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序章 7,荒ぶる勇者と魔王  

書き溜めている8話まで一気に投稿します。


「光の勇者と呼ばれる前、ノブナガは“白い稲妻”と呼ばれていた」

「ええ、耳にしたことがあります」

「自らを稲妻と化して、光速で敵を討つ。今から見られるぞ……。その真骨頂をな」


ドラゴンがしたり顔で解説し、ナーグが食い気味に頷く。


リングでは、白き雷光を纏ったノブナガが、半身で構えて魔王を指差す。次の瞬間、一条の閃光がリング上に走った。


「──セット」


言葉と同時、ノブナガが踏み込んだ。


刹那──雷光の膝蹴りが一閃、魔王の顔面を捉え、魔王の巨体が宙に浮く。


「すさまじい雷撃のような膝蹴りがぁぁ、魔王の顔面に直撃ぃぃぃっ!!」

「アレは──『白雷』飛竜閃」


セシルローザが即座に技の名を告げる。


続けざま、ノブナガは逆サイドのロープへと飛び、雷光を弾ませながら反動を得ての二連撃。稲妻を纏ったサッカーボールキックが、魔王ゼオンを真芯で捉えた。

魔王の巨体が吹き飛ぶ。

魔王の体は一切勢いを緩めることなく、そのまま壁へ激突し、まさに轟音というべき衝撃音が響き渡る。


「……『白雷』翔竜閃じゃったかの」

「なんという二段構なえの攻撃……! しかし、それでも魔王は……立ち上がってくるぅッッ!!!」


立ち上がる魔王を見据えながら、ノブナガが再び半身に構える。


「セット──」


再び雷光が魔王を照らす。

今度は右手に、これまでとは比較にならない程に濃密な魔力が収束していた。


「光の勇者に手を緩める気配は一切なし!! これは、今度こそ決定打になるのか!?」

「魔王のなんちゃらフェニックスハンマーと比べても、込められた魔力が桁違いじゃな」

「来るぞ。『白雷』四大秘奥義が一つ──爆竜閃だ」


ノブナガの右手に業種くされた雷光がさらに膨張。雷そのものとなった彼が、掌底とともに魔王へと突撃、いや爆撃。

既に壁際に在った魔王の肉体は、壁に打ち付けられて吹き飛ぶ事すら許されず、その全ての威力を受け止めさせられる。


「決まったぁぁッッッ!!! まさに伝説級の破壊力!! これが爆竜閃っっッ!!!!! 人類史上、これほど激しい“壁ドン”があっただろうかぁぁぁっ!!」

「ふむ。壁に傷一つついておらんの。妾は満足じゃ」


ノブナガは壁際で動かなくなった魔王を抱え上げ、飛翔する。


「光の勇者が天高く舞い上がった。ここからどうするのかぁ!!?」

「そりゃ落とすしかあるまい」

「当然、落とすじゃろ」


ノブナガは先ほどのように爆発的な雷光を貯める。今度は右腕ではなく、頭上に持ち上げた魔王に雷が巻きつけられる。


「白き雷雲の稲妻を纏わされた魔王は一体、いつ落とされるのか? そして、ノブナガは一体いつまで稲妻をチャージさせ続けるのか!?」

「随分と溜めておるのぉ」

「客席に落としてくれたら、結界のいいテストになるんだがな」


これでもかと限界まで圧縮された魔王がついに落雷と化す。


「投げたぁぁぁっ!!!!!」


空を裂くように魔王が投げ落とされた先は、リングではなく、観客席。

即座に発動した結界にぶつかると同時に魔王の身体がバウンドし、そのまま場外エリアへ落下する。


「まさに客席へ一直線!!! ドラゴンさんの希望通り、結界に激突しましたぁ!!!」

「気が効くじゃないか」


魔王は場外エリアへ落ちたまま、動かない。一方でノブナガはリングへ戻り、レフェリーがカウントを開始する。


「さあ、場外カウントが始まりました! 20カウント以内にリングへ戻らなければ、敗北! 果たして、魔王ゼオンは戻ってこれるのかッ!!」


カウントが進む中、魔王の身体がムクリと起き上がる。埃を払うようにパンパンと身体を軽く叩き、口元の血を拭って、ひと息。

そして――軽やかに宙を蹴り、リングへ飛翔。


カウントは、、、19。


「ギリギリのカウントとは裏腹に……どこか余裕すら漂わせる魔王ゼオン!! これが、“絶対魔王”の底知れなさッ!!!」


魔王を睨みつけながら、再び勇者ノブナガが白い雷光を身に纏い、両拳にエネルギーを充填させる。


「──セット」


その言葉をトリガーに、ノブナガが弾けるように飛び出した。電光石火の突撃。

これまでと同様、魔王ゼオンには受ける以外の選択肢はない、、、かと思われた刹那、

――それを魔王が迎撃した。


電光石火を超える超速のカウンター。

魔王ゼオンは、右脚を上から振り落とす形で蹴りを浴びせ、ノブナガを撃墜する。

まさに雷光を蹴り裂く、絶望的な一撃。


「撃ち落としたぁぁぁ!!!! まさに一瞬のカウンター、白き稲妻を正面から蹴り落としました!!!」

「完全に見切っておったな。今のところ、魔王の方が格上じゃ。勇者の小僧に何もないならここで終わるかもしらんの」


魔王は倒れ込んだノブナガの頭を鷲掴みにし、高々と持ち上げる。


「試合開始から10分が経過し、残りは五分!! ここからは俺の番だと言わんばかりです」


魔王はノブナガをそのまま高く投げ飛ばすと、紅蓮のエネルギー弾を連発。

天空に浮かぶノブナガめがけ、灼熱の砲撃が次々と炸裂する。


「凄まじい連撃です! しかし、ノブナガは吹き飛ばない!! なんという耐久力!!!!」


その耐久に驚く間もなく――魔王が空中へ弾丸のように飛び上がり、ノブナガの真上を取る。


「ここから、、、ミサイルキックだぁぁ!!!」


撃ち落とされ、リングに叩きつけられるノブナガ。

だが、すぐに立ち上がり、稲妻を纏う。

その色は────紫!


「雷光の色が、、、、変わったぁっっ!? ……ド、ドラゴンさん、これは一体?」

「知らん!。『白雷』を自分なりに改良したんだろう。『紫電』とでも呼ぶか」

「名前も見た目もどうでもよい。問題は威力じゃ。」


ノブナガ紫の雷光を重ねた両手に収束させ、大砲のように撃つ。

それは、まるで雷の砲撃。


だが、魔王はそれを前に突き出した掌で――握り潰す。


「な、な、なんということでしょう!? 強い。強すぎるッ。。。 まさしく絶対魔王!」

「あの技の原型は、『白雷』四大秘奥義が一つ──雷光砲だな。まあ、効かなかったわけだが」

「技のせいではないぞ。シンプルに力負けじゃ」


ノブナガは、 拳を握り直し、雷光をさらにその身に呼び寄せる。

紫の雷光はその色を真紅へと変化させた。


「おっ、今度は赤い稲妻になったな。『赤雷』とでも呼ぶか?」

「ふん。そのうち虹色にでもなりそうじゃの」


咆哮とともに繰り出される、赤き雷光を纏ったノブナガが連撃。

突き、蹴り、エルボー――疾風怒濤の連続攻撃。

だが、雷撃が幾つ重なろうとも魔王は一歩も退かず、すべて受けきった。


「な、なんということでしょう……! 光の勇者と絶対魔王。両者にここまでの差があったのか!?」


ナーグの声が震え、魔王ゼオンが反撃に転じる。


鋭利な蹴りがノブナガを吹き飛ばし、砕くような拳が顔面を穿ち、連続魔法攻撃が全身を焼く。

崩れ落ちる勇者。だがしかし、絶対魔王は手を緩めない。倒れればすぐに引き起こされ、その身に容赦なき連撃が浴びせられる。


「な、なんという一方的な攻撃なのか……っ!!」


実況席のナーグが、ついに悲鳴のように叫ぶ。

もうやめてくれ、と言い出しそうなナーグとは対照的に、冷静な解説陣が口を挟む。


「レフェリーが試合を止める気配が全くない。何かあるのやもしらんの」

「そうだな。あれだけの攻撃を受けながら、一度も意識が飛んでいない。まだ切り札がありそうだな」

「え、、、いや、確かに、目が死んでいるようには見えませんが。。。」


その時だった。

怒涛の連撃を繰り出していた魔王の拳がピタリと止まった。


「どうした? 本当にこのまま終わるつもりか?」


魔王ゼオンの声が、リングに静かに落ちる。

勇者はそれに応えない。ただフラリと立ち上がり、睨み返す。

ゼオンの口元が、ゆっくりと吊り上がった。

ならば見せてみよ、とでも言いたげに、両腕を大きく開き――

その背後に、これまでと段違いの紅蓮の闘気でドラゴンを形成される。


「魔王が……トドメを刺しに行く気です。禍々しい紅蓮の竜王が、光の勇者を飲み込んでしまうのかあっ!!!?」

「今日一番の威力がありそうじゃな」

「あの技はナイトメア・クリムゾン・ドラゴニック・エクスプロージョン・バスター。。。 まさか、完成していたのか!?」

「くどい長さじゃのぉ」


闘気は肥大し、紅蓮の竜は怒り狂う悪夢と化していく。

ノブナガは右手を軽く上げて不敵に笑い、クイっと手招きで応えた。


「な、なんと、勇者が魔王を煽っていますッ。。、」

「やはり何かありそうじゃな」

「魔王もそう思ってるだろうな」


ゼオンが頭上に腕を交差させると、紅蓮の竜王は檻から解き放たれた。

向かう先はーー光の勇者ノブナガ。


「巨大な紅蓮の竜が咆哮して、、、放たれたァァァ!!!! ノブナガは避けない!  決まったぁぁぁッ、ナイトメア・クリムゾン・ドラゴニック・エクスプロージョン・バスターァァァァァァッッッ!!!!!!!!」

「……いや、決まってはいるが……倒してはおらんな」


──そう、ノブナガは、立っていた。


だが、その姿は……もはや“光の勇者”と呼ばれた姿とは程遠かった。

美しく煌めいていた金髪は、常闇よりも深い漆黒に変わり、澄み切っていたライトグリーンの瞳も、暗き深淵へと沈んでいた。


何よりも変わったのは、身体から噴き出す気配。

神聖すら感じさせていた白き雷光のオーラは消え去り、今や、闇の底から湧き上がるような、濃密な暗黒闘気が黒い雷光を生み出していた。


「な、なんということでしょう……! あれほど清廉で威光に満ちていた姿が……。まるで、もう一人の魔王が現れたかのようです……!」

「光が強ければ強いほど……闇もまた深まる、というやつかの……」


初めて見る勇者ノブナガの壮絶な変化に、マキシマム・ザ・ドラゴンは目を見開いていた。

そして、何故か――己の内側から自然に溢れたその言葉を、無意識に口にした。


「………………第六天魔王、ノブナガ……」


続きを読んでやってもいいぞ、という方は、

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