りに居座り続ける。しかし、もし依頼主以外の誰かが消えたその人間の

ことを思い『会いたい』と願ってしまえば、消去された人間の肉体は復元され再び現世へと現れ出でる、例えどんな思いで『会いたい』と願われても。昔の記憶も消された存在の状態になった時の記憶も

残したまま、消えた人間は再び依頼主の前へと現れるのである、と。

 少年は問う、消去した人間が現世に復元されずに済む方法はないのか。その答えを少女が言う。

それならば、簡単。依頼主自身が死ねば、消去された人間の身体は復元することが出来ず朽ち果て魂も

また腐敗していずれ死へと導かれる。ただし誰かに願われてその人間が現世へと再度姿を現してしまった後ならば、依頼主が死のうが消去された人間は現世に存在して生き続ける。それを聞いた少年は頷き、

分かったとだけ言う。素っ気ない言葉のあとに、さらに少年はもう一言だけ呟く。

「じゃあ僕が死ねば、彼女も一緒に死ねるよね」

 少年の言葉を聞いた少女は目を見開き、男は声を押し殺しながら笑う。

 あの男が居る限り自分に自由は無い、だからきっと自由に死を選ぶことは出来ない。だけどその間

だけでも彼女の肉体的苦痛が消えるのなら・・・それだけで十分。

あとはタイミングを見計らって自ら命を絶つか、男の手によって殺されるか、だ。しかしそんな些細なことは問題ではない。少年にとって一番大切なのは腹違いの妹、少女のことだけだから。

 電車は徐々にスピードを下げて行き、この空間の終わりを告げるアナウンスが流れだす。

 すると隣に座っていた少女が少年へ人形を手渡した。それはうなぎのように見えるがしかし上下左右

には人間と同じ手足が生え何か棒状のものを握っている。少女にこれは何かと聞くと、少女は人形の

名前らしき言葉を言った。だがそれを聞いても子の正体が分からない少年が首を

傾げると見兼ねた男が補足をする。

これは地域限定のキャラクターでうなぎでは無くタラという魚で、棒では無くアスパラガスを握っている設定なのだと少年へ説明するが、テレビも碌に見たことが無い少年にはやはりよく分からないもの

だった。しかし少女曰く、これを持っていればもう一度だけ彼ら二人と出会うことが出来るらしい。

だからその時まで持っていて欲しいとのこと。少年は快くそれを承諾して改めて人形を受け取る。

「私、君のこと気に入りました。近いうち、また会いましょう」

 男の言葉に、少年も頷きそして「はい」と元気よく返事をした。


 目が覚める。真冬のベランダ、全裸で柵に巻きつけられている少年。

 ふと横を向くが、そこに少女の姿は無かった。やはり先程まで自分が見ていたあれはただの夢だった

のだろうか。しかし後ろに拘束され寒さで悴み感覚すらも碌に残っていない手の中がなぜか重く、それ

だけで少年の心の中に微かな希望が生まれる。それを見ることは出来ないけれど、もしも手の中に

電車内で出会った少女から貰った人形を掴んでいるのだとしたら、さっきの出来事は本当に起きたことで・・・それはつまり。

 少年が僅かな希望を胸に瞼を閉じようとした所へ男は突然、窓をベランダに出てくると叫び声を

上げながら少年の顔を何度も拳で殴り始めた。発狂する男の暴力にひたすら耐える少年。

執拗に殴り続けながら男は吠える。少女が居ない、ベッドに拘束して逃げ出せないようにしていたのに、ちょっとトイレに行っていた間に姿を消した。部屋の中には隠れていないし、鍵は閉まったままだし、

どこかに逃げ出した形跡も無い。お前が消したのか!お前が俺から少女を奪ったのか!糞餓鬼が!死ね!返せ!死ね!返せ、俺のおもちゃを返せ!あいつが居なきゃ誰が毎日俺の下世話をするんだ!ふざけるな!早く返せ!返せ、返せ、返せ!

