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転生ドラゴンは生き残りたい  作者: プレ子
第一章
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31.討伐隊

「俺は今回の討伐隊のリーダを務めさせてもらうザクロだ。かなり危険な任務になる事が予想されるから不満がある奴は今ここで名乗り上げろ」



 ロックドラゴンの襲撃から数週間が経った頃、俺の下にギルドから招集命令が届いた。

 曰く、撃退したロックドラゴンに討伐隊を組んで遠征に出るらしい。

 召集の内容は、討伐対象であるロックドラゴンの居場所までの案内をするというもだった。

 他の冒険者は通常の、つまり冒険者ギルドに常設してある以来ボードで募集するようで現状はだれが討伐隊に参加するかはまだ分からないらしい。



 そして当日、集まった冒険者の中で一番実績がある俺がこの臨時の討伐隊を指揮する事になった。

 今、こうして演説をしている訳だ。

 集まった冒険者はBランクパーティーが2つとAランクパーティーが1つの3パーティー、俺を含めると19人になる大所帯だ。

 正直この人数の指揮をするのは気が重いがやるしかないのだろう。



「今から向かう場所は前人未到の未開地域だ。様々なトラブルが予想される為、まずは自己紹介と軽く持ち物の最終確認をしておこうと思うが異論はあるか」


 異論が出なかったので全員の自己紹介を済ませ、荷物の確認をしてから遠征に向かう。

 今回の遠征は相当長期のものになる事が確定している為必要な荷物も相当な量だし、持ち物の確認漏れが命取りになる可能性がある。


「ザクロさん、荷物の確認が終わりました」


 こいつは確かBパーティー銀の風のリーダ、ライカだったか、確か最短でBランクまで上り詰めた事で一時期有名になっていた者だ。

 今回の遠征にもパーティーで参加していた筈なので期待しておこう。


「分かった、では直ぐに出発しよう」


 ロックドラゴンの現在位置を考えれば、遠征期間は恐らく順調に進んで二か月程度だろう。

 距離的に考えてロックドラゴンは脅威ではないはずだ。

 それなのにわざわざ討伐に行くのはおかしい気がするが、恐らく騎士団が絡んでいるのだろう。

 騎士団長が戦死してからというもの騎士団からの冒険者への言い分は言いがかり殆どだ。

 召集命令でなければこんなきな臭い依頼はまず受けないのだが……報酬が良いのが唯一の救いだ。


 城門を抜けるとしばらくは平地が続き、2~3時間も歩けばオーラス大森林の入り口まで行けるだろう。

 そこまでは目立った敵もおらず安全なのだが、ひとたびオーラス大森林の中に入ると凶悪な魔物といつ遭遇してもおかしくない魔物の巣窟だ。

 オーラス大森林の浅瀬は冒険者達の狩場の為、魔物が適度に間引きされて遭遇率は低いがそれでも死者、行方不明者が後を絶たず、上級冒険者でも立ち入りたくない超危険地帯だ。


 そして今から向かう場所は間違いなく前人未到。

 ワクワクしないと言えば嘘になる。

 ただ、俺は18人の命を背負っている。

 失敗が許されない。

 気を引き締めて向かおう。




 ネペンテス大森林に入り早2週間が経過した。

 既に探索されていない地域まで到達しており緊迫した空気が全体から伝わってくる。

 今のところ順調に進み、後十日程歩けばロックドラゴンを見つける事が出来るだろう。

 ここまで幾度と戦闘を繰り返してきたがこの位の遭遇率、脅威度ならまだ想定の範囲内だ。


 今は俺が先頭に立ち一番後ろをAランクパーティー、ハウンドドッグが守っている形だ。

 この2週間で連携力も高まり、危機的状況に陥る事なく想定よりも早く進めているのは良い兆候だといえるだろう。



 更に5日が経ち、異常事態が発生する。

 ロックドラゴンに掛けていた『マーカー』の効果が唐突に途切れたのだ。

 