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《声劇台本》Matching Love

作者: うかんむり

0:桜の木の下でハルトは人を待っていた。後ろから女性が近付いてきた。


マシュ:「あの…ハルトさんですか?」


ハルト:「もしこの世界にもヒロインが居るならこの人の事を指すんだ。そんな出会いをした。」


0:時は午前中に遡り


0:ハルトがソファでスマホを見ている。


なぎり:「お兄ちゃん、休日なんだしたまには社長のとこに顔出しなよ」


ハルト:「え〜、やだよ。あんなむさくて汚い職場。社長に会ったら、理由つけて現場に借り出されそうだし会いたくねぇわ」


なぎり:「汚いって妹の今のバ先になんて事言うのよ。いいじゃん。お兄ちゃん身長高いんだから特注で服買って家にまだあるんだし、持っていったら喜ばれるよ」


ハルト:「それこそ現場に連れてって下さいって言ってるようなもんだろ。あんなんお前みたいな大学生しかやらねぇよ。」


なぎり:「はぁ?……ところで、お兄ちゃんさ、彼女できた?」


ハルト:「ん?いないよ」


なぎり:「中学の時はモテてたのにね」


ハルト:「おいなぎり、お前それを言うか…それじゃあまるで僕が過去の栄光にしがみついてるやつじゃねーか」


なぎり:「だって13年と4ヶ月くらい彼女いないじゃんか」


ハルト:「なんで俺でも覚えてない情報知ってんだよ」


なぎり:「え、お兄ちゃんの情報はは大体把握してるし、お兄ちゃんの最後の元カノのカナさんと今もLINEつながってたりもするよ?」


ハルト:「え、そうなの? 俺は電話番号、着信拒否されてるのに?」


なぎり:「まだ着拒されてるのー?くさぁ」


0:時間経過


なぎり:「お兄ちゃんさ、彼女欲しいとか思わないの?」


ハルト:「別に……今フリーで充実してるし」


なぎり:「そういうカッコつけるところ、直しなよ」


ハルト:「かっこつけてねぇよ」


なぎり:「いいや、かっこつけてる!そんでめっちゃダサい」


ハルト:「お前には分かんねぇよ」


なぎり:「いーや、分かります」


ハルト:「あ?」


なぎり:「妹だから。伊達に二十数年もお兄ちゃんの妹やってないよ」


ハルト:「おう…」


なぎり:「どうせ、俺は完璧美少女とじゃないと付き合わないんだァ!とか理想高々男なんでしょ!」


ハルト:「うるせぇな!」


なぎり:「でですね。これを見てください」


ハルト:「なにこれ?アイコン俺だけど、、なんのアカウント?」


なぎり:「これね、マッチングサービス・デアエール!これお兄ちゃんのアカウント!先週マッチした、この桜の木がアイコンのマシュさんって人と今日会うことになってるの!」


