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【第一章完結】旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです  作者: ましゅぺちーの
第一章 虐げられる妻、からの公爵様との契約です!

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19 夫だった人の帰宅

「わぁ、これがマイアード夫人のお母様の着ていたドレスなんですね!とっても素敵です!」

「そう言ってもらえて嬉しいです。私の父もこのドレスを着た母に惚れ直したと言っていました」



翌日、グロリア伯爵邸に訪れたリリカは母親がおよそ二十年前に着ていたドレスを持ってきていた。

マーメイドラインのシンプルなノースリーブドレスは、スタイルの良いリリカによく似合いそうだった。



(綺麗ね……私も結婚したときのことを思い出すわ……)



結婚式というのは一生の思い出になる。

せっかくなら最も自分が美しく見えるドレスで臨みたいだろう。

そのために彼女はフルールにリメイクを頼んだのだ。



「何か希望はありますか?」

「元のウエディングドレスのイメージを残しておいてほしいんです……それと少しシンプルすぎるので、何か足してもらえたら……」

「何か、とは?」



フルールが尋ねると、リリカは戸惑ったように視線を彷徨わせた。



「実は私はドレスにあまり詳しくなくて……どのようなものが合うかわからないんです。これまでお父様や夫に贈られたもののみを着ていたもので」

「あら、そうだったんですね」

「昨日の夫人会で、グロリア夫人のリメイクしたドレスを見て思ったんです。この人はドレスデザインにおいてとても素晴らしい目を持っているのだと」

「ま、まぁ……」



そんな風に褒められるなんて。フルールは何だか照れ臭くなった。



「ですから、グロリア夫人におまかせしたいんです」

「おまかせ……ですか?」



フルールは困惑した。

一生に一度の結婚式で着るドレスを、自分のようなものに完全に任せていいのかと。

しかし、リリカの意思は揺らがなかった。



「はい、私よりも夫人のほうが見る目があるでしょうし……」



フルールは悩んだ末、彼女の提案を受け入れることにした。



「……そうですね、考えてみます」

「ありがとうございます!」



リリカは嬉しそうに顔を綻ばせた。




***




その日の夜、フルールは部屋でリリカが置いて行ったウエディングドレスを眺めて呟いた。



「私に任せるだなんて……マイアード侯爵夫人はとんでもないことをするのね」



初めての仕事が、こんなにも重大な責任を伴うものになるとは、フルールは思いもしていなかった。

ソファでダランと体の力を抜いて座っているフルールに、侍女長が励ますように声をかけた。



「で、ですが奥様、これはチャンスかもしれません」

「チャンス?」



彼女は侍女長のほうを振り返った。



「はい、マイアード侯爵夫人が結婚式で着ていたドレスが奥様のデザインしたものだと知られれば、この先ブティックを開く上で有利になるのではないでしょうか!」

「有利に……」



侍女長の言う通りだった。

この時代、貴族のご夫人が通うブティックは限られている。

プライドの高い貴族たちが、平民と同じ店で買い物をすることはほとんどない。



そのため、貴族令嬢や夫人たちは基本的には平民には手の届かないような高級ブティックに通っている。



「そうね、考えてみればその通りだわ。マイアード夫人が私のデザインしたドレスを結婚式で着れば……」



――そのドレスが注目を集め、フルールの名が社交界で広く知れ渡ることとなる。

何て幸運なことなのだろう。

そのことを考えたフルールは、急にやる気が出てきた。



「よし、やるわよ!」

「その意気です、奥様!」



元気を取り戻したフルールに、侍女長はホッと息をついた。

そのとき、部屋の扉が勢いよく開けられた。



「――奥様!旦那様がお帰りになられました!」



中に入ってきたのは慌てた様子の侍女だった。

彼女は荒い呼吸を整えながらフルールを見つめている。



フルールはそんな侍女に一言返した。



「………………………あら、そう」



それだけ言うと彼女は再びソファに座り、ドレスデザインのアイデアを練り始めた。

いつもと全く違うフルールの様子に、彼女は衝撃を受けた。



「お、奥様!?お出迎えに行かなくてよろしいのですか!?」

「行かないわよ、面倒臭い」

「え、ええ!?」



本日二度目の衝撃だった。

侍女長はフルールの前で大声を上げる侍女を見て眉をひそめた。



「あなた、奥様に失礼よ。もう戻りなさい」

「は、はい……」



彼女はフルールにチラチラと視線をやりながらも、部屋を出て行った。

侍女が去ったあと、フルールの手元のデザイン画を覗き込んだ侍女長が感嘆したように言った。



「奥様、絵がお上手なのですね」

「そう?絵を描くのは前世から好きだったのよね」

「前世……?」



侍女長は不思議そうに聞き返したが、ドレスデザインに集中している彼女の耳には入っていないようだった。

そしてエントランスでは、夫ルースがフルールを待ち続けていた――




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