第三話 その時から~「私」
この会社が大きく変わったのは、あの2人が入ってきてからだろうか。
この会社どころか社会にまで大きな影響を彼らは与えた。
1人は給食に限らず多くの食品業界に革命を起こした。もう1人は給食の無償化にまで大きな影響を与えた。本当に信じられない。彼らが登場するまでは社員20人程度の小さな企業だったのに今では世界にも影響を与えるほどの技術を持った会社に変貌した。
それを起こしたのが今の取締役と、部長だ。
今やこの会社の2次関数的な成長は下剋上の代名詞として密着取材やドラマ化までされている。
なんでそんな閃きが出来たのか、取締役に聞くと
「閃いたきっかけ?社長との飲み会からだよ。社長が自分自身の昔話をしてくれたから閃いたのさ。社長の昔話の中で残食が多いっていう話を聞いてさ、僕らの時代は給食があまり美味しくなくてね。なら今の給食業界に進出すればライバルの少ない現状で、市場を独占できるんじゃないかって思って給食の製造する機器と食材の運搬技術に踏み込んだら、これが大当たり。これが僕の思うこの会社の大きな転換期。でもすごいのはもう3人いるよ。今の会長、社長そして僕の後輩だ。気になったら聞きな。本人が一番詳しいから。」
「相変わらず大雑把だな。そんなので国会での説明は大丈夫だったのか?」
「ああ、もちろんさ。テレビでの解説で見た通りだろ。そうじゃなかったら見せる顔がないさ」
「あの頃と比べると随分生意気になったな」
「これが本当の自分だよ。馬鹿をしたらただの生意気な老害って言われるからね。人一倍努力しているつもりだよ。みんなの為にも頑張るよ!」
「その覚悟や良し!」
もう2人にインタビューしてみた。
「なあ君。君は給食の無償化にどうやって漕ぎついたのさ」
そう聞くと思いもよらない話が出てきた。
「それは、取締役との他愛もない会話がきっかけですよ。取締役が何故こんなにも給食や食品業界に大きな革命を与えることができたのか聞きたくなったから、それを飲み会で話を聞くことにしたのです。そしたら取締役はそのきっかけとなった話以外にも自分自身の夢を語っていて、その中に『給食にはね、夢があるんだ。みんなを笑顔にする力があるんだ。給食を美味しく食べてもらうことはみんなの幸せなんだ。だからこの仕事を楽しいって思えるんだよ』という話があったんです」
「それでどうなったの?」
「俺……ゴホンゴホン、私はその話を聞いてこの会社に対する向き合い方が大きく変わりました。私はこの話を聞くまでお金に執着しすぎていました。最初はこの会社に入って革命を起こしたいと思って入社したのに、過酷な労働をしている中でお金さえ稼げればいいと思って仕事をするようになってしまいました。でも取締役の話を聞いて目が覚めました」
意外とアイツ、やるやつだな。アイツがコイツをこんなにも成長させたのか。本当に昔のアイツそっくりだな。アイツを取締役に抜擢した甲斐があった。本当に人を見る目があるな……
「私は目が覚めてからやりがい労働にならない範囲で、滅茶苦茶頑張りました。そして人の幸せ第一に行動するようになりました。自分のやりたいことを全力で人のためにもなるようにやれば、結果なんて勝手についてくるものなんだと。今の自分があるのは全部あの人のおかげです」
「心酔しきっているね」
「心が壊れるかと思ったほどの仕事を受けた際は取締役がすごく手伝ってくれるからとても嬉しいです!」
その件は本当に申し訳ない。私も頑張ったんだよ?でも仕事の発注量が人材不足で辛くて辛くて……結局私も倒れて、病院に行ってしまった。その中で天井を眺めていると、ふと閃いた。新入社員、新卒じゃなくてもよくね?と。
だから派遣業者を一気に雇って、全員ヘッドハンティングした。帰られると困るから正社員化したのだ。このおかげでこの会社の人材不足は一気に解消されたのだ。あと付け足しで、年功序列という考え方を排除し、完全実力主義にしておいた。私も頑張らねば落とされるので日々精進している……
話が逸れてしまった。
「苦労かけさせてすまんな」
「大丈夫です。これが資本主義社会ですから。世界は甘くはないのです。ただ法律違反があったら通報しますけどね!」
図太い精神をもっているなと感心した。
さて、もう1人聞きたい人物がいる。それは私が当時部長だったころのこの会社の社長だった人。いまの会長だ。
40なのにもう隠居したのが本当に衝撃だったが、いい判断をしたとするには私たちが頑張らねば証明できない。
でも何故会長は私を抜擢したのか、そして何故会社の業種を大きく転換したのか、聞きたいことだらけだ。忙しすぎて聞く暇がなかったからちょうどいい。
「会長、なんで私に社長になれとおっしゃたのですか」
「一番成績が良かったのと……天啓かな」
「天啓⁉」
これを聞いてマジで驚いた。天啓で会社の命運を渡すものなのかと⁉
「夢の中でね、君が会社を大きく変えてくれる子を次々と見抜いてヘッドハンティングしているところを見てさ。現実でも君の仕事ぶりを見に行ったんだ。そしたら見事な采配で現場の人材育成を効率よく、思いを込めてやっていたからもう間違いなしと思ってね。君をすぐにでも社長にしたいと思ったんだよ」
「もしかしてですけど、社長が業種を大きく変えたのは……」
「君の選んだ部下なら間違いなしと思ってね」
この話を聞いて私は相当重い責任をあの時背負っていたのだと再確認させられた。本当に成功して良かったと心の底から感じた。
これでインタビューは終わったが、思いがけない話をたくさん聞けて良かった。これからもこの会社が人のためになることを祈り続けたい。
「社長、結構やばい!ライバルがうちに買収しかけようとしているって連絡がきた!」
「なんだって‼‼」
言った先から波乱万丈だな。これがフラグか。思いっ切り回収されたな。
「よし、今度もみんなでこの困難を切り抜けよう!」
「はい‼」
頼もしい返事だ。フラグをへし折っていこう。何とかして見せるから。みんなと一緒にね!
その時からこの会社はさらに大きくなったり倒産寸前にまで追い詰められたり、投資家に買収されそうになったりと大変な道のりだが成長は止まらないのであった。
最後まで見てくれてありがとうございます!
できれば高評価とコメントお願いします!