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親友(異性)に惚れてしまって、告白したら大変なことを吐露されてしまった。の、翌日譚

作者: 口崎岳直治

晴れて恋人になれた和也と美鶴だったが、お互いに譲れないものがあった。

いや、譲れないというか、生理的に無理というか、とにかくそんな感じだった。


というわけで、前作の続き、翌日の話になります。


単体で読むと、わからない部分もあるかと思いますが、それすらも楽しむのであれば、何もいいませぬ。


 想い人と恋人同士になれた。

 それだけ聞けば、ああ、いいことだな、と、思われる事柄だろう。

 更には、相手が、ずっと長い期間、俺を想い続けていたという事実もあれば、それはもう、さぞかし幸せな状況だろう、と、普通なら思うだろう。


「はぁぁぁぁ」

「ふぅぅぅぅ」

 だというのに、翌日の俺たちは揃って大きなため息を漏らしていた。

 ここは、俺の恋人、柊美鶴の家のリビングだ。

 昨日は家族が家にいないということで、付き合い始めた初日だというのに、お泊り初日という、高難易度ながら、想いを遂げるという絶好のチャンスだったわけだ。

 なのに、どうして、二人してため息をついているのか、それには不快、いや、深い理由がある。


「こういった事態を想定しておくべきだった。ほんっとうにすまん」

「いや、美鶴が謝ることじゃないだろ。美鶴は悪くない。俺の覚悟が……覚悟が……」

「言うな! 和也が悪いわけじゃないだろ。これは仕方がないことなんだよ」

「言い訳になるし、フォローになるかどうかわからんけど、俺、本気で美鶴が好きだからな」

「ああ、わかってる。逆にそこを疑う可能性とか、お前、俺を舐めすぎ」

 美鶴が吊り目がちの目を更に吊り上げさせる。

「そうだよな。そこはもう、お互いに疑うどころか、隠そうとしても隠せないレベルだよな」


「うっせ、恥ずかしいこと言うな」

 そう言いつつ、俺と合わせていた視線を横にずらす。

 それだけでなく、顔全体を横に向ける。

「耳、真っ赤だな」

「てめっ、恥ずかしいことっ、言うなって、言ってるだろ」

 美鶴が再び、俺に視線を戻す。

 俺は覚悟していた、美鶴に、今の真っ赤になった顔を見られることを……。

「和也だって、顔真っ赤じゃねーかよ」

「しょうがねえだろ、好きな相手が自分の事で照れてるとか、嬉し恥ずかしすぎるだろ」


「はぁぁぁぁ」

「ふぅぅぅぅ」

 お互いに照れあった後、再び漏れるため息。

「それにしても、男言葉、ほんっとうに自然なんだな」

「ずっと、こんな風に話したかったからな。想像、というか、妄想してた」

 美鶴は、同性ならではの気安さを俺としたかったらしい。

 昨日の吐露の後、遠慮がなくなったのか、口調が思いっきり変わった。

 俺はそのことを好ましく思っている。

 好きな相手が飾らずに自分に接してくれる。

 それは嬉しいことだろう。何しろ、自分を本当に信頼してくれているということだ。


「あ、そうそう、もちろん、お前とふたりっきりのときだけな。それ以外のときは……」

「今まで通りの話し方ってことだな」

「そうね。そうでなきゃ、みんなおかしく思ってしまうわ」

「うむ、そうなるわけか……」

 俺を捕まえるために、猫をずっとかぶり続けていたと思われるだろうな。

 そして、俺はそんな猫被りにまんまとひっかかった間抜けという扱いだ。

 どっちかといえば、美鶴からしたら後者が気になるところなんだろうがな。


 昨晩、俺は美鶴の身も心も手に入ると思っていた。

 そして、美鶴も、俺の身も心も手に入ると思っていた。

 俺も美鶴も、気持ちも身体も、高まりまくっていたのだ。

 もう、抑えが効かないのは仕方ないことだ。


 キスをして、ベッドに転がって、お互い愛撫をして、そこまではよかった。

 だが、いざ本番というところで、問題が発生したのだ。

 美鶴は女の身体を持った男だ。

 俺はそれでも美鶴が好きだった。

 そして、美鶴は男の内面を持ちつつ、ゲイだった。

 美鶴の恋愛対象、性愛対象は男だ。

 そして、無理と思いつつ、俺への思慕を募らせ、いや、拗らせていた。

 俺はいまだに知識が足りていないが、どうやら、男性の同性愛者というのは、攻めと受け両方大丈夫なケースから、受け専門、攻め専門と、色々あるらしい。

