41.幼竜さん頭を使う
大きく羽を広げて地面を蹴って飛び上がる。
木に引っかかった原木を適度な大きさにカットする作業を始めるのだが、まあうまく切断できなくても切り落せればそれで良いか。
ある程度の長さが欲しいから、カットする回数はそこまで多くない。
なのでさっさと終わらせてしまおう。
『ウォータージェット』
原木より少し高い所から魔術を使用して、ゆっくり降下する事で切断する。
切断面は思ったより整っていて、後で成型する必要は無いだろう。
この調子でどんどんやって行こう。
次カットする場所は、葉っぱが邪魔でうまく近づく事が出来ないのだ。
ここが引っかかっている場所でもあるので、一番の難所だ。
ただここをなんとか出来れば後は簡単な作業だけなので、まずここを何とかしよう。
出来るだけ葉っぱの入り組んだ場所に近付いて、今回切り倒した木の方についている枝だけを『ウインドカッター』を使って取り除いていく。
どうせ後でじゃまな枝を切り落とすのだから、飛びながら正確に狙いをつけるのは大変だが、出来るだけきれいに切り落としていく。
作業を始めて10分ほどで引っかかっていた枝がほとんど切り落とす事が出来た。
ここまでくれば、後は下に引っ張れば落とせるだろう。
拠点から近いのであまり気にしていなかったが、原木をカットする回数が減ったので持ち帰るのも少しは楽になるだろう。
地面に原木を落とし、空中じゃ取り切れなかった枝をここで切り落としていく。
地味な作業はさっさと終わらせて、原木を拠点に持ち帰ろう。
現状三つに分かれた原木は一度では持って帰れないだろうが、食料と違って魔物に取られる心配は無いだろうし、そもそも近くに魔物の気配は無いから一度で全部運ぶ必要は無いのだ。
取り合えず一番幹が太い方から拠点に持って行こう。
そこまで遠くは無いが、それでもこの木々の中を押しながら進むのだから時間はかかるだろう。
今必要なのは大きい幹だけだから他はここに置いておくのでも良いかもしれない。
直ぐに必要にはなると思うので長い間放置する事も無いだろう。
一本だけ持って行って後はここに置いていくのを決めたので、おいていく幹をきれいに並べてから拠点に帰る。
押すだけでも一苦労なこの原木を持って帰るのは大変なのだが、最近重くて大きい物を沢山運ぶので慣れたのか、予想より簡単に移動が出来ている。
考えればこの原木は、僕が運ぶ中では小さい方なのだ。
数トンはあるであろう原木が小さいと思えるのはなかなかどうかと思うが、まあ全部が全部一からの環境では仕方ない物があるだろう。
そんなことを考えていたらあっと言うまに拠点までたどり着いた。
予想よりだいぶ早く着いたのはやっぱり運ぶのが上手くなっているからだろう。
簡単に運べるのなら、やっぱり置いてきた原木を取ってきてしまおう。
残りの二つの原木を取って来るのに10分も掛からなかった。
まあ今回は使わないし綺麗に並べて放っておこう。
後で、洞窟の拡張の時に洞窟内の柱として使うのだ。
それは置いといて今から、土を運ぶためのソリを作るのだ。
そりと言ってもただの板に取っ手を付けるだけの簡単なつくりの物だ。
それが難しいのだけど……
まあ、作り方はある程度考えているから何とか形にはなると思う。
まずは、素材の加工から始めよう。
必要なのはソリの部分の板と、取っ手っとなる棒だ。
作りを簡素なものにするために、前に取っ手を付けづ後ろから押せるような形状にするつもりだ。
こうすれば粗雑なつくりでも壊れにくいだろう。
まずは、原木を縦に三等分にする。
『ウォータジェット』ではこの長さの原木をカットしきれないので、やむを得ないが竜言語魔法を使ってウォータジェットを模倣する。
魔力の消費は格段に上がるが、魔力の許す限り発動時間は気にしなくても良いし威力だって自由に設定できるのだ。
それに元の魔術を何度も使っているのもあるから、どうしても消費が多くなる魔法の魔力消費を最小限に出来るだろう。
それでも原木を三等分にするまで魔力が持つかは怪しい所だが……
まあどのみち5メートル位ある原木を一回でカットする方法はこれしかないのだから最悪魔力が回復するのを待てば良いだけなのだから何の問題も無いだろう。
出来るだけ消費する魔力が少なくなる様に意識しながら竜言語魔法を発動させる。
直ぐに効果は表れて、ウォータジェットのような水鉄砲が発射される。
出来るだけ使用している時間は短い方が良いのでさっさと射角をずらして原木の切断を始める。
威力はウォータジェットより少し強いくらいで、使い勝手もこっちの方が上だろう。
簡単に切れていくが、その反面一気に魔力が減っていく。
残りの魔力量を半分ほど残し、何とかカットを終える事が出来た。
思ったよりも消費が少なかったのでこのまま次の作業を進めるのだ。
三等分にした、原木の真ん中の木材をソリの土台にするのだが、このままだと土を盛っても直ぐに落ちてしまうので、少し中心を削って土がこぼれにくくなるようにする。
本当は木材を加工して囲いを作りたいのだが、それだと釘が無いと難しいので、苦肉の策なのだ。
それでも素手しか運ぶ手段が無い現状よりはましになるのだから今はこれで諦めるしかないだろう。
木材を削る方法は身体強化を使ってひたすら爪で削っていくごり押し戦法だ。
正直気が遠くなりそうで全然やる気が出ないのだ。
とはいえ三等分になっているとはいえもとは1メートルの原木だったのだ。
今のままだと1トンは無いまでもそれに近いだけの重量がある。
そんなもので土を運ぶの普通に嫌なのだ。
更に半分にしても良いのかもしれないが、しかしそれだと囲いが作れないので一度に運べる土の量が減ってしまう。
だから、死ぬ気で削るのだ。




