第8章 触手の紳士的な愛撫攻撃!
目の前で繰り広げられる、あまりにもエッチすぎる光景。
俺はパニックに陥りながらも、一つの事実に気づいていた。
――こいつら、攻撃してくる気がない……?
そう、蠢く無数の触手たちは、俺たちを殺傷しようという気配がまるでない。
むしろ、その動きは……。
「あらあら……こんなに丁寧に……でも、恥ずかしいですわ♡」
宙吊りにされたリリアの、困ったような、でもどこか楽しそうな声が響く。
彼女の体に絡みついた触手は、その純白の神官戦士装備を傷つけないよう、まるで熟練の職人のように、器用にストラップや留め金を「ぷちん、ぷちん」と外していく。
迷宮の効果も相まって、彼女の装備は面白いように解かれていった。
柔らかな胸の谷間を支えていた胸当てが外され、ぷるん、と豊かな双丘があらわになる。
さらに、触手のぬるりとした先端が、彼女のガードルに守られた太ももや、白魚のような二の腕を優しく、慈しむように撫でていく。
「ひゃんっ……! く、くすぐったいですわ……あ、あん♡」
頬をバラ色に染め、甘い声を漏らすリリア。
その姿は、罰を受けているというより、まるで極上のもてなしを受けているかのようだ。
「こ、こんなの……こんなのって……!」
一方、ソラは必死に身をよじって抵抗しようとしていた。
だが、彼女の服を緩めていく触手は、まるで未来予知でもしているかのようにその動きを完璧に読み切り、巧みに体をいなしながら剣術着の隙間を広げていく。
「や、やめてって言ってるでしょ! この……っ!」
彼女の抵抗も虚しく、ついに胸当てを留めていた革紐がするりと解かれた。
「きゃーっ! 見ないで、ケイン!」
守りを失ったバストが、勢いよく解放される。
紅蓮色の勝負下着に包まれたその膨らみは、彼女の羞恥心を示すかのように上下に揺れていた。
俺に向かって叫ぶその顔は、トマトのように真っ赤だ。
そして、最も冷静に見えたエルノアもまた、未知との遭遇を果たしていた。
「これは……触手の生態研究として、極めて貴重なデータです……」
彼女は知的な口調を崩さない。
だが、その声は微かに震えていた。
ローブはすでに完全に開かれ、エルフ族特有の透き通るような肌が露わになっている。
数本の触手が、まるで美術品を鑑定するかのように、彼女の華奢な体をゆっくりと、ぬるりと舐めるように這い回っていた。
そして、一本の触手の先端が、ローブの下に隠された薄緑色の布地の、その中心の最も敏感な部分を、そっと、本当に優しく触れた。
「あ……っ! こ、れは……がく、学術的範囲を……んんっ♡」
びくん、と彼女の体が大きく跳ねる。
決して表情を崩さない彼女の唯一の弱点、尖った耳の先が真っ赤に染まり、ふるふると震えていた。
「うおおお! 見ちゃダメだ! 俺は見ちゃダメなんだ!」
俺は両手で固く目を覆い、三人の聖域を守るべく叫んだ。
「みんな!今助ける!」
――ドンッ!
「ぐえっ!」
目を閉じているせいで、目の前にあった木に思いっきり激突した。
「い、今行くからな!」
――がくんっ!
「うわっ!」
今度は木の根につまずいて、盛大にすっ転ぶ。
そのたびに、固く閉じた指の隙間から、逆さ吊りにされてあられもない姿のリリアや、恥ずかしそうに胸を隠すソラ、快感に耐えるエルノアの姿がチラチラと見えてしまう!
