第6章 発動、魔王軍の罠!
翌日の昼下がり、俺たちは魔王領との境界に近づいていた。
空は曇り空で、重苦しい雲が頭上を覆っている。
これまでの明るい街道とは一変して、周囲の植物も黒ずんでおり、空気にも嫌な重さが漂っていた。
足元の大地からは、かすかに紫の瘴気が立ち上っている。
「いよいよ魔王領ね。気を引き締めて行きましょう」
ソラが愛剣『炎刃』の柄に手をかけながら言った。
黒い革のベストに短いスカートという剣士装備姿で、紅蓮の瞳が鋭く前方を見据えている。
緊張で汗ばんだ肌が、曇り空の下でも美しく輝いている。
「魔王軍の罠に注意が必要ですね」
エルノアが手帳を仕舞いながら警戒する。
緑のローブの下、スレンダーな体が緊張で少し強張っている。
尖った耳がぴくぴくと動き、周囲の異変を感じ取ろうとしているようだ。
「神様がお守りくださいますわ♡ 私たちの正義の心があれば、きっと大丈夫です♡」
リリアだけは相変わらず楽観的で、両手を合わせて祈りを捧げる。
白い神官戦士装備のブラウスが風に揺れ、豊かな胸の膨らみが美しく強調されていた。
「そうだな。どんな罠が待ってても、俺たちなら乗り越えられる」
俺も気を引き締めた。
赤いマントが風に翻り、腰の聖剣エクスカリバーの重みを確かめる。
渓谷の奥へ進んでいくと、突然足元の地面が光り始めた。
「え?」
見ると、複雑な文様を描いた巨大な魔法陣が地面に浮かび上がっている。
紫の光がゆらゆらと脈動し、不気味な唸り声のような音が響いている。
「これは...罠!?」
ソラが剣を抜く。
刀身が鈍い光を放ち、戦闘態勢に入る。
その瞬間、空中に魔王軍兵士の声が響いた。
「クックック...勇者パーティーよ、よくぞここまで来た! 我らが特製の迷宮を楽しんでもらおう!」
「罠だ!みんな気をつけ...」
俺が叫んだ瞬間、足元の魔法陣が一層強く光った。
シュウウウ...。
魔法陣から濃い霧が立ち上り始める。
最初は薄い霧だったが、みるみるうちに濃くなっていく。
「何この霧!?」
ソラが剣を構えながら警戒する。
霧で視界が遮られ、お互いの姿も見えなくなってきた。
「みんな、離れるな!」
俺が叫ぶが、霧の中で声がこだまして方向がわからない。
「ケインさん! どこにいらっしゃいますの!」
リリアの声が聞こえるが、だんだん遠くなっていく。
「この霧...ただの霧じゃないわね...」
ソラの声も霞んで聞こえる。
「魔法的な効果があります...意識に作用する...睡眠効果...」
エルノアの分析の声も次第に弱くなっていく。
俺も段々と頭がぼうっとしてきた。
霧の中に含まれた魔法の成分が、俺たちの意識を奪おうとしている。
「くそ...この霧は...」
「ケイン...」
ソラの声がさらに遠くなる。
「ケインさん...」
リリアの声も霞んでいく。
エルノアの声も聞こえなくなった。
俺は必死に意識を保とうとするが、全身に重い眠気が襲ってくる。
「みんな...俺が...守る...」
俺がそう言いかけた時、膝から崩れ落ちた。
意識が薄れる中、魔王軍兵士の笑い声が聞こえてくる。
俺は最後の力を振り絞って立ち上がろうとするが、体が動かない。
「みんな...無事で...いて...くれ...」
そして俺の意識は、完全に闇の中へと沈んでいった。
◇
意識がゆっくりと戻ってくる。
頭がぼんやりとして、身体が重い。
まるで深い眠りから無理やり引き起こされたような感覚だった。
「う...うう...」
俺は目をゆっくりと開いた。
そこは見たことのない石造りの部屋だった。
天井は高く、古代の遺跡のような石材で組まれている。
壁には見慣れない文字で刻まれた文様があり、部屋全体が淡い青白い光に包まれていた。
空気はひんやりとしていて、どこか神秘的な香りが漂っている。
「ここは...?」
俺は身体を起こし、周囲を見回した。
円形の部屋の中央に、光る石版が浮かんでいる。
そして俺の周りには、三人の美少女たちが倒れていた。
「みんな! 大丈夫か?」
俺は慌てて駆け寄る。
まずソラの安否を確認する。
黒い革のベストに短いスカートという剣士装備は無事だが、少し乱れている。
ショートカットの黒髪が頬にかかり、紅蓮の瞳が閉じられた寝顔は、普段の勝気な表情とは違って無防備で可愛らしい。
「ソラ、起きろ!」
俺が肩を揺さぶると、ソラがゆっくりと目を開けた。
「う...ケイン? ここは...」
次にリリアとエルノアも目を覚ます。
リリアは白い神官戦士装備のブラウスとスカートが少しずれて、豊かな胸の膨らみがより強調されている。
金髪のロングヘアが石床に広がって、まるで天使が眠っているような美しさだった。
