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第11話(1) 蛮槃會の郷田(敵視点)

 蛮槃會にはカリスマ的なトップがいた。

 その名は高山帝人。通称・コウテイ

 いまや蛮槃會は半壊状態にある。だが、コウテイに焦りはなかった。


 ポートを追ってダンジョンで行方不明になった蛮槃會メンバーの最期は次第に判明していった。

 新宿ダンジョン100階層の先は裏ダンジョンと呼ばれるダンジョンにつながっている。そして、裏ダンジョンの四天王と呼ばれる者たちが、蛮槃會のメンバーを殺したのだ。


 敵は裏ダンジョンの四天王。

 蛮槃會に敵対する者は殺すのみ。


 コウテイは精鋭とともに裏ダンジョンへ乗りこみ、力をつけていった。

 戦いに長けたコウテイには、裏ダンジョンの攻略法はすぐに見当がついた。


 各階層で通常のダンジョンの10倍の時間をかけてモンスターを狩り、ステータスをあげる。

 装備は新宿ダンジョンで収奪したアイテムを使い強化。

 ダンジョンに潜る時間帯がずれていたこともあり、コウテイたちは神山ダンジョンの四天王にでくわすこともなかった。


 こうして、蛮槃會のメンバーは着々と力をつけ、10階層台を攻略し、20階層台の攻略を進めていた。

 当然、途中で死んでいった者や、脱落者も大量にいたが、今、裏ダンジョンにはコウテイの他に蛮槃會の精鋭4名がいる。

 2人組の殺し屋・パー太とペー太。

 最強の闇バイト・アツシ。

 格闘家・郷田太一。


 殺し屋パー太とペー太は、サディスティックな趣味がいきすぎて、殺し屋としての暗殺成功率は低く、もっぱら拷問屋として雇われていた残忍な双子だ。

 だが、人に苦痛を与えることに快楽を感じる邪悪の塊のようなこの双子は、ダンジョンで驚異的な適性をみせていた。

 パー太とペー太は探索者を捕えて拷問することに喜びを見出していたため、100階層クリアには興味がなかったが、数年前からその気になればいつでも新宿ダンジョン100階層をクリアできる実力者だった。


 闇バイトのアツシは、最初は振りこめ詐欺の闇バイトだったが、じきにダンジョンでの闇バイトに駆り出されるようになった、ただのバイトだ。

 だが、蛮槃會メンバーが雇ったダンジョンバイトの99%がすでに死亡している中、アツシはダンジョンに適応して生き延びてきた。いわば、究極の選ばれしダンジョン闇バイトだった。


 ダンジョン格闘家・郷田太一は、ダンジョンドリームを叶えた男のひとりだ。

 幼い頃、郷田はいじめられっ子だった。

 だが、郷田の親は言った。「いじめられるのはお前が弱いからだ。強くなれ」と。

 格闘技を習い、強くなった小学生の郷田は、ある日、いじめっ子たちを殴り倒した。

 そして、その時、郷田は目ざめてしまったのだ。人を殴ること、痛めつけることの、快感に。


 郷田は自分より弱い者を軽蔑していた。

 信じていた。

 弱い奴からはいくらでも奪い、痛めつけていいと。だって、すべて弱いあいつらが悪いのだ。強くならないあいつらが悪いのだ。


 そんな郷田にとっての理想郷がダンジョンだった。

 ダンジョンでは相手をいくら殴り殺しても誰も文句を言わない。

 殺される弱い奴が悪いのだ。郷田だけではなく、みんながそう信じている。

 ダンジョンでは強い者がすべてを手に入れられる。


 郷田はダンジョン内で開催されるバトル大会のチャンピオンとなった。

 最強という名声と金。

 郷田はダンジョンですべてを手に入れた。


 そして、その日、郷田は裏ダンジョンの11階層で、一組のカップルとでくわした。

 まだ十代であろう若い男女だ。


「いい女じゃねぇか」


 郷田はニタァと笑って舌なめずりをした。

 ダンジョンでは力さえあれば、女を好きにできる。少なくとも、郷田は好きにしてきた。

 だから、郷田はあの女は自分の物だと信じていた。

 この時、郷田はまだ自分がダンジョンで力を持つ強者だと信じていたのだ。


 郷田に気づき、ひょろひょろの男が、女を守るように剣を構えて前に出た。


「赤坂さんは俺が守る」


 郷田はニタニタと笑った。


「いいねぇ。俺はお前みたいな弱い男をぶちのめしてからツレの女にぶちこむのが大好きなんだ」


 郷田にとって、ひょろひょろの少年、名張は完全に格下だ。

 その時、郷田を指さし、女、赤坂愛理が叫んだ。


「あの装備! あれはお兄ちゃんの!」


 赤坂はわなわなと震えていた。郷田が以前拾ったブレストプレートを指差して。たしかに二つとはなさそうな特徴的なデザインの胸当てではあった。


「あなたが、お兄ちゃんを……! お兄ちゃんの仇!」


「はぁ? 何を言ってやがる。まぁ、いいさ。おとなしく俺の奴隷にならないっていうなら、後で殺すだけだ」


 郷田は勝ちを確信していた。郷田の前にいる男女はどう見ても郷田の敵ではなかった。

 本能的に敗北を予感して、名張の足は震えていた。


 この時、この3人の誰も、気が付いていなかった。

 このダンジョンの真の強者、透明な忍者が、すぐ近くでこっそり彼らを眺めていたことに。


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