ハルト:「はぁ!?最近よく俺の休みとか予定を聞いてくると思ったらそういう事かよ……」


なぎり:「じゃあ、13時に指定の場所に待ち合わせだから行ってきて!」


ハルト:「ちょ、急すぎんだけど!」


なぎり:「いってらっしゃい! お兄ちゃん!」


0:ハルトは桜の木の下で待っていた。


ハルト:「はぁ、マジで会うのかよ…」


0:回想シーン


なぎり:「マシュさんから連絡あったらお兄ちゃんにすぐに伝えます」


0:回想シーン終わり


0:ハルトはなぎりが設定した自分のマッチングアプリのプロフィールを確認する。


ハルト:「おうおう……年齢33歳……血液型おいおいおいおい。趣味、好きな物桜の花…マシュさんのアイコンも桜…なるほど……だから待ち合わせが桜って訳ね……」


0:ハルトの背後から女性が近付いてきた


マシュ:「あの…!」


ハルト:「はい?」


マシュ:「ハルトさんですか?」


ハルト:「あっ、はい…そうですけど、あなたがマシュさん?」


マシュ:「はい!」


ハルト:「え、可愛い……」


マシュ:「あっ」


ハルト:「あっ、やば……つい!引きましたか!?」


マシュ:「いえいえ!そんな!びっくりしただけですから!」


ハルト:「あー、マシュさんはお昼まだですか?」


マシュ:「はい!」


0:回想シーン


なぎり:「お兄ちゃん!行く場所のプランは最低3つは用意しとく事。何事も決める時にスムーズに行くから」


0:回想シーン終わり


ハルト:「色々とこんなプランどうかな?と考えていて、マシュさんが嫌じゃなければお選びください」


マシュ:「そーですね。特に何も決めてなくて、お任せします」


0:場面切り変え


マシュ:「ハルトさんは家庭教師とかもやられてたんですか?」


ハルト:「大学の時ですね。生徒と先生じゃなくて、いつも親戚のお兄ちゃんみたいになっちゃって」


マシュ:「うふふ、なんか分かります!ハルトさん話しやすいもん」


ハルト:「そうですか?大変ですよ~。いたずらっ子が部屋でラジコンヘリ飛ばしてそれが僕の顔面にぶつけられたり……」


マシュ:「えー?それは痛い!」


ハルト:「一緒になってゲームして、あとでお母様に怒られてクビになりかけたり……」


マシュ:「ほえぇ~」


ハルト:「でも、昨日まで分からなかった問題を分かったり、知らなかった事を知って、テストで点数を上げてく姿を見ると、どうしてか、自分の事のように嬉しくなるんです」


ハルト:「彼らが大人になった時に僕の伝えてきた言葉が胸の奥に残ってたら嬉しいなって思いながら、向き合ってって……」


ハルト:「あ!学校の先生でもないのに語っちゃってすみません!」


マシュ:「素敵です……」


ハルト:「え?」


マシュ:「ハルトさんの考え方、素敵です!」


ハルト:「えっ、いや、そんなことないですよ!すっごいヨゴレたバイトもした事ありましたし」


マシュ:「え!?ヨゴレ!?まさか電話で指定された場所に行くとワゴン車があって、山まで言って、大きな袋を土の中に埋めるみたいな!?」


ハルト:「そんな事しませんよ~。汚れは法律的なやつじゃなくて、物理的なやつです。その話はまた今度!食事の前なのでね!」


0:シーン切り替え。駅のホーム


マシュ:「今日はありがとうございます。奢ってもらってしまってすみません……」


ハルト:「いえいえ、当然ですよ」


マシュ:「また、会ってくれませんか?」


ハルト:「…えっ、俺でよければもちろん……!いや、むしろ会いたいです!」


マシュ:「会いたい……LINE、これ読み取ってくれたら嬉しいです」


ハルト:「はい!」


マシュ:「この春人って言うのがハルトさん?」


ハルト:「そうです!」


マシュ:「分かりました。また連絡しますね。また今度。おやすみなさい」


ハルト:「じゃあ、おやすみなさい!」


0:マシュが改札を抜けていく


ハルト:「おお、ゲット……」


0:回想シーン


マシュ:「また会ってくれますか?」


0:回想シーン終わり


ハルト:「よっしゃああ!マシュさああん!」


