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【旧版】Re:LIFE 〜永久の惨劇を彩って〜  作者: 如月笛風
第2章 『手繰り寄せた終焉』
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第23話 『不変の運命』

 どれ程走っただろうか。

 そもそも少ない自分の体力で勘定をしたところで、大した距離にはならない。

 何度も息を切らせては、棒の足を止めそうになった。

 しかし、走らなければ、この大きく欠けた心の何かは紛れない。

 だから、止めなかった。止められなかった。

 最後に見たあの2人の相反する表情が、いつまでも脳裏に焼き付いて離れない。

 できることなら、最期まで傍に居てあげたかった。居てほしかった。

 でもきっと、シルヴァはそれを望まないから。

 今はただ、この決断が間違いでないことを願う。


「──そこのアンタ! 止まりなさい!」


 不意に聞こえた声は、少女の正面からだった。

 思わず止めてしまった少女の足は、再度動かすまで時間を要することになるだろう。

 声の主を確認すると、金髪の長いツインテールを持つ、自分と同程度の少女。

 その隣に、黒髪の天然パーマの少年。身長は少女よりやや高い程度。


「ちょ、ちょっとルージス! 初対面の人にそんな態度じゃダメだよぉ!」


「ウーブラスはちょっと黙ってて! その紫色の服と、見たことない首の装飾品。アンタ、例の危険分子ね?」


 彼女たちの服装から、『十の聖剣(クロス=グラディウス)』の騎士であることは見て取れた。

 そして、自分の事情も知っている。つまり、彼女たちは自分を敵視している。

 このままでは良くない。


 ──また、死人が出てしまう。


「沈黙は認めた合図でいいわね? 国王様より、アンタの暗殺が命じられてる。()()なんてしないで、大人しく投降してくれれば、楽に逝かせてあげられるけど……どうする?」


「ま、まさか……ルージス、この子を殺すの……!? そ、そんなのダメ…………じゃ……ない……のかな……?」


 楽に逝かせてあげられる。とんだ大嘘つきだ。

 幾度となく死にたいと思って、同時に生きたいと願った。

 その末にあるのは、いつも自分以外の死である。

 それとも彼女たちは本当に知っているのだろうか。


「……楽に死ねる方法なんて……ありません……」


「……どういうこと……?」


「……斬りたければ……どうぞ」


 ああ、やっぱり知らない。

 無知のまま、彼女たちは命を落とすことになる。

 あと何人犠牲にすれば、自分は生きることを許される?

 あと何人殺せば、自分は生きることを許される?

 そこまでして生きる必要があるのだろうか。

 折角シルヴァが繋いだ命だが、無駄にすることを許してくれるだろうか。

 自分に向けられたあの最期の言葉には、どちらを選べば辿り着けるのだろうか。


 ──答えは全て、最初から出ている。


 気づけば少女の目の前までルージスは迫っていた。

 震えながら振り下ろされる剣を、もはや少女は見もしなかった。


「──待って! ルージス!」


 その声に反応してか否か、剣は少女の身体へ触れる直前に止まった。

 予想外の出来事に、少女も思わず顔を上げる。


「グレイスさんの言ってたことが本当なら……そ、その子を攻撃するのは危ないんでしょ……? やっぱり、捕縛だけにして……テンペストさんに引き渡した方が……」


「──今更そんなこと言わないで!!」


 気を遣うウーブラスに、正反対の態度で怒号を浴びせるルージス。


「……私だって嫌よ……! 見ず知らずの無抵抗の人を殺すのなんて。……でも……いつまでも勲八等なんかじゃ居られないの! 功績を……私が優秀なんだって……認めてもらわないと……」


 ルージスは何やら焦燥に駆られていた。

 そして、その焦りを誤魔化すようにウーブラスを怒鳴りつける。


「それにグレイスは裏切り者よ!? アイツの言ったことなんて当てにならない。……けど、よりにもよって何でこんな弱そうな子が……! もっと凶悪で狂暴な相手なら……私だって躊躇わずに済むのに……!」


 悔やむルージスと、凹むウーブラスを見て、少女は考えた。

 もしかすると、この2人なら自分を理解してくれるかもしれない。


「……あの……!……お願いが──」


 その矢先だった。

 それは()のように、突然ウーブラスの背後に現れた。

 彼の出現と同時に引き起こされた強風は、ルージスの腕に重圧をかける。

 ルージスは咄嗟に自分の腕をもう片方の腕で抑えるが、まるで意味などなかった。


 刹那の出来事。

 涙を振り切り瞬く間に、目の前が鮮血で満たされた。

 離れていたウーブラスの表情さえ伺うことができない程に。


「……十分な功績だ。ルージス」


 そう、答えは全て、最初から出ている。


 ──自分に安らかな死など訪れない

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白い……けどつらい……!('、3_ヽ)_ メタ的なアレで先の展開がぼんやりわかっちゃうのがつらい……!
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