少年が痛みで意識を失っても男の手は止まらなかった。それどころか、ぐったりとした少年の身体から

縄を外すと今度は室内へと移動させて暖房の利いた暖かい部屋の中で蹴り始める。

腹を蹴られ、痛みで微かに少年の意識が戻ると今度は頭部をボールの様に蹴り上げて楽しそうに笑う男。徐々に視界がぼやけていく中で、少年は男の背後に彼女の姿を見たような気がした。少年の姿を涙ぐみ

ながら見つめる透明な少女の姿を。

それを確認した少年は微笑み、そして遠くで何度も鳴るインターホンの音にも気づかずに再び意識を

失う。手の中にしっかりと少女に貰った人形を掴んだまま。


気が付くと、少年は少女を膝の上に乗せながら電車に乗っていた。

恥ずかしいよ、そう言って少女を退かそうと思い身体に触れようとしたが両手は少女の身体をすり抜けて前にある座席の背凭れにぶつかる。それを見てクスクスと楽しそうに笑う膝の上の少女。そして隣の席に座るもう一人の少女もまたお弁当を食べながらも、口元だけ緩ませニヤニヤしながら少年を見る。

状況が分からず戸惑う少年に反対側に座っていた男が声を掛けて現状を説明し始める。

 少年が持って帰った人形を媒体として君たちをこの電車の中へと転移させた。少女の存在は既に消去

済みなので誰にも見えてはいない。ここは夢では無くて現実の世界。ちょうど営業まわりの最中で、

席が空いていたから呼んでみたそうな。

 男は胸元から小さな和紙のようなもので包装された小さな包みを二つ取り出して、少年に手渡す。

これは何かと少年が尋ねると男は『ひよこ』だと言った。その名前を聞いてもフサフサした黄色の鳥

しか想像できない少年と少女が不思議そうに顔を見合わすと、隣に座る少女が食べかけのそれを二人に

見せる。どうやら鳥ではなく鳥の形をしたお菓子のようだ。それが分かると二人はまた顔を見合わせ

笑い出すと、受け取った包みののうち一つを男の座っている席の隣にある空席に置き、男へ返した。

いらないのか?男が尋ねると少女は首を振り少年が答える。

 僕たちはいつも半分ずつしか物を食べないから一つでいいのだ、と。

少年は男から貰った包み一つを開けると真ん中で半分にして少女に手渡そうとする。しかし

半分に割られたお菓子は少女の手をすり抜けて地面へと落下していく。それを寂しそうに見つめる少女。少年は徐に床へ落ちた破片を拾うと軽く息を吹きかけてから口の中へ頬張り美味しいね、そう言って

もう一つの欠片を透明な少女が座る自分の膝の上にそっと置く。少女は涙を流しながら何度もうん、うんと少年の言葉に頷き続けた。それからも少年と少女は最初で最後の列車旅を楽しんだ。

