60.幼竜ちゃんのお名前発表会
ご飯を食べ終わった後は木材を運ぶ作業に戻り、日が暮れる時にはすべての木材を運び終える事が出来た。
しかしまだ家を作るには材料が足りないようなので、全ての木材が完成するまでは拠点の作成には取り掛からないのだ。
なので力作業担当の僕の仕事は殆どない。
流石に何もしないのは申し訳ないのだが、出来る事も無いのでどうしようもないのが現状だ。
なにも無さ過ぎて眠い。
そういえばここ最近まともに寝てなかったっけ。
みんなには悪いが少し寝させてもらおう。
背中に何かが乗っかる感覚がして目が覚める。
乗っかってきたのはどうやらリーフェルだった様だ。
今の時間は太陽の位置からしてお昼頃だろうか。寝始めたのがみんなが起きた後の朝だったから大体4時間くらい寝ていたのだろう。
それにしては寝起きがいい気がする。
『竜様。起きたのですか。私たちは今からご飯なのですが竜様も食べますか』
お腹もすいているし、頷きご飯を食べに行く。
『それにしてもだいぶお疲れだったようで。私たちもだいぶ頼り切ってしまっていたので申し訳なく……』
『んにゃ? 僕そんなに寝てたの』
『竜様がおやすみになってから一日が経っています』
『えっまじで。起こしてよ。』
『竜様があまりに気持ちよさそうに寝ていたので、会議の結果そっとしておくことに決めたのです。ああ、後竜様が寝ている間に竜様のお名前の候補をいくつか作っておきました』
ああ、そういえばそんなこともお願いしていたっけ。
と言うのも竜様と呼ばれるのがこそばゆくて、適当に僕の名前を決めてほしいと言っていたのだ。
自分で名前つけても良かったのだが僕のネーミングセンスだとタマとかポチになりかねないので誰かに決めてもらった方が良いと思ったのだ。
ぶっちゃけ最近竜様呼びに慣れてきたから忘れていた。
まあ名前を付けてくれるのだったらありがたい。
ご飯を食べながら僕の名前を決める会議が始まった。
候補がいくつかあって、それ以上纏まらなくなってしまったので、最終的にその候補の中から僕が決める事になったのだ。
でもすんなりとはいかないようで、どの名前が僕にふさわしいかで争いが起きているようなのだ。
候補は3つで、ドラコ、レティ、ラフィリアだ。
それぞれ別の子が名前を作ったようで、ここまで絞った段階で派閥が分かれた要だあ。
一つ目はドラゴンからとっているのだと思う。で2つ目も赤いからレッドからきてるのかな。どっちも分かりやすいのだ。
そして3つ目だがどうやら子フェネックが付けたらしく、名前に意味こそないようだが、かっこいい名前だ。
個人的にはどれでもいいのだが、名付け親の3匹が僕の事をキラキラした目で見てくるので下手な選び方が出来ないのだ。
今もどれがいいか議論が白熱しているが、話の主役である僕だけ置き去りなのだろうか……
うーむ。……いっそ全部合わせてしまおうか。
合わせるとするなら……レティ・ドラコ・ラフィリアになる。
しっかり3つで名前と姓、ミドルネームに収まった。
ミドルネームって言葉だけ知っているけど実際何なのか分からないから、こんなに簡単に付けてもいいのか疑問だが、よく考えたら戸籍とかないし名前がどれだけ長くなっても問題ないのだ。
『名前、決めました!! 今日から僕はレティ・ドラコ・ラフィリアを名乗る事にするよ』
一瞬ぽかんとしたみんなだったが、おじいが『そういえば人間は苗字と姓がありましたな。わざわざ一つに絞る必要も無かったですな』と言ったのでみんなが納得したようだ。
『ラフィリア様、折角なので私たちにも苗字を付けてくれませんか?』
早速名前で呼んでくれたのはいいが、慣れるまで少し時間が掛かりそうだ。
で、苗字ね…………えっ僕が!?!?
ネーミングセンスが無い事を自覚して自分の名前を他人任せにした僕が?
僕が苗字を名乗る事になったから自分たちも欲しいとなったのは分かったが、ちょっと難易度が高い。
『……みんなラフィリアって名乗れば?』
苦肉の策で出た僕の案は、いっそな苗字を一緒に使っちゃえ作戦である。
苗字なんて一つの家族で共有するものなのだ。そこにちょっと僕が混ざっても問題あるまい。
魔物の名づけにルールなんて存在しないのだから。
緊張した面持ちでみんなの反応を見ていると、心なしかみんなきらっきらしている。
よっしゃ乗り切った。
生まれてこの方もっとも難しい難題ではあったが何とかなったのだ。
ファミリーネームと言うよりはこの群れの名前みたいなものになるだろう。
あれだ、仲間の証みたいな感じだ。そう考えると少しかっこよくないだろうか。
この先味方が増えた時、この名前を名乗る事を許す的な? なんだろう。健全なはずなのにヤクザっぽく感じるのは……まあいっか
僕の名前も決まったし、ご飯も食べ終わった。
さて、作業を始め……そういえば僕の作業ってないのか……
いっぱい寝たしなんか作業したい。
僕が寝ている間に完成した木材がある筈だ、早速ニャフを呼んで仕事を始めよう。