エルノアは緑のローブを着たまま倒れていたが、その下のスレンダーな体のラインが美しく、尖った耳がぴくぴくと動いている。
「みんな、怪我はないか?」
「大丈夫みたい...でもここは一体?」
ソラが立ち上がりながら辺りを見回す。
「魔王軍の罠にかかったのは覚えてるけど...」
その時、部屋の中央にある石版が強く光り、文字が浮かび上がった。
『ようこそ、絶頂の迷宮へ』
俺たちが石版を見つめると、続けて文字が現れる。
『ここは七つの階層からなる試練の場である。各階層のトラップを突破し、最上階に到達せよ。脱出の扉は最上階にのみ存在する』
「七つの階層って...結構大変そうね」
ソラがため息をつく。
さらに石版に新たな文字が表示される。
『注意:迷宮内では特殊な魔法が働いている。衣服は通常の10倍破れやすく、感覚は3倍敏感になる。なお、生命に危険はないが、羞恥心は保証の限りではない』
「羞恥心は保証の限りではないって何だよ!?」
俺が叫んだ瞬間、部屋の壁に扉が現れた。
『第一階層「むにゅむにゅ触手の森」への扉が開かれました』という魔法のアナウンスが響く。
「触手って...まさかあの触手?」
ソラの顔が青ざめる。
剣士として数々の魔物と戦ってきた彼女も、触手系のモンスターは苦手らしい。
「これは貴重な研究機会ですね」
エルノアが手帳を取り出して興奮気味に言う。
「触手系魔物の生態観察、人間との相互作用パターン、そして特殊環境下での行動変化...400年の研究人生でも滅多にない機会です!」
「エルノア、そんなことで興奮してる場合じゃないでしょ!」
ソラが突っ込む。
「むにゅむにゅって可愛い響きですわ♡」
リリアだけは相変わらず無邪気で、両手を組んで微笑んでいる。
「きっと神様が用意してくださった、新しいお友達との出会いですのね♡」
「リリア、多分そういうお友達じゃないと思うよ...」
俺が苦笑いする。
石版がさらに光り、詳細な説明が表示される。
『第一階層:むにゅむにゅ触手の森。この階層では、特殊な触手植物が生息している。触手は攻撃的ではないが、非常に好奇心旺盛である。特に「布」に強い興味を示す習性がある』
「布って...まさか服のこと?」
ソラの声が震える。
「でも、衣服が10倍破れやすいって...」
エルノアが自分の緑のローブを確認する。
「確かに、通常より材質が脆弱になっているようです。魔法の影響でしょうね」
「しかも、感覚が3倍敏感って何よ!」
ソラが慌てる。
「つまり、ちょっとした刺激でも...」
「普通の3倍感じちゃうってことですわね♡」
リリアが無邪気に言う。
「それって...」
俺の顔が赤くなる。
女性たちがちょっとした刺激でも敏感に反応するってことは...。
「ケイン、変なことを想像してるでしょ!」
ソラが俺の頬を引っ張る。
「い、痛いって!」
「でも確かに...これは困ったことになりそうですね」
エルノアが冷静に分析する。
「衣服の脆弱性とケインの『ラッキースケベ体質』の組み合わせは、非常に危険な相乗効果を生み出す可能性があります」
「危険って...」
「つまり、いつも以上にエッチなハプニングが起こりやすくなるってことです」
エルノアの分析に、俺たち全員の顔が赤くなる。
「なんてこった...」
俺がため息をつく。
「でも、やるしかないのよね」
ソラが愛剣『炎刃』に手をかける。
「脱出するには、この七つの階層を突破するしかないんだし」
「そうですわ♡ 神様がくださった試練ですもの♡」
リリアが前向きに言う。
「みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫ですわ♡」
「そうだな。俺たちなら乗り越えられる」
俺も決意を固める。
「それじゃあ、第一階層に行こうか」
扉の前に立つと、さらに注意書きが現れた。
『警告:この迷宮では予期せぬ身体的接触が頻発します。恥ずかしい思いをすることがありますが、それも試練の一部です。なお、「これは仕方ない事故だから問題ない!」という思考は推奨されています』
「俺の口癖まで知ってるのかよ!」
俺が叫ぶ。
「まあ、ケインらしいといえばケインらしいけど...」
ソラが苦笑いする。
「それじゃあ、行きましょうか」
エルノアが扉に手をかける。
「第一階層『むにゅむにゅ触手の森』、研究開始です!」
「研究開始って言わないでよ!」
ソラの突っ込みと共に、俺たちは絶頂の迷宮の第一階層へと足を踏み入れた。
扉の向こうには、想像を絶する恥ずかしい試練が待ち受けている。
俺は仲間たちと一緒に第一階層へと向かった。
こうして、俺たちの恥ずかしくて刺激的な迷宮攻略が始まったのだった。