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序章 9,初めてのマイク

「時間切れで決着つかず!!! タイムアップドロォーーーー!!!!!」


放送席で実況のナーグが、声を張り裂けんばかりに叫ぶ。

この世界で行われた、初めてのプロレス。記念すべき第一戦の結末だった。


「想像以上に面白い試合じゃったな」

「あぁ。二人とも、完全に想像を超えてきた……これこそが、プロレスだ」


ドラゴンは満足していた。そして、それ以上に感動していた。

魔法や闘気などといった地球にない謎の力があるため、前世のプロレスとは全く違う戦いになっているが、プロレスの根幹たる魂のぶつかり合いという部分は同じだったからだ。



「おっと! リング上で魔王ゼオンと勇者ノブナガ……いや、第六天魔王にマイクが渡されました!」


ドラゴンはハッと我にかえる。


(そうだ……試合後やバックステージのマイクまでも含めてプロレスだ。……マイクでもしっかりストーリーを紡いでくれよ)


ドラゴンは祈るような気持ちでリング上を見つめる。


「――久しぶりに、血湧き肉躍る“本物”の戦いができた」


ゼオンの声が響く。低く、重く、威厳に満ちたマイク。

だが、その言葉を受けるノブナガは、まだ肩で荒く息をしている。


「この決着は次回、必ずつける。もちろん……俺様が勝つ」


そう言ってゼオンは、右手を差し出した。

絶対魔王が、自ら求めた初めての握手――その重みをノブナガも感じ取っていた。


だがしかし、ノブナガは、その手を数秒間じっと見つめ――バシンッと叩いた。

そうでなければ、とばかりにニヤリと笑う魔王ゼオン。


「試合はタイムアップドローだが……勝負には負けたと、俺は思っている」


ゼェハァと息を切らしながら、ノブナガは言葉を絞り出す。


「今の手を叩いた力――それが、俺に残ってた全部だ。試合時間があと数秒あったら……確実に俺は負けてた」


ゼオンはフンッと鼻を鳴らす。


「……言いたいことはわかった。だが、だからと言って俺様が勝ったとは限らん。どちらにしろ、決着は――次戦だ」

「ったりめぇだ……! 次はもっと強くなって、テメェをブッ飛ばす!!!」

「いつでも受けて立つ。明日でも、その『黒雷』が完成してからでも構わん。だが――あまり俺を待たせるな」


そう言い残し、ゼオンはレフェリーから魔剣ラグナロクを受け取ると、振り返らずリングを降りた。


ノブナガはその背を見送り、レフェリーから差し出された聖剣エクスカリバーを見やる。


「いらねぇ……こんな試合の後に、そんなもん持って帰れるかよ」


吐き捨てるように言うと、レフェリーに背を向ける。

(もう剣を持つ力もねえんだよ)

自らに回復魔法をかける力すら使い切ったノブナガだが、そんな素振りは微塵も見せない。それは意地であり、プライドだった。


ノブナガもリングを降りようとしたその瞬間だった。


一条の雷がリングに落ちた。

現れたのは迷宮都市エルドラールのS級冒険者。


ーーー雷帝ジェレミー・ツァーリ


「よう。すっげえいい戦いだったな」


雷帝は屈託なく笑う。

一方で、実は満身創痍のノブナガは不機嫌そうにジェレミーを睨みつける。


「ありがとよ。で、何の用だ?」

「エクスカリバー……、いらねえなら貰ってもいいか?」


挑発的なセリフ。


本来なら、有無も言わずにブッ飛ばす所だが、今のノブナガにはできない。


「……勝手にしやがれ」


もはや限界が近いのため、とにかく早く帰りたいノブナガ。

だが、またもやリングに雷が落ち、ノブナガの退場を阻む。


現れたのは、グリフォンの仮面を被った謎の男。


「困るな、勝手に持って行ってもらっては」


仮面の男は、雷帝ジェレミーの前に立つ。


「……何モンだ?」

「雷獣王サンダー・グリフォン」


仮面の男、サンダー・グリフォンは、くるりと180度まわり、ノブナガに向き合う。


「聖剣エクスカリバー。私が頂きたいのですが、貴方を倒さずに持ち帰るのも気が引けますので、是非私と戦っていただきたい」

「おい、順番抜かしすんな」


ジェレミーがサンダー・グリフォンの肩を掴み、サンダー・グリフォンはその手を軽く叩き落とす。


「貴方は貰おうとしただけでは?」

「喧嘩売ってんのにも気付けねぇ奴は引っ込んでろ」


そして、ノブナガに限界が訪れ、、、キレた。


「うるせえ! テメーら、めんどくせーんだよ!!! まとめて相手してやる。安心しろ、雑魚相手に『黒雷』なんざ使わねえ。『白雷』だけでまとめて粉々にしてやらぁ!!!」


ノブナガの咆哮に、待ってましたとばかりに嗤う雷帝と雷獣王。


「おもしれえ提案だが、『白雷』を使えんのは自分だけだと思ってんのか?」

「そのセリフは貴方にも言えることですがね」


雷帝と雷獣王が同時に白い雷光を身に纏う。

リング上には伝説の戦闘術『白雷』の使い手が3人。


「……思ったより楽しめそうじゃねえか」

「まあ、ぶっちゃけ、切り札だけどな」

「いやいや、なんだか楽しくなってきましたね」


3人は獰猛に嗤うと、それぞれ別のコーナーからリングを降り、退場した。


そして、放送席からナーグが絶叫した。


「なんということでしょう!!! 第六天魔王ノブナガvs雷帝ジェレミー・ツァーリvs謎の仮面の男、雷獣王サンダー・グリフォンの3WAYマッチが、今決定しましたぁーーーーっ!!!!!」


ドラゴンは満足気に頷くと、記者たちのいるメディアルームの方へ顔を向ける。


「試合日時と詳細はこの後の記者会見で発表する。会見は30分後、メディアルームの隣のカンファレンス・ホールで行う」


それだけ宣言すると、ドラゴンは放送席を離れる。


「クックック、プロレスというのがこうも面白いもんじゃとはな。投資して国から出てきた甲斐があったというもんじゃ」

「いやぁ、本当に面白かったですね。この試合の模様は後日配信されるとのことですので、一度ここで締めておきたいと思います。セシルローザさん、今日はありがとうございました」

「うむ。次の試合が楽しみじゃな」


こうして、最初の試合は幕を閉じた。。。

続きを読んでやってもいいぞ、という方は、

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