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第5章 リリアの天然炸裂!

 日が完全に沈み、森の中に設営した野営地は焚き火の暖かい光に包まれていた。


 虫の声がさざ波のように響き、木々の間から星が瞬いている。

 焚き火の薪がパチパチと弾ける音が心地よく、冒険の疲れを癒してくれる。


「薪がもう少し必要だな」


 俺は斧を手に取り、近くに落ちている枯れ木に向かった。

 一日中歩き続けて汗をかいたので、上着の革のベストを脱いで薪割りに取りかかる。


 白いシャツの袖をまくり上げ、斧を振り上げる。

 勇者になるための訓練で鍛えた筋肉が、焚き火の光を受けてほのかに浮かび上がる。


「はっ!」


 斧を振り下ろし、薪が真っ二つに割れる。


「あら...」


 その瞬間、リリアの声が聞こえた。

 振り返ると、彼女が俺を見つめている。


 いつもの天使のような笑顔ではなく、なぜかぼうっとした表情で。


「ケインさんの筋肉...とても...神々しいですわ♡」


 リリアの頬がほんのりと桜色に染まり、ブルーの瞳が俺の腕に釘付けになっている。

 白い神官戦士装備のブラウスを着た豊満な胸が、いつもより早い呼吸に合わせて上下している。


「え?」


 俺が困惑していると、ソラが心配そうに声をかける。


「リリア? どうしたの? なんか様子が...」

「神様が与えし美しき肉体...これはまさに芸術作品です...」


 リリアがうっとりとした表情で呟く。

 その視線は俺の二の腕から胸筋、腹筋へと移動していく。


「興味深いですね。筋肉フェチとは」


 エルノアが手帳にペンを走らせながら分析する。


「リリアが筋肉フェチって...まさか」


 ソラが驚いて目を丸くする。


「あの、リリア?」


 俺が恐る恐る声をかけると、リリアがハッと我に返った。


「あ、あの...ケインさん、もう少し腕の筋肉を...じゃなくて!」

 

 慌てて言い直すリリア。


「薪割りを手伝わせていただけますか? お役に立ちたいと思いまして♡」

「あ、ああ...ありがとう」


 俺が斧を渡そうとした瞬間、リリアの目がキラリと光った。

 俺の腕の筋肉が斧を持つ動作で隆起するのを、食い入るように見つめている。


 リリアが斧を受け取り、薪の前に立つ。

 白いブラウスの袖をまくり上げると、意外にも引き締まった二の腕が現れた。


「えいっ♡」


 可愛らしい掛け声と共に斧を振り下ろす。


 ドカーン!


「え?」


 薪が粉々に砕け散った。

 木の破片が四方八方に飛び散り、中には俺の方向に向かってくるものも。


「うわあああ!」


 俺は慌てて身を屈めるが、バランスを崩してリリアの方向に倒れ込んだ。


「あら♡」


 リリアが振り返った瞬間、俺の身体が彼女に向かって突っ込んでいく。


 ドスン!


 俺の顔が、リリアの豊かな胸に埋まった。


「あわわわわ...!」


 柔らかくて温かい感触が俺の頬を包む。

 リリアの胸は想像以上に大きく、俺の顔がすっぽりと挟まれてしまう。

 かすかに石鹸の香りと、女性特有の甘い香りが鼻をくすぐる。


「神のお導きですわ♡」


 リリアが満面の笑みで俺の頭を撫でる。

 その仕草が、まるで母親が子供をあやすようで...いや、そんなことを考えてる場合じゃない!


「あー、もう!」


 ソラが叫ぶ。


「ケイン、いい加減にしなさいよ!」

「こ、これは事故で...!」


 俺が慌てて離れようとするが、リリアの腕が俺の背中を支えている。

 その力が意外に強くて、簡単には離れられない。


「あら、ケインさん? もしかして私の胸が気に入りましたの?♡」


 リリアが無邪気に聞く。


「き、気に入ったって...そんなこと...」


 俺の顔が真っ赤になる。

 確かに柔らかくて気持ち良いけど、そんなこと言えるわけない!


「あ、でも」


 リリアが俺の腕を見つめる。


「ケインさんの筋肉も素晴らしいですわ♡」

「筋肉って...」

「特にこの上腕二頭筋の盛り上がりと、前腕の筋肉の流れるようなライン...まさに芸術品ですわ♡」


 リリアが俺の腕を撫でる。

 その手つきが、まるで美術品を鑑賞するように丁寧で。


「リリア、あんた...」


 ソラが呆れた表情を浮かべる。


「まさか本当に筋肉フェチだったなんて...」

「筋肉フェチという表現は適切ですね」


 エルノアが手帳に記録する。


「神官という職業柄、『肉体美への崇拝』という形で表現されているのでしょう。興味深い性的嗜好の発現パターンです」

「性的嗜好って言わないでください!」


 リリアが慌てる。

 でも、俺の腕から手を離さない。


「これは純粋に神への崇拝の気持ちですわ♡ ケインさんの美しい筋肉は、まさに神が創りし芸術作品...」

「あの、リリア? そろそろ手を...」

「あ、申し訳ございません♡」


 リリアがようやく手を離す。

 でも、その瞳は相変わらず俺の筋肉に注がれている。


「あの、ケインさん、もしよろしければ、今度一緒に鍛錬をしませんか?♡」

「鍛錬?」

「はい♡ 神官戦士として、美しい肉体を維持することは神への奉仕ですから♡」


 リリアの目がキラキラと輝いている。


「つまり、ケインの筋肉をもっと見たいってことね...」


 ソラがため息をつく。


「そ、そういうわけでは...でも、美しいものは美しいですもの♡」


 リリアが頬を染める。


「人間の筋肉に対する美的感覚と性的興奮の関係性...これは非常に興味深い研究テーマですね」


 エルノアが興奮して手帳に書き込む。


「特に宗教的背景を持つ個体における肉体崇拝の発現メカニズムは...」

「エルノア、今度は俺じゃなくてリリアを研究対象にするなよ」


 俺が苦笑いする。


「リリアさんの筋肉愛は、神への信仰と結びついているんですね」

「そうですわ♡ 美しいものは全て神様の創造物ですもの♡」


 リリアが両手を合わせる。


「特にケインさんのような勇者の肉体は、神が特別に祝福を与えた証拠ですわ♡」

「そ、そうなのか...」


 俺が困惑していると、ソラが腕を組む。


「まあ、リリアがそういう趣味でも、別にいいけどさ...でも程々にしなさいよ。あんまりじろじろ見られると、ケインが困るでしょ」

「はい♡ でも、美しいものを見るのは神への感謝の気持ちですから♡」


 リリアが微笑む。

 その笑顔は相変わらず天使のようだが、どこか危険な光が宿っている気がする。


 焚き火の炎がゆらゆらと揺れ、俺たちの影を森の奥へと伸ばしていく。


 なんということだ。

 エルノアに続いて、今度はリリアまで隠された性癖が発覚するなんて。

 しかも筋肉フェチって...俺の体質以上に予想外だった。


「それじゃあ、今夜は交代で見張りをしましょう」


 ソラが提案する。


「私が最初、次にエルノア、その次がケイン、最後にリリアで」

「了解」


 俺たちは焚き火を囲んで夜の準備を始めた。

 しかし、リリアの視線が時々俺の方に向けられるのを感じて、なんだか落ち着かない。


 この旅、一体どうなるんだろう...。


 森の奥で、フクロウの鳴き声が響いている。

 まるで俺たちの複雑な関係を笑っているかのようだった。

 

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