 美鶴の場合は、攻め専門ということだった。


 つまり、俺も美鶴も、被挿入希望者ではなく、挿入希望者だったのだ。

 最後の一線は、お互いに平行線だった。

 もちろん、身体の事をたてに、俺が強制することも、体力差的には可能だったろう。

 だが、想像してしまったのだ。俺が男にされてしまうことを……。

 ちなみに、俺はノンケであり、同性愛の素養はまるでない。

 つまり、されてしまうとかいうのは、嫌だというか、わりと怖気が走るレベルだ。

 美鶴もそうなのだろうと考えると、強要することはできなかった。


 最後の方は、美鶴は歯を食いしばりながら、それでも俺をまっすぐに見つめて「いいよ」といったのだ。

 二人でキャッキャとしていたとき、ずっと美鶴は男言葉だった。

 俺はそれがすごく嬉しかった。そして、美鶴も、俺が喜んでいることを喜んでいた。

 だが、「いいぞ」じゃなくて、「いいよ」といった。

 その瞬間、美鶴は俺の前で、再び女の仮面をかぶったのだと、俺は理解した。

 きっと、耐えられなかったのだろう。

 素の自分では、到底受け入れられないと、だけど、俺が好きだから、俺と身体を重ねたいから、だから、そうなるしかなかった。

 そんな美鶴をそのまま抱くことは俺にはできなかった。

 結局、そのまま、二人してやけくそじみた感覚になりならがも、抱き合って眠ったのだ。


「昨日は、和也を抱きしめて眠れて凄く幸せだった」

「ああ、俺も、美鶴をこの胸に抱きしめて眠れて幸せだった」

「だけど、お腹にあたる感触はちょっと嫌だった」

 まあ、そりゃそうだろう。

 俺だって、自分の下腹部に硬いものが当たってきたら、かなり嫌だ。

「いや、無理すんなって、ちょっとってレベルじゃないだろ」

「う、でも、だけど、俺で興奮してるのかっていうのは、正直かなり嬉しかったから、それと相殺で、ちょっと、になったのは確かで……」

「ああ、そういうことね」


 その後、性的なことはとりあえず置いといて、やはり俺たちはカップルということになった。

 外聞を気にするつもりはないが、はたからみれば、上手くいっているカップルにしか見えないことだろう。

 なんせ、俺は、他の男が美鶴によりつくのは嫌で、美鶴も、他の女に俺が言い寄られるのは我慢ならないのだから。

 これまでずっと我慢していたということを言われたが、俺に言い寄る女なんていなかったのだから、我慢の必要もなかっただろう。

 そう言うと、美鶴は「お前が鈍くて助かったよ」と、笑って言った。


 普通、というと、いったい何が普通なんだと、突っ込まれそうではあるが、ごく一般的なカップルに比べて、俺たちは自分をさらけ出すことができているという点は自信がある。

 そして、美鶴によると、一般的なゲイカップルは、籍を入れることができないので、その点は俺たちが有利だ、などと浮かれていた。

 だが、気づいているのだろうか、好きな相手との子供を欲したとき、結局、美鶴が、俺だったら耐えられるかどうか自信のないことを、受け入れるしかないという未来に……。


「あ、そうそう、これからジュエリーショップいかないか?」

「ん? ああ、ペアリングでも買おうか」

「なんか照れるけど、やっぱ、和也は俺のものだっていう、形もな、欲しいというかなんというか……」

「あー、そうだな、俺はお前のもんだし、お前は俺のもんだ」


 今は棚上げでもいい。

 でも、もしかしたら、いずれ、愛情以外の部分の友情で、美鶴を受け入れられるかもしれないし、美鶴もその可能性を感じているだろう。

 友人で恋人で、それでもしかしたら、いずれ結婚なんかしたら、さらにそこに夫婦なんて関係もプラスされる。

 いますぐ結論を出すこともない。

 俺は美鶴が好きで、美鶴が俺を好きな以上、一緒にいること以上に幸せなことはないのだから。



読了ありがとうございます。


この二人、どうなったかな、と、思ったら、なんだか自然に出てきました。


評価、感想などはとても求められません。


そんなグレードの話ではないですが、読んだ人が少しでもそんなこともあるのかも、と、思っていただけたら、幸いです。

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