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自分達の始まり  作者: i/o
第二編 波乱
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第六話 併合作戦~「俺」



 そんなこんなで彼はウチに来てくれたのさ……


 その話を聞いて俺は驚きを隠せなかった。CM事業部の部長は辛そうな感じはしたがまさかそこまで辛い経験をしているとは思わなかった。それにしてもあの会社は、最早クズとすら言えぬ存在だな。


「取締役、会議であの会社を買収するのですよね?」


「もちろんだ、彼奴等は僕の逆鱗に触れた。情など必要ない」


 声には相当な怒りしかなかった。


 専門家からもトラストに当たらないかは聞いたがこのパターンでは寡占にはならずセーフだそうだ。ならば、もう容赦は一切いらない。叩き潰すのみだ。




 そして両社の併合についての会議が始まった。会議は順調には進まなかった。それだったらまだ想定の範囲内なのだが、交渉はこっちのほうが不利だったのは意外で平然とした顔をしてはいたが内心、慌てていた……


 株を一気に買ったのは苦肉の策だったと見られていて、やはり相手の方が良い状況だ。それに相手の方が経済力は上だ。

 

 中々な厳しい状態になってきた。このままではこっちが不利な条件で統合される。逆転の策は無いかと必死に模索する。


 すると空気を読まず会議中に一通の電話が入ってきた。一旦会議室をでてかけた奴に説教でもしようと思ったらその連絡に言葉を失った。


「もしもし、CM事業部の太田だ」


太田とは我がCM事業部の部長のことだ。


「警察が今からそっちに向かっているそうだ!告発したかいがあった!遂に賄賂がバレたんだ‼」


「え……」


予想外すぎる。というか……


「部長、もう告発していたの!?」


「ああ、だが今はそれより3分でそっちに警察が着くぞ!対応を頼む!あとデータを送るから使えたら使え」


「……わかったよ」




「……と言う電話が来たのですが貴方に思い当たることはありますか?」


「そんな物、デタラメに決まっている!」


「証拠があっても?」


「お前、何を……」


太田さんが送ってきたのはある音声データと防犯カメラの映像だった。太田さんは警備の仕事もしていたからその映像が証拠に使えると思い取っていたと後から聞いた。


 その映像には社長が労基にお金を渡していると思われる部分が写っていた。そして音声データには賄賂を渡して自分達の悪事を見逃してもらう契約を結んでいる声がとてもよく聞こえていた。


「社長、あんたは金を使って楽にしているんだろう。それは何故か。あんたの部下が頑張っているからだろうが!!それなのに部下には感謝の念どころかパワハラで返しているとは何事か!君たちもその言いなりでいいのか!自分の頑張ったことも認めてくれず、ただ働けと言われるだけの会社にいて人生楽しいのか!!」


 遂に社長は黙り込んだ。それと同時に警察がやってきて社長に任意同行を求められ彼はそれに従った。


この会議でもう優劣の差は、はっきりした。


「私達は愚かでした。人の意見に耳を傾けず部下にはパワハラして八つ当たりしていました。部下のお陰で会社は成り立っているというのに……」


副社長はそう言って頭を下げていた。


「俺に謝られても……本当にすべき相手がいるだろう」


「もちろんです……」


きっと彼らもこれから警察の御用になるだろうが、その前に、せめて直接被害者に謝ってほしい。そして更生して本来の自分に戻って欲しい。そう願うばかりだ……




 この後も相手が少し優勢だったのだが、やはり身内から造反者がでてきて、そのほとんどが結ばれた契約内容は俺らの会社に併合されるのに同意するような人達だった。そしてライバルとの統合が決まったのは言うまでもない。

 過程はどうであれ、俺らの完全勝利だった。


「社長、遂にやりましたね!」


「ああ、やっとこの不毛な争いに決着がついた!でも喜ぶ前に聞きたいことがあるんだけど」


「え、何のことでしょうか?」


「あの音声データと防犯カメラの映像データのことだよ。なんでお前がそれを持っていたの?」


「それは、CM事業部の部長に託されたものなんです」


「……それは本当?有り得ないって……」


「何故ですか?」


「だってアイツ、捻挫して入院中だもの。病院にパソコンは持ち込んではいなかったぞ……」


「は……」


じゃあ俺に電話してきたのは誰なんだよ。でも思い出してみれば確かに声が少し違っていた。俺は片付けが終わり次第、直に病院へ向かった。


「おい、怪我は大丈夫か」


「足首が、壊死してしまったらしいけど全治6ヶ月だって。良かったよ。で、目的はもう1つあるんだろう?」


「ああ……ていうか、なんで分かった?」


「どうせ噓がばれると思ったからだよ。このことは他言無用でお願い」


そういうと次々と謎の電話の真実が明らかになっていった。


「本当は私が頼みたかったんだけどね。ここでは電話をかけることはできないだろう?だから彼に電話を代わりに頼んだのさ。彼は声を変えるのが上手でね。突然、別人から電話がかかってそんなことを言われたら疑ってしまうだろう?だから彼に俺のマネをして電話をかけてもらったんだ。会議中なら急いでいるからあまりよくわからないからだろうと思ってさ。君、案外疑い深いから」


「確かにな……じゃあ俺に電話をかけたのは一体……」


「私の同僚さ。元ね」


ここで言う彼の同僚は前に取締役がCM事業部の部長としてヘッドハンティングする際に使ったある()()その人である。


 確かに彼1人ではどうすることもできなかったが、彼がいたお陰で会社の汚職が進まずに済んだというのは、言うまでもないだろう。もっとも、そんなことは本人以外、彼の凄さを知ることはないのだろうが。


「まあ、俺等の会社が大きくなるのは間違いない」


「ああ、だから私達の会社を狙う輩は増えていくのもほぼ確定だ」


「慢心は許されないな」


「確かにな、ライバルの二の舞いは避けなければ」


空を見上げると意外にも雲の中から太陽がきれいに出ていた。

もしかしたら伏線回収しきれないかもしれないので何かあったら感想で教えて下さい


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