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第14話(2)青春

 青春ってなんだろな。

 高校生って、青春の時らしい。でも、これが青春なら、暗くて暗くてどうしようもない。

 俺は校長が延々と命の大切さについて長話する中、地面についた血の跡を思い出しながら、青春について考えていた。


 なんでこんなことになってるかというと。最近いじめのターゲットになっていた元いじめっ子、武田が飛び降りたからだ。

 武田は死にはしなかった。死んでおかしくない高さだったけど。

 俺のカンだと、たぶん、誰かが死にかけていた武田に金印のポーションをかけた。誰かはわからないけど。

 で、武田は今は入院中。

 で、いじめアンケートが実施されたり、校長が長話したり。

 でも、大人が真相を知ることはたぶんない。


 とにかく、ホームルームが長くなって、俺がダンジョンに潜れる時間がちょっと短くなって、いい迷惑だ。

 ああ、そうそう。名張はとっくに赤坂に捨てられて、元の陰キャ仲間のところに戻った。だけど、それはそれでしあわせそうだ。名張は、ダンジョンで探索してた、赤坂と付き合ってた、ってんで陰キャ男子の間で妙な尊敬を集めている。


 赤坂はあいかわらず、陽キャ女子グループの中心にいる。それ以上のことは知らない。


 俺の学校生活は何も変わらない……けど、ちょっとだけ変わったのは、最近、筑地が俺にからんでこないってことだ。

 俺、何かしたか? 

 俺はいつもほぼ完全に無言だから、失言も何もないはずだけど。単に俺にからむのにあきたのかな。


 ま、どうでもいいか。

 俺にはダンジョンがある。

 ダンジョン以外のことは、どうでもいい。

 最近は特に。


 50階層の金印の万能薬を手に入れるために、俺は全力で鍛えながら40階層台の攻略を進めている。

 正直、こんなに一生懸命になるとは自分でも思わなかった。

 金印の万能薬なんて手に入れても、俺自身には何の得にもならない。

 だけど、俺は、シンがいなくなったら困るから。


 シンはダンジョンで唯一信頼できる友達だ。

 いや、ダンジョンだけじゃなくて、俺の唯一の友達だ。俺はダンジョン外に友だちがいないから。

 だから、金印の万能薬だけは、絶対に手にいれる。

 

・・・


 陰鬱な学校からようやく解放されてダンジョンに入った俺は、その日、ダンジョン内で見知らぬ男女二人組を見かけた。

 場所は20階層あたりだ。


 女の方はやたらとハイテンションな声で「アオハル~!」と叫んでる。

 ウザイことこの上ない。

 でも、そこで俺は、アレは配信者だ、と気がついた。……配信者でもないのにあのテンションでしゃべっている奴がいたら、それはそれで怖い。

 ちなみに俺は今日も透明マントで身を隠している。


 配信者は邪魔だから、できれば撮影用のアイテムを奪ってから追い出したい。

 そう思いながら、俺は男女二人組を後ろからつけていった。

 

「金印の万能薬、全然でないね」

「まだ20階層だからな」


 そんな会話が聞こえ、俺に衝撃が走った。

 こいつら、金印の万能薬を狙っている……!?

 どうして金印の万能薬の存在がバレた? シンかジャンヌがうっかり情報をもらしたのか?


「本当にあるのかな。金印の万能薬なんて」


 配信者の女がそう言ったのを聞いて、俺は気が付いた。

 こいつらは、50階層ボスの初回討伐アイテムが金印の万能薬だってことは知らないみたいだ。

 だけど、だとしても、金印の万能薬を狙っているライバルには違いがない。


 金印の万能薬を奪おうってやつは見逃すわけにはいかない。

 俺は双剣をつかんだ。

 背後から斬りかかれば、きっと俺なら二人とも始末できる。始末できる……だろうけど。

 俺はためらった。


 さすがに背後から闇討ちって非道じゃないか?

 そもそも、俺は殺人しない(ノーキルクリア)主義なんだ。

 俺が知る限り、俺はこれまで誰も殺していない。……赤坂の件みたいに色々あって結果的に死んでいる奴や後でモンスターに殺される奴はいるかもしれないけど、そういうのは知らない。ノーカウントだ。

 それに、殺さない主義ったって、こっちの命が危なくなりゃ、そりゃ遠慮なく殺す。ダンジョンはそういうところだ。だけど、敏捷特化でいつでも逃げられる俺はそういう状況になったことがない。


 ここであのどうでもいい配信者たちを殺すと、俺のせっかくのノーキル記録がとぎれちまう。しかも後ろからこっそり暗殺って。忍者かよ。

 俺は忍者っぽい装備で固めているけど、別に忍者じゃない。


 迷いながら後をつけている内に、俺はふと不思議に思った。男の方は歴戦の探索者っぽい風格だけど、女の方は妙にビクビクしている。何かに怯えているようだ。

 あの女、何に怯えてるんだ?


 しばらく後をつけて歩いている内に、男女二人組の向こうに、人影が見えてきた。

 装備のあちこちに青いステッカーがはってあるから、すぐにわかる。

 アーチーだ。

 神槍のパラディンってキャラが大好きな、勝手にシンのことを兄貴と呼んでからんでくるアーチーだ。


 俺の前を歩いていた二人組も、アーチーに気が付いた。

 その瞬間、女の方が震えだした。


「ね、ねぇ、もうやめようよ。こ、こんなの……」


 配信者の女がそう震える声で言った。男は鼻で笑い、剣を抜いた。

 なんか奇妙な形の剣だ。先の方に穴があいているように見える。

 まぁ、ダンジョンの武器は見た目と攻撃力が一致しないから、どんな形の武器もありなんだけど。


 なにはともあれ、あの男はアーチーを狙っている。後ろから襲いかかるつもりだ。

 アーチーもかつて同じようにシンを殺そうとした奴だから、助ける義理はないっちゃない。

 だけど、配信者の男がアーチーの背中に向かって突進し始めた瞬間、俺は走りだし、男を追い抜き、そして、振り向きざまに男の足を剣でなぎ払った。


「ぐっ」


 男が転んだ。

 その時には、俺は素早く跳び離れていたが、正直、手ごたえに驚いていた。


(こいつ、かなり強い……)


 あいつが持っている武器は攻撃力160程度で、剣としては20階層レベルの攻撃力だ。防具も30階層くらいのレベル。

 だけど、こいつはもっとずっと強い。30階層レベルなんてもんじゃない。

 少なくとも防御力はかなり高いはずだ。

 見た感じ、防御力特化でもなさそうだから、たぶん、ステータスが全体的にかなりいいはず。


 敵のパラメータ分布と戦術次第じゃ、俺も危ないかもしれない。……ま、それが分かった今、俺が真正面からこいつと戦うわけないけど。

 正面から堂々と、は俊敏特化の俺の戦い方じゃない。

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