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【旧版】Re:LIFE 〜永久の惨劇を彩って〜  作者: 如月笛風
第2章 『手繰り寄せた終焉』
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第11話 『十の聖剣』

「……やっぱり、お前に任せて正解だったね」


 グレイスは扉に凭れ掛けていた背中を離し、そのまま歩き出した。


「いっつもツンツンして、人付き合いが悪いって言われて……本当は誰よりも人のこと考えてるってのに……失礼だよな?」


 そうして独り言を呟きながら廊下を歩くグレイスの前に、城の衛兵が敬礼する。


「グレイス様。国王様より、緊急招集とのことです。至急国王様の元へ向かってください」


「そうか、ならフレイムもすぐそこにいる、僕が呼んでくるよ」


 そう言って、衛兵に背を向けると同時に、衛兵は「お待ちください」と返した。


「──フレイム様には、召集がかけられておりません」


 * * * * * * * * * * * * *


 跪く9人の男女と、その向かいの荘厳な玉座につく若き男。


「……この国に、崩壊を齎す存在が現れた」


 その一言に震撼したのは、()()()()()()()勲等の低い者達のみ。

 その者達に一切構わず、男は続けた。


「その者の暗殺を、貴様達『十の聖剣(クロス=グラディウス)』に委託する。日時、方法は問わん。しかし、くれぐれも国に混乱を招くような真似はするな。……以上の命令に、疑問のある者は面を上げろ」


 男と目が合ったのは、シルヴァ、グレイス、そして、黄と緑の二色髪の男──勲一等、『嵐刃』のテンペストだった。

 男がテンペストから勲等順に話すよう命じると、落ち着いた調子でテンペストは口を開いた。


「その者の詳細な情報は、その()()では分かりかねるのでしょうか」


「……異世界からの『転生者』……それ以外の情報はない。自ら名乗りでもしない限り、知り得るはずもないだろうな」


 テンペストはその話を大人しく了解したが、心当たりを持つグレイスはそう容易くはいかない。

 本来の質問を放り、テンペストへの回答を追求した。


「『転生者』……つまりは、この国に戸籍の無い者、ということですか、国王様」


「……そのようなくだらん質問をするな」


 グレイスが確認したかったのは、当然そんな分かりきった事実ではなかった。つい先刻、そして、今フレイムが相手をしているあの少女の正体──


「はいはーい。じゃあアタシのしつもーん。勲六等以下のアタシ達は、原則として殺人を許可されてない筈だったと思うんですけど?」


「……貴様の考える通りだ。それに『森刃』のシルヴァ、貴様は()()だろう?」


 相手が国王であろうと、シルヴァの態度はいつもこうである。「はいはい……」と呆れながら返事をするシルヴァに対して、国王は慎めの一言すら言わなくなってしまったのだ。


「話は以上だ。この任務は最優先で遂行しろ。放棄は許さん」


 若き王ながら貫禄のある圧だったが、癖のある集団の『十の聖剣(クロス=グラディウス)』では、動じない者が殆どだった。

 全員が順に退室していく姿を尻目に、グレイスは独り残り、王の前に佇んでいた。


「もう一つ、伺いたいことがあるのですが……よろしいでしょうか?」


「構わん。申せ」


「どうしてフレイムには招集を……?」


 その疑問に、王は呆れて鼻で笑った。そして、険しい表情と胴間声で言い放った。


「──くだらん質問はするな、と言ったはずだが?」


 グレイスは心に湧きあがる感情を押し込め、「申し訳ありません」と深く頭を下げた。

 退室の後、拳を強く握りしめていた姿は誰も見ることはなく。


 * * * * * * * * * * * * *


「…………ん……んぅ……?」


 目覚めた瞬間、様々な疑問が少女の感覚を通して浮かび上がってきた。

 まず、ソファに横たわって寝ていた筈の自分が、何故か白い毛布の中にいる。

 確実に目を覚ましたのにも関わらず、何故かいびきが聞こえる。

 金縛りにあったかのように、何故か身体を思うように動かせない。


 ──全ての原因が、少女の背後にあった。


「…………んあぁ? ありぇえ? もぉ起きたのぉ?」


 首だけを振り向かせると、鼻息までもが当たる距離にシルヴァの顔面があった。

 眼帯を外しており、たるんだ筋肉で閉ざされた右目とは正反対に、正常な左目は真っ直ぐ少女を見つめている。


「……えっ? いや、いや……!……えっ!?」


「そ~んなに驚かなくても~。だいじょーぶ、何にもしてないって~」


 次第に鮮明になってきた記憶によると、シルヴァは確か、昨晩「一緒には寝られない」と言って部屋を出ていった筈だった。

 全く矛盾した状況が眼前に繰り広げられていたために、動揺も限界を迎えざるを得ない。


「……やっぱ可愛過ぎるな。マジで誰にも渡したくないぞ?」


 真顔で撫で回してくるシルヴァに、赤面を隠せない少女。その少女を見て、ニヤケを抑えられないシルヴァの無限機関が完成した。


「……あっ……あのっ……!」


「分かってる。でも……もうちょっとだけ──」


 シルヴァは少女を抱き締めた。もはや何度目か不明である。

 しかし、今までとは何か事情が違う様子だった。身を離そうにもどこか抵抗があり、十割の赤面の一部が疑問へと変わる。


「──絶対に……()()()()……!!」


 * * * * * * * * * * * * *


「──それで? 勲二等のグレイス様が、下等の私達に何の用?」


「ちょ……ちょっと! ルージス! そんな態度じゃ失礼だよぉ!?」


 グレイスの前でも強気に胸を張る輝かしい金髪の少女と、その背後に隠れる地味な黒髪の少年。

 至って変わらず穏和なグレイスは、気にせず要件を伝えた。


「──君たちに、話がある」

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― 新着の感想 ―
[良い点] エグい展開が多くぐさっと刺さりました。面白かったです。 少女の幸せを願います。……叶いそうにありませんが。
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