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チョロインです。赤坂愛理

 (何あの女!)と思いながら、愛理はダンジョンの外に逃げ出した。

 名張のことは、すでに愛理の頭からも心からも消えていた。

 むしろ、ダンジョンの外の空気を吸いながら愛理がちらっと思い出したのは、「お兄ちゃん」のことだ。


(お兄ちゃん、やっぱり死んでたんだ。ざまぁみろ)


 お兄ちゃんは、愛理の幼なじみの「ユーヤお兄ちゃん」だった。名張にはあえて「お兄ちゃん」としか言っていないから、実の兄のことだと思いこんでいるが、子どもの頃、隣に住んでいただけで、「お兄ちゃん」と愛理に血のつながりは全くない。


 国内トップクラスの探索者になって地元に帰ってきた「お兄ちゃん」に愛理はコロッと落ちて、お兄ちゃんの言うままに大人の階段をあがっていった。

 何度か車やお兄ちゃんの家でデートをした後で、お兄ちゃんは愛理をダンジョンに誘った。ゴムなしでできるから。

 お兄ちゃんいわく、ダンジョンではみんなそうしているらしい。


 それから、二人はモンスターのあまり強くない1階層で欲望を満たすダンジョンデートを繰り返した。

 ちょうど1階層の終点あたりに人目につかない小部屋があって、いつもそこでお兄ちゃんが満足するまでやっていた。


 ところがある日、他の探索者に見つかった。

 探索者の中年男は「自分も混ぜろ」と言ってきて、お兄ちゃんと戦いになって、そして、お兄ちゃんが負けた。

 お兄ちゃんは「こいつは譲るから、命は助けてくれ」と叫んで、一目散に逃げだした。


 捨てられたショックを実感する間もなく、中年男が愛理を襲ってきた。

 愛理は泣き叫び、抵抗した。

 そして、中年男が腹の中に入って来る直前、偶然、全身ミスリル鎧の騎士が通りがかり、中年男の四肢をぶった切って散々脅してからダンジョンの外に投げ捨てた。


 その隙に、愛理はダンジョンの外に逃げた。

 ダンジョンの外に、お兄ちゃんはいなかった。それっきり、お兄ちゃんと連絡はとれず、会うことはなかった。


 あれ以来、愛理はお兄ちゃんを探し続けていた。

 復讐するために?

 それとも、会って言い訳を聞いて、やり直すために?

 どちらなのか、愛理にはわからなかったが、とにかく、会いたかった。

 だから、ダンジョンで探し続けた。


 そして、名張と出会った。

 突然モンスターを消し去る、不可思議なとてもすごい能力を持った少年……だと思って、いずれダンジョンの英雄になる男だと思って、愛理はあっさり名張に惚れた。


 だが、愛理は悟った。名張が倒れた後。

 自分の弓矢が敵に大きなダメージを与えた……と思った時に、気がついた。

 あの力は、名張のものではなかった。自分のものだったのだ。

 だから、もう名張は不要。

 愛理の勘違いの恋はあっさりと消えた。 


 結局、愛理が惚れていたのは、力と名声だった。

 だから、お兄ちゃんも名張も、すでに愛理の心の中には存在しない。


 次はどんな出会いがあるんだろう。


 次の犠牲者もといヒーローとの出会いに期待して、わくわく心をおどらせながら、今、愛理は心の中に高々と恋人募集中の看板を掲げている。


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