0:ハルトは周りの人からめっちゃ見られた。


0:ハルトは帰宅し、なぎりが迎える。


なぎり:「お兄ちゃん、おかえりー」


ハルト:「ただいま〜」


なぎり:「お兄ちゃん、マシュさんどうだった?」


ハルト:「めちゃくちゃ可愛かった!ほんとにお姫様みたいな人だった。最後にLINE交換してさ〜(ちゅちゅ)」


なぎり:「キモ。じゃあ、デアエールのアカウント退会しとくね」


ハルト:「おお〜」


なぎり:「顔写真とかない?」


ハルト:「これ!」


なぎり:「え?こんな綺麗な人がデアエールに居る?お兄ちゃん、騙されてるよ」


ハルト:「はぁ!?」


なぎり:「お兄ちゃん!マシュさんに会わせなさい!」


ハルト:「やだよ」


なぎり:「デアエールのアカウント消すのなし!今度会う時、妹と一緒に行ってもいいですか?っと」


ハルト:「おい!ちょっと待てよ!」


0:翌日、ハルト、マシュ、なぎり


なぎり:「こんにちは!春人の妹のなぎりです!」


ハルト:「マシュさん……ほんとすみません……」


マシュ:「全然いいですよ!みんなで居た方が楽しいですよ!」


ハルト:「めっちゃいい人………」


マシュ:「じゃあ、どこいきましょうか?」


なぎり:「ちょっと待ってください!」


マシュ:「ん?」


なぎり:「わたし……マシュさんの家に行ってみたい!」


ハルト:「おま……何言ってんだよ…!」


なぎり:「ダメですか?」


ハルト:「えっと…その…おうちは…汚れてるし…」


なぎり:「気にしませんよ! 大丈夫です!」


ハルト:「おい! 失礼だって!」


なぎり:「ねぇ、マシュさん、いいでしょ?」


ハルト:「俺の話聞けよ!!」


マシュ:「だめです……ごめんなさい……部屋だけは……」


なぎり:「マシュさん………マシュさんはお兄ちゃんの彼女になる気はあるんですか?」


マシュ:「あります! 春人さんと直接お話してみて、いい人だと思ってるし、春人さんの彼女になりたいと思ってます」


なぎり:「じゃあ……彼氏になりたいのに、なんで家くらい公開できないんですか。なにか兄に言えない秘密があるんじゃないですか」


ハルト:「そんな初対面のお前まで居るのに、部屋にあげるなんて……」


マシュ:「それは………」


なぎり:「もし兄を傷付けるような事があれば私は許さない。それだけ知って欲しいです」


ハルト:「なぎり……」


マシュ:「分かりました………私の家、お見せします。」


ハルト:「え!?マシュさん!?」


マシュ:「私も、覚悟しなくてはいけませんね」


0:目の前に広がるのはゴミに溢れたアパートのマシュの部屋だった。


なぎり:「ほぉー」


マシュ:「ごめんなさい! こんなゴミ屋敷で!」


なぎり:「なるほど。マシュさんがデアエール登録したのも家が原因ですか?」


マシュ:「はい…家に上げれなくて、彼氏ができても、時間が経つとこの惨状がバレてドン引かれたり、家に呼べないのを理由に浮気を疑われたりして………」


なぎり:「なるほど。これがマシュさんの秘密」


マシュ:「片付けが苦手なんです! 福岡の実家ではお手伝いさんとかが居て、身の回りの事はしてくれていたので…大阪に引っ越して来てからこんな有様です」


ハルト:「じゃあ、俺達が片付けますよ」


マシュ:「え?」


ハルト:「よし、なぎり、一旦家帰るぞ。防護服まだあったよな?とりあえず必要なもん買ってきて」


なぎり:「分かった〜」


ハルト:「マシュさん、こんな家に住んでて、具合とか大丈夫ですか?」


マシュ:「ええ…まぁ…大丈夫です…ところで、春人さん、防護服ってのは?」


ハルト:「ああ、俺となぎり、ゴミ屋敷清掃のバイトしてた事があって、防護服も自前のを持ってるんです。」


マシュ:「え…うそ」


0:ハルトとなぎりは防護服に着替えた。


マシュ:「わぁ、消防士みたい」


ハルト:「そうですね。ハハハ……最初はカッコイイと思ってました」


なぎり:「入りますよ…うわっ、匂いが…! お兄ちゃん! ミスト! この匂いを中和しろ!!」


ハルト:「了解! 喰らえ! ハイパーミスト!」