少年の意識が回復するその時まで。


「・・・」

 寝たきりのままで辺りを見渡すが、もう少女の姿を見ることは出来なかった。

しかし聞こえてくる男の話から察するにまだ彼女の存在は消去されたままのようだ。

「・・・」

 早く少女のために死ななければ、少年は心の中で呟くと目を瞑りじっと身体の回復を待った。

早く良くなって、そして一日でも早くあの子と一緒にこの世界から逃げ出そう・・・。

瞼の裏に映る少女の姿を愛おしいと思いながら、少年は改めて決意を固める。


 家の前には人集りが出来ていた。なぜそんなものが出来ているのか、そう不思議に思いながらも今は

早く家の中へ入って母の様子を確認しなければならない。

 私は駆け足で家に向かうとそこで懐かしい声に呼び止められ、思わず足を止めてその声がする方に

振り向く。

そこに居たのはうちの隣に住んでいるおばさん。小さい頃からよく遊んでもらったりして、とても

お世話になった人だ。この人なら何か知っているかもしれない、そう思い話し掛けようとすると

おばさんの方がら先に口を開く。

「ねえ、タクちゃんは・・・今でも元気なのかしら」

「は?」

 何をおばさんは言い出しているのだろうか。そんなこと家から離れて一人で暮らしている私が、

ここ数年ずっと家には連絡なんか入れていないこの私が知るハズ無いじゃないか。そんなこと直接母に

聞けばいいじゃない。それなのに、二人とも昔から仲がいいのに、何で・・・。

「あの、私ずっと実家を離れていたもので。そういうことはあんまり知ら」

「見えないのよ、タクちゃんの姿が」

「え?」

 ・・・見えない?見えないって、何。どういう意味でそんなことを言っているの。

「お母さんに聞いてもね、タクは元気だから何も問題ないって言われるんだけど。

でもね・・・、娘の話では最近タクくん学校にも来てないって言うの。3ヵ月もよ?3ヵ月も学校を

休んでいるっていうのに、何度タクくんについて尋ねてもお母さんは大丈夫よ、元気よって、それしか

言ってくれなくて。

学校へ問い合わせても、毎日家の方から本人の体調が優れないから休むって連絡が入っているから問題

ないって言われたんだけど、でも私はどうしてもそれが納得できないの。

だって、おかしくない?仮にタクくんが少し気持ちを閉ざしてしまってお家の中で引き籠ってしまって

いるのだとしても、それならもう少し彼に気を掛けるべきではないの?タクくんのことを少しでも

心配してあげようとは思えないのかな?」

「お・・・おばさん?」

 タクのことを、母からそんなことは一度も聞いたことが無いから、初耳だから、私もとても

驚いている。だけどおばさんは、何をそこまで不安そうな表情で私に聞いているのだろう。  

彼女は私に何を問おうとしているのか。

「ねえ、どうして?どうしてあなたのお母さんはタクくんが、・・・息子さんが大変な時期だって

いうのに、なんであんなに楽しそうに笑っていられるの?」

――・・・・・・は?

何で、そんなわけないじゃない。

お母さんは私以上にタクのことが大好きで、いつもいつもタクのことばっかり見ていて、私が家を出る時だってタクが風邪引いたから見送りは出来ないって、そう言われて玄関先にさえ見送りに来て貰えなかったのに。そんなハズない。そんな、そんなことは絶対・・・!

「今じゃおかしな噂まで広まりだして・・・。隣の家だからって理由で、うちにまで変なイタズラ電話が掛って来るのに・・・それなのに、あなたのお母さんは笑顔を絶やさないで。

