第4章 ソラの過去暴露
昼食休憩を終えた俺たちは、魔王城へ向かう山道を歩いていた。
足元の石ころがカラカラと音を立て、遠くで鳥の鳴き声が響いている。
エルノアの「学術研究」の正体が発覚してから、パーティーの空気は微妙に変わっていた。
エルノアは時々俺をチラチラと見ては、慌てたように視線を逸らす。
その度に尖った耳先が赤く染まるのが可愛らしい。
「そういえば、ケインの『ラッキースケベ体質』はいつ頃から発症したのですか?」
歩きながらエルノアが手帳を片手に質問する。
緑のローブが風に揺れ、スレンダーな体のラインが美しく浮かび上がる。
「物心ついた時からよ!」
ソラが即答した。
黒い革のベストに短いスカート、ニーハイブーツという剣士装備で歩く姿が凛々しい。
「5歳の時かしら。村の川で水遊びをしてた時に、こいつが足を滑らせて私の水着のヒモを引っ張って...」
「ちょっと待てソラ! それは...!」
俺が慌てて止めようとするが、ソラは構わず続ける。
「結果的に水着が取れちゃって、村の男の子たちの前で裸になっちゃったのよ! もう恥ずかしくて恥ずかしくて...」
「あ、あれは本当に事故だったんだ!」
俺の顔が真っ赤になる。
「事故って言うけどね、その後も続いたのよ!」
「うわああああ!」
俺が頭を抱える。
「黙りなさい! いつもいつも私だけが...」
ソラの顔が赤くなってきた。
でも、その表情のどこか懐かしそうで、完全に怒っているわけではないようだ。
「まあ、素敵な想い出ですわ♡ 幼なじみならではの微笑ましいエピソードですのね♡」
リリアが天使のような笑顔で手を組む。
白い神官戦士装備のブラウスが夕日に映えて美しく、豊かな胸の膨らみが強調されている。
「微笑ましくないわよ!」
ソラが叫ぶ。
「15歳の時が一番ひどかったのよ! 村の成人式で、みんなの前でドレスを着てたら...」
「それは言うな! 絶対に言うな!」
俺が必死に制止する。
「ケインがつまずいて私に抱きついて、ドレスの胸元のリボンが解けちゃって...」
「ソラああああ!」
「結果的に胸が...」
「聞こえない聞こえない!」
俺が耳を塞ぐ。
「幼少期からの継続的発症...これは明らかに先天性の特殊体質ですね」
エルノアが興奮してペンを走らせる。
「遺伝的要因なのか、それとも何らかの呪いなのか...非常に興味深いデータです」
「呪いって言うな!」
「でも、ケイン」
ソラが少し優しい口調になる。
「あんた、昔から私が困ってる時は必ず助けてくれたわよね」
「え?」
「ほら、8歳の時に川で溺れそうになった時も、すぐに飛び込んできてくれたし...まあ、その時も私の服が濡れて透けちゃったけど」
「あ、あの時は...」
俺の心臓がドキドキする。
確かにソラを助けたけど、結果的に薄い夏服が肌に張り付いて...。
「12歳の時に森で迷子になった時も、一晩中探してくれて...その時も焚き火で服を乾かしてる時にハプニングがあったけど」
「そ、そんなこともあったな...」
「だから、あんたの体質はときどき迷惑だけど...」
ソラが俺を見る。
その瞳に、複雑な感情が宿っている。
「嫌いじゃないのよ。昔から、あんたはそういう奴だったから」
「ソラ...」
俺の胸が熱くなる。
「俺だって好きでやってるわけじゃ...」
その瞬間だった。
俺の足が山道の石に引っかかった。
「うわあああ!」
バランスを崩した俺が、ソラに向かって倒れる。
「きゃあ!」
ソラの悲鳴が山間に響く。
俺は彼女に抱きつくような形で倒れ込んだ。
「ほら、また!」
ソラが叫ぶ中、二人で絡まりながら山道を転がり落ちる。
ゴロゴロゴロ...。
「痛たたた...」
俺が頭を擦りながら立ち上がろうとする。
下には倒れたソラがいて、黒い革のベストがずれ、スカートもめくれ上がっている。
「だ、大丈夫か、ソラ?」
俺が手を差し伸べた瞬間、ソラの剣術着の帯に手が引っかかった。
プチン!
「え?」
帯が緩んで、ソラの剣術着の前がパカッと開く。
下に着た薄いキャミソールが露わになり、健康的な胸の膨らみがあらわになった。
汗で濡れたキャミソールが肌に張り付いて、ピンクの下着のラインまで透けて見える。
「きゃああああ!」
ソラが真っ赤になって身体を隠す。
「ご、ごめん! これは本当に事故で...!」
俺も顔を真っ赤にして慌てる。
「現在進行形で観察できるとは...」
エルノアが手帳にメモを取りながら興奮している。
「ケインの体質による衣服への影響範囲、接触面積と破損箇所の相関関係...これは貴重なデータですね!」
「エルノア! 今メモ取ってる場合じゃないでしょ!」
ソラが叫ぶ。
「仲良しさんですわね♡ まるで夫婦みたいですわ♡」
リリアが無邪気に微笑む。
「夫婦って...」
俺とソラが同時に赤くなる。
「あ、あんたね! 気をつけなさいよ!」
ソラが帯を結び直しながら言う。
でも、その頬は赤く染まったままで、完全に怒っているわけではないようだ。
「ご、ごめん...本当にごめん...」
俺はうなだれた。
「まあ、いいわよ...昔からだし」
ソラがため息をつく。
「でも、もっと気をつけなさいよね。特に、危険な場所では...」
「わ、わかった...」
エルノアが手帳を見ながら呟く。
「興味深いことに、ケインの体質は特に感情的な動揺があった時に発動確率が上がるようですね」
「感情的な動揺?」
「今のケースでは、ソラとの過去の思い出話で心理状態が動揺し、その結果として体質が発動したと考えられます」
「つまり、俺が動揺すると...」
「より強力に発動する可能性があります。特に、女性に対する感情が関わった場合は...」
エルノアの分析に、俺の顔がさらに赤くなる。
確かに、ソラとの昔話を聞いてドキドキしていた時に体質が発動した。
「なんてこった...」
俺のため息が山間に響く。
夕日が山の向こうに沈み始め、空が茜色に染まっていく。
美しい風景の中、俺たちは魔王城へ向けて歩き続けた。