第3章 エルノアの秘密発覚?
魔王城へ向かう街道を半日歩いた俺たちは、森の中の小さな泉のそばで昼食休憩を取っていた。
木漏れ日が緑の葉の間から差し込み、泉の水面がキラキラと光っている。
鳥のさえずりと水のせせらぎが心地よく、冒険の疲れを癒してくれる絶好の休憩地点だった。
「ふう、歩き続けると疲れるわね」
ソラが愛剣『炎刃』を木に立てかけて、革のベストを少し緩める。
汗で濡れた肌が陽光に照らされて艶やかに光り、健康的な胸元から薄っすらと汗の香りが漂ってくる。
「神様が素敵な休憩場所を用意してくださいましたのね♡」
リリアが両手を合わせて祈りを捧げる。
白い神官戦士装備のブラウスも汗で少し透けており、その下に着た薄いキャミソールのラインが見えている。
豊かな胸が汗で濡れて、より一層強調されている姿に俺の視線が釘付けになる。
「人間の体力消耗パターンと休息欲求の関係性...興味深いデータですね」
エルノアは相変わらず手帳にメモを取りながら、俺たちの様子を観察している。
緑のローブを着ているが、エルフらしいスレンダーな体型が美しく、尖った耳がぴくぴくと動く仕草が可愛らしい。
「それじゃあ、俺は顔を洗ってくるよ」
俺は汗を拭いながら立ち上がった。
さっきから美少女三人の汗まみれの姿を見続けて、心臓がドキドキしっぱなしだ。
少し頭を冷やさないと。
「気をつけなさいよ、ケイン。あんたのことだから、きっと何か起こすでしょうし」
ソラが呆れたような顔で言う。
「だ、大丈夫だって! ただ顔を洗うだけなんだから!」
俺は慌てて小川に向かった。
冷たい水で顔を洗うと、気持ちが少し落ち着く。
それにしても、三人とも本当に美人だよなあ。
特にソラの汗で濡れた肌なんて...。
「きゃー!」
突然、ソラの悲鳴が聞こえた。
「どうした!?」
俺は慌てて振り返る。
すると、エルノアの荷物から大量の本が散乱していた。
「え、えーっと、これは...」
エルノアが真っ青な顔で本を拾い集めようとしているが、ソラの方が早かった。
ソラが本を拾い上げて表紙を読む。
「『人間男性の生殖行動について』『異種族間の交配パターン研究』『エルフと人間の身体的相違点と性的適合性』って...エルノア、これ何?」
ソラの顔が困惑に歪む。
本のタイトルを見て、俺の顔が一気に赤くなる。
「こ、これは純粋な学術研究です! エルフの知識向上のための、その...」
エルノアの顔が真っ赤になり、特にエルフの耳先がポッと赤く染まっている。
慌てふためく様子がとても可愛らしいが、状況が状況だ。
「学術研究って言うけど...」
ソラがパラパラと本をめくる。
「これ、どう見ても...」
その時、リリアが無邪気に別の本を拾い上げた。
「あら♡ こちらの本も面白そうですね♡ 『勇者と美少女の7つの体位』...これは体操の本ですか? 新しいストレッチ方法でしょうか♡」
「そ、それは読まないで!」
エルノアが慌てて手を伸ばすが、リリアは既に本を開いていた。
「あら、この挿絵は...男性と女性が密着して...これは確かに体操ですわね♡ とても柔軟性が必要そうな...」
「リリア、それは体操じゃないのよ!」
ソラが真っ赤になって叫ぶ。
俺は完全に頭が真っ白になって、その場で固まっていた。
「あうあう...」
声にならない声しか出ない。
「エルノア...まさかあんた...」
ソラがエルノアに詰め寄る。
紅蓮の瞳が鋭く光っている。
「わ、わかりました! 観念します!」
エルノアがついに白旗を上げた。
アメジスト色の瞳に涙まで浮かべている。
「私は400年間処女で、人間の恋愛というものに学術的興味を抱いてしまって...その、研究のために、このような文献を...」
「400年処女って、それはもはや伝説の域じゃない!?」
ソラが驚愕して叫ぶ。
「エルフは長寿だから400歳なんて若いって聞いてたけど、その年齢で処女って...」
「処女というのは神聖なものです♡ エルノアさんは純潔を守る立派な女性ですのね♡」
リリアが的外れなフォローをする。
相変わらず状況を理解していない。