あの寡黙であまり感情を表に出さなかった旦那さんでさえ最近は声を上げて笑っているの。二人で、

何が楽しいのか分からないけど、毎日毎日馬鹿みたいに笑って・・・うちにも迷惑を掛けているのに

詫びることもしないで笑って・・・笑って・・・笑っっっっ!!!!」

 私の肩を掴んでいた手に力が込められ、おばさんの指が肩の中へ喰い込みそうになる。

痛い、離せ!そう叫びたかったけれど、だけど私の肩を掴むおばさんの顔はグチャグチャに崩れ鼻水を

垂らしながら涙を零している。全身を震わせながら咽び泣くおばさんの、強い憤りを感じながらも

見えない狂気に怯えるその姿を目前にして、私は何て声を掛けてあげればいいのか分からず、ただ茫然とその場で立ち尽くすことしか出来なかった。

でもせめて何かしなければ。そう思いおばさんの肩に手を伸ばそうとしたところで、悲鳴のような声が

聞こえてきたので慌てて家の方へと顔を向ける。

同時に家の中から出てきた人物と目が合い、私は無意識に睨みつけていた。

彼らを、そう、電車の中で出会ったあの二人組を。

黒髪の少女は無表情のままこちらをじっと見つめ、その子の手を握る銀髪の男は楽しそうに笑いながら

私に手を振っている。

「・・・」

 掴まれていた手を払い退け、家の方へ歩き出す。家の前に集っていた人間たちは虫の様に巣穴へ一斉に帰っていったので門の前にはもう誰一人としていない。

隣の家に住むおばさんだけがその場に立ったまま、ずっと私の背中を眺めていた。

「どうも」

 門を開けて我が家に足を踏み入れると、部外者である二人組は律儀にお辞儀をする。

「お帰りなさいませ、お姉さま」

「ただいま」

 吐き捨てる様にそう言いながら二人の間を通り抜けて久しぶりの我が家に足を踏み入れると目の前に

その人物は現れる。懐かしい笑顔を私に見せながら。

「お帰り、姉ちゃん」

「・・・タク!」

刹那、私の視界がずれる。そして声も出せず唇も動かせないまま、全身から力が抜けていく。

 違う。私の身体は一瞬でバラバラに裂かれたのだ。

痛みも何も感じないままに、サックリと切断されてそのまま重力に逆らうことなく床の上へと排泄物の

ように落ちて行く。

ボト・・・  ボト・・・  ボト・・・  ボト・・・  ボト・・・  ボト・・・ と。

しかし私の意識だけはまだその場に残っていて、だから自分の肉片が床に落ちて行くのを客観的に眺めることが出来た。

たがいつしかその意識すらも徐々に薄れて行きあらゆるのモノが消えた頃、私という存在は完全な『無』となりこの世界から『消去』された。


 少年は落ちた肉片に話しかけ、その横で少女はそれを黙々と拾い上げ鞄の中に仕舞い込む。

「姉ちゃん・・・ありがとな。あんたのおかげで、俺はまたこの世界に存在する事が出来るよ。

でも残念だな。自分が殺そうとした愛人の子供によって一緒に存在を消されるなんてな」

 乾いた笑い声を上げながら肉片を後にして、居間に向かって歩き出す少年。

部屋の中には無残に全身を何度も刺され殺された二人の遺体が転がっている。

一人は固定電話が置いて有る棚の横で、もう一人はソファの上でそれぞれ死んでいた。

それは紛れもなく彼と、そして肉片になった彼の姉である彼女たちの両親の遺体。

少年はソファの方へ歩きだし、そこで眠るように死んでいる父親の遺体に向かって話しかけた。

「親父・・・ごめんな、あんたも被害者だったのに。でも恨むならお袋を恨めよ。自分だけの物にしたいとか言い出して俺の人生を勝手に終わらせようとしたこんな糞ババアはもう、親父が昔好きだった女

じゃないんだよ。

自分が産んだ息子を愛しすぎて、セックスまで要求してきたコイツは、ただのいかれた人間だ。そんな奴は死ななきゃいけない、誰かが殺してやらなきゃ一生皆に迷惑をかけ続ける。だから俺がみんなを代表

して殺してやったよ。親父だって、本望だろ?こんなになっても、それでもあんたはコイツのことを

信じて自分の方がおかしくなったのかもしれないからって、一人で病院に行って無理やり精神安定剤

なんか貰って飲んだりしてみたりしてさ。最後までこの女を信じて、愛し続けてきたんだから。

そんな奴と死んでも一緒に居られるなら、文句ないだろ?なあ・・・そうだよな・・・親父・・・親父っっ・・・!くっ・・・うぅ・・・うっ・・・」

 膝を付きソファの上で息絶えた父親の遺体を抱きしめながら、嗚咽をあげる少年。

そんな彼の後ろ姿を少女は不思議そうに見つめながら隣に立つ男に尋ねる。

「ねえ、何で泣くのかな」

紅葉の形をした饅頭を口の中に頬張りながら、その質問に男はつまらなそうな声で答える。

「彼らが人間だから、じゃないですかね・・・」

 そう言って、男は少女の鞄を開けて中身が空っぽになっていることを確認してから、その中に自分が

食べていた饅頭と同じ形の味違いを幾つかその中へと入れていく。

「チーズ、チョココーティング、抹茶、レーズン、こしあん・・・と」

「あとで駅弁買ってね。仕事を終えた直後でお腹ペコペコだよ」

「はいはい。分かってるよ」

 小序と楽しそうに話しをしながら男はその手を取り、居間で泣き続ける少年に挨拶もせずにさっさと

玄関から出て行くと、手を繋いだ二人はどこかへと姿を晦ます。

 

 数分後、警察が到着すると家の玄関先には一人の少年が座っていた。

声を掛けようと思い肩を擦ると、少年の身体はゆっくりと横に傾きそのまま床の上へと力なく倒れ込む。手に包丁を握った少年は首から大量の血液を流しながら、今度こそ本当に自分の人生を終わらせていた。


 

  その事件から数日後、ある事件が新聞の端っこに小さな記事として掲載される。



『小学6年生男児 入院中の病院 屋上から転落 死亡 自殺か?』



                                       

 




今となっては長い台詞を言う男といえばリーガル・ハイの古美門先生が代名詞となり、この作品のタイトルも最早2番煎じ。

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