なぎり:「よし、任務完了。次へと進むぞ」


なぎり:「まず、ここダンボール多過ぎ。お兄ちゃん。このでっかいやつに空のダンボール全部入れろ」


ハルト:「了解」


なぎり:「お兄ちゃん。机の上に未確認食品発見。至急賞味期限を確認せよ」


ハルト:「ああ、明らか見た目おかしいプリン……って賞味期限2018年!?」


マシュ:「ああ! 恥ずかしい!!」


なぎり:「滅せ!」


なぎり:「お兄ちゃん。妹命令だ。冷蔵庫を開けてこい」


ハルト:「お前…それは危険過ぎる…! 俺にやれと言うのか…!」


なぎり:「じゃあ、換気扇と洗濯機掃除やる?」


ハルト:「くそ!」


なぎり:「あー、洗濯機の水放置されてる〜。うじ湧いてる………はぁ〜。じゃあ、そろそろ狩るか♤」


ハルト:「冷蔵庫のもの……液体系以外は袋。液体系はトイレに流した。任務完遂。って、おい。この布切れ捨てなくていいのか?」


マシュ:「あっ…それはっ」


0:なぎりがハルトをぶん殴る。


なぎり:「馬鹿野郎!!! デリカシー皆無か! レディのショーツをそんなに見せびらかすな! お前の大学4年の経験はなんだったんだ!! 衣服は私がやる! お兄ちゃんはゴミ袋何重にもして外に捨ててこい!」


ハルト:「りょ…了解…」


マシュ:「あっ、ゴキさん、お疲れ様ぁ」


ハルト:「そりゃ居ますよね」


マシュ:「あっ、ネズミさん、お疲れ様ぁ」


ハルト:「そりゃ居ますよね」


マシュ:「あっ、蛇さん、お疲れ様ぁ」


ハルト:「そりゃ…は!? 家の中で蛇を放し飼いするな!」


マシュ:「飼ってませんよ、うふふ。住み着いてから、この家の主と言っても過言ではないです。うふふふ」


なぎり:「あー、この人ダメだ……人としての普通を失ってる……!」


0:それからなぎりとハルトは3時間にも渡り片付けを進めた。


マシュ:「床が…見えました…………床が…!!」


ハルト:「ふー、いい仕事した後は気持ちがいいもんだな」


なぎり:「とりあえず、ちゃんとお代はいただきますよ。」


ハルト:「なぎり! お前! あっ、マシュさん! 俺はお代は要らないですよ!」


なぎり:「私からのお代は高いですよ。私からマシュさんに求める見返りは、兄の事ずっと大切にしてください。」


マシュ:「…! ……わかりました。約束します。春人さんの事大切にします。ねぇ、春人さん。私の事も大切にしてくれますよね?」


なぎり:「ええ、もちろん! うちの兄は大丈夫です!」


ハルト:「なぎり…………」


マシュ:「じゃあ、そうですね! 3人でご飯なんてどうでしょう!」


ハルト:「え、この汚部屋を見た後の俺達に食欲が湧くと思ってます?」


なぎり:「ああ、この人心配だ……まあ、とりあえずこの服脱ぎたいし、風呂も入りたい。私は帰るよ。お兄ちゃん、後はよろしく。


なぎり:「マシュさん。兄がいる限り、この部屋の綺麗さは保たれます。そこら辺もよろしくお願いします! それでは!」


ハルト:「あーあ、行っちゃったよ」


マシュ:「春人さん、本当にありがとうございます!」


ハルト:「良いんですよ。これを仕事にしていた大学時代。綺麗にした後に当たり前の幸せに気付けました。と言っていただく事があって、こう言ったお手伝いをさせていただけるのは本当に嬉しいです」


マシュ:「当たり前の幸せに毎日気付けるそんなふたりに、私達もなりたいです」


ハルト:「え?どういう………」


マシュ:「春人さん!私、こんなダメダメな女だけど、あなたの事が好きです!あなたと一緒に居たい!頑張って自分を変えます!だから私と…」


ハルト:「マシュさん!俺と付き合ってください…………こういうのは男から言わせてください……」


マシュ:「……! ……はい………喜んで…!」


ハルト:「この世界にヒロインが居るとすると、そいつは完璧なんかじゃなく、俺と同じように間違えて、失敗して、一緒に学ぶ。苦しい時も一緒に居るのがこの人だったらいいな。そう思えた」


マシュ:「うふふふ」

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