第2章 出発!そして洗礼!
翌朝、王都ファリスタの東門前は、魔王討伐に向かう勇者パーティーを見送ろうと集まった市民たちで賑わっていた。
朝日が石造りの城壁を金色に染め、魔導石で舗装された街道が遠く地平線まで続いている。
空気は爽やかで、冒険への期待に胸が躍る完璧な出発日和だった。
市民たちの声援を受けて、俺は胸を張った。
今日は正式な勇者装備だ。
赤いマントに革の胸当て、腰には聖剣エクスカリバー(量産品)を帯びている。
「みんな! 俺たちが必ず魔王を倒してみせる!」
俺は拳を高く掲げて宣言した。
市民たちから大きな拍手と歓声が上がる。
ソラは今日も動きやすさを重視した剣士装備で、黒い革のベストに短いスカート、太ももまでのニーハイブーツという凜々しいスタイル。
背中には愛剣の『炎刃』を背負い、紅蓮の瞳が闘志に燃えている。
「まあ、あんたが本気になったときは頼りになるからね」
彼女が微笑みながら言うと、俺の心臓が跳ねた。
幼なじみとはいえ、こんな風に素直に褒められると嬉しい。
「神様の御加護がありますように♡」
リリアが両手を合わせて祈りを捧げる。
今日は冒険用の白い神官戦士装備で、胸元に聖印の刺繍が施されたブラウスに、膝上のプリーツスカート。
金髪が朝日に輝いて天使のように美しく、豊かな胸の膨らみがブラウスを押し上げている。
「人間の集団心理における英雄崇拝現象...実に興味深いデータですね」
エルノアは相変わらず手帳にメモを取りながら、冷静に状況を観察している。
今日は旅用の緑のローブを着ているが、その下に見えるスレンダーなラインが美しい。
その時だった。
突然、強い風が吹き抜けた。
「きゃあ!」
「あっ!」
リリアとソラのスカートが同時に、まるで意志を持ったかのように舞い上がる。
リリアの純白のレースパンツと、ソラの黒いスポーツタイプのショーツが、青空の下で堂々と露わになった。
リリアの太ももの白い肌と、ソラの剣士らしく引き締まった脚線美が眩しい。
「うわああああああ!」
俺は反射的に両手で目を覆った。
しかし、指の隙間からその光景がありありと見えてしまう。
リリアの豊かな太ももの柔らかそうな質感、ソラのショーツの食い込みが作る美しいヒップライン。
「見るな、このエッチ勇者!」
ソラが真っ赤になって叫ぶ。
「あらあら♡ 風さんったら意地悪ですのね♡」
リリアは慌てることもなく、のんびりとスカートを押さえている。
その仕草すらも艶かしい。
「だめだ、見ちゃだめだ! これは事故だから問題ない!」
俺は必死に後ずさりしようとして、足元に注意を向けた。
しかし、運命は俺を見逃してくれない。
ガシャーン!
俺の足が、通りかかった市民の荷車に思いっきり引っかかった。
「うわあああ!」
荷車が勢いよく傾き、中に積まれていた洗濯物が宙に舞う。
そして、その中から女性用の下着が次々と現れた。
「え?」
ピンクのレースのブラジャー、水色のショーツ、薄紫のキャミソール。
女性用の下着が次々と空中を舞い踊り、まるで俺を狙ったかのように降ってくる。
ピンクのブラジャーが俺の頭にストンと落ち、水色のショーツが肩にかかる。
薄い生地の感触が肌に伝わり、かすかに石鹸の香りがする。
「ちょっと、あんた何やってるのよ!」
洗濯物の持ち主らしい若い女性が顔を真っ赤にして駆け寄ってくる。
「す、すみません! これは事故で!」
俺は慌てて下着を外そうとするが、なぜか引っかかって取れない。
「もう! 変態勇者!」
女性に叩かれながら、俺はようやく下着を外した。
「あんたは昔から変わらないわね...」
ソラが深いため息をついて肩を竦める。
「偶然の確率が異常すぎるのよ! 統計学的にありえないわよ!」
エルノアが手帳を見ながら頷く。
「確かに、これまでの観察データを総合すると、ケインの『ラッキースケベ』の発動確率は99.7%。通常の偶然の範疇を大きく超えています」
「ちょっと待てよ! 俺はそんなことを望んでないんだ!」
エルノアの目がキラリと光る。
「でも結果的には...非常に興味深い現象です。戦闘時にこの能力がどう作用するのか、ぜひ観察してみたいものですね」
「戦闘時って...まさか敵にも効くのか?」
「可能性は十分にあります。むしろ、この能力の真価は戦闘時にこそ発揮されるかもしれません」
リリアが無邪気に手を叩く。
「きっと神様が授けてくださった特技ですわ♡」
「特技って言わないでくれ!」
市民たちがクスクスと笑いながら見守る中、俺たちはようやく出発の準備を整えた。
「それじゃあ、いよいよ出発しようか」
ソラが剣の柄に手をかけて前を向く。
その凜々しい横顔に、俺の胸がドキドキする。
「はい♡ 素晴らしい冒険になりそうですわ♡」
リリアが両手を組んで微笑む。
「人間の冒険行動における偶発事象の発生パターン...これは貴重な研究機会です」
エルノアが何やら意味深なことを呟きながら、また手帳にメモを取っている。
こうして、俺たちの魔王討伐の旅が始まった。
街道を歩きながら、俺の背中には市民たちの声援が聞こえていた。
「頑張れー!」
「魔王をやっつけろー!」
しかし、その声援の中に混じって、こんな声も聞こえてきた。
「あの勇者様、また女の子のスカートめくったりするのかしら?」
「きっとするわよ、あの体質じゃあ」
俺の未来が、なんとなく予想できてしまう会話だった。
「なんということだ...」
俺のため息が、青空に響いていく。
街道の向こうには、魔王城のある暗い森が見えていた。