「うわあああああ!」
俺の情けない悲鳴だけが、森に響き渡る。
触手たちは、俺たちの誰一人傷つけることなく、しかし確実に、彼女たちの羞恥心という名の蜜を吸い上げ、この迷宮の力に変えているようだった。
◇
もはや状況はカオスを極めていた。
リリアとエルノアは、紳士的だが容赦のない触手の愛撫に、甘く恥ずかしい声を漏らし続けている。
俺はと言えば、助けようにも目を閉じていては壁にぶつかるばかり。
なんということだ!
勇者としてあまりに情けない!
その、絶望的な状況を打ち破るかのように、凛とした声が響き渡った。
「――もう我慢ならない! まとめて切り裂いてやる!」
声の主はソラだ。
彼女は服を緩めようとする触手に抵抗しながら、腰の愛剣に手を伸ばす。
その紅蓮の瞳には、羞恥を塗りつぶすほどの怒りの炎が宿っていた。
「こ、こんな辱め……剣士の誇りにかけて、許さないんだから!」
触手に体を絡め取られながらも、彼女は渾身の力で剣を鞘から引き抜く。
そして、切っ先を震わせながら、高らかに叫んだ。
「我が剣技の真髄、見せてやる! ――瞬速抜刀術!」
閃光。
そうとしか表現できない一撃だった。
ソラの剣が一瞬きらめいたかと思うと、周囲の触手が何本もまとめてズタズタに切り裂かれて宙を舞う。
やったか!?
――ビリビリビリッ!
しかし、俺の期待は、肉が裂ける音とは明らかに違う、乾いた布が破ける音にかき消された。
「え? あ? きゃああああああ!?」
ソラの素っ頓狂な声。
彼女の剣閃は、確かに触手を捉えていた。
だが同時に、この「絶頂の迷宮」の特殊効果――「衣服が極端に脆くなる効果」 を増幅させ、彼女自身の剣術着の残りの部分まで、綺麗さっぱりと真っ二つに切り裂いてしまっていたのだ!
はだけた胸当てはすでにない。
そして今、腹部を守っていた布地までもが左右に分かれ、はらりと落ちる。
彼女の上半身を覆うものは、もはや紅蓮色の、華奢なレースでできた下着だけになっていた。
「ソラ! 大丈夫か!?」
俺は思わず叫ぶが、すぐに「いや、見ちゃダメだ!」 と固く目を閉じる。
そして、またしてもふらふらと、無防備な彼女の方へと歩み寄ってしまう。
「ち、近づくな! 変態! エッチ勇者!」
ソラは必死に両腕で体を隠しながら叫ぶが、その声は涙声だ。
切り裂かれたはずの触手たちが、切断面から「にゅるり」と新しい肉を盛り上がらせ、瞬く間に再生していく。
そして、今度はより積極的に、大胆に行動を開始した。
「なっ……!?」
再生した触手たちは、もはや服という障害物のないソラの素肌へと、そのぬるりとした先端を伸ばす。
白く滑らかなお腹を、脇腹を、そして腕を、優しく、しかし執拗に撫で始めた。
「ひゃんっ♡」
思わず、ソラの口から可愛らしい悲鳴が漏れる。
この迷宮の魔法は、ただ服を脆くするだけじゃない。
囚われた者の感度を、通常時の三倍にまで高める効果もある。
「や、やめ……そこは……だめぇ♡」
抵抗しようにも、肌を直接撫でられる快感に、ソラの体から力が抜けていく。
この惨状は、もちろん他の二人にも波及していた。
「ああっ♡ そんなに強くしたら……神様の試練が……♡」
「んんっ……! この刺激パターンは……未記録……! で、でも……んくぅ♡」
リリアとエルノアもまた、触手たちのより積極的になった「お世話」を受け、三人そろって恥ずかしさで顔を真っ赤に染めながら、抗いがたい快感に身をよじらせるしかなかった。
「みんな! ど、どうすれば……!」
物理的な攻撃が通用しない。
それどころか、反撃が状況をさらに悪化させてしまった。
俺は有効な解決策が何一つ見つからないまま、ただオロオロと慌てふためくことしかできなかった。