「で、でも! 私だって女性です! 人間の男性との...その...恋愛に興味があって当然じゃないですか!」
エルノアが開き直るように言う。
耳先の赤みがさらに濃くなっている。
「特に、ケインのような純粋な男性がどのような反応を示すのか、学術的に非常に興味深くて...」
「ちょっと待て! 俺を研究対象にするな!」
ようやく口が利けるようになった俺が抗議する。
「でも、でも! ケインの『ラッキースケベ体質』は、本当に興味深い現象で...その時の女性側の反応や、ケイン自身の生理的変化を詳細に記録することで...」
「詳細に記録って、どこまで観察してるのよ!」
ソラが剣の柄に手をかける。
「そ、その...顔の赤さの変化、発汗量、呼吸の乱れ、心拍数の推定値、そして...その...下半身の...」
「下半身って何よ!」
「え、えーっと...男性の生理的反応の観察は、学術研究において重要な...」
俺の顔が限界まで赤くなる。
「俺のそんなところまで見てたのか!?」
「み、見てませんよ! ただ...推測で...」
エルノアがモジモジしながら答える。
その仕草がとても可愛らしいが、内容が内容だ。
「つまり、エルノアは400年間処女のむっつりスケベエルフってことね...」
ソラがため息をつく。
「でも、ある意味すごいわよ。400年も純潔を守り続けるなんて」
「そ、そんな風に言わないでください! 私だって女性としての欲求はあるんです! ただ、エルフの里には男性がほとんどいなくて、人間の男性との交流もなくて...だから研究で学ぶしか...」
エルノアの声がだんだん小さくなっていく。
「でも、エルノアさんの探究心は素晴らしいです♡ 神様もきっとお喜びになりますわ♡」
リリアが無邪気に褒める。
「リリア、そういう探究心じゃないのよ...」
ソラが頭を抱える。
「あの...もしかして、俺たちと一緒に旅をしてるのも...」
俺が恐る恐る聞く。
「そ、そうです...実際の人間男性の行動パターンを間近で観察できる絶好の機会だと思って...」
「やっぱりかー!」
俺が叫ぶ。
「でも、でも! 今は本当にみんなのことを仲間だと思ってます! 最初は研究目的でしたけど、今は...」
エルノアの瞳が潤んでいる。
「今は、みんなと一緒にいるのが楽しくて...特にケインの優しさに触れて、研究を超えた感情が...」
「感情って?」
ソラが詰め寄る。
「そ、それは...」
エルノアの耳先がさらに赤くなる。
「まさか、ケインに...」
「ち、違います! 純粋な学術的興味です!」
でも、エルノアの目は明らかに俺を見つめている。
その視線に、研究を超えた何かを感じ取ってしまう。
「エルノアさん♡ 恋心は素晴らしいものです♡」
リリアが的確な発言をする。
珍しく状況を理解している。
「こ、恋心なんて...」
エルノアがモジモジする。
ソラがため息をつく。
「まあ、いいわ。正直に言ってくれたんだし、今更追い出すわけにもいかないでしょ」
「ソラ...」
「でも条件があるわよ。変な研究は控えめにすること。特に、ケインを実験台みたいに扱うのは禁止」
「は、はい...」
エルノアが素直に頷く。
「それと、もし本当にケインのことが好きになったなら、正直に言いなさい。みんな仲間なんだから」
「え?」
俺が驚く。
「ちょ、ちょっと待てよ、ソラ!」
「何よ、ケイン。エルノアだって一人の女性なんだから、恋をする権利はあるでしょ」
ソラが腕を組んで俺を見る。
その瞳に、複雑な感情が揺れているのを感じ取った。
「そうです♡ エルノアさんの恋を応援しましょう♡」
リリアが手を叩く。
「わ、私は...その...」
エルノアが俺をチラリと見る。
その視線に、400年間封印されていた女性としての想いが垣間見えた。
なんということだ。
この状況、どう対処すればいいんだ?
散乱した本を片付けながら、俺たちの関係性が微妙に変化していくのを感じていた。
エルノアの秘密が明かされたことで、パーティーの空気は確実に変わった。
そして、これから始まる冒険が、さらに複雑で刺激的なものになることは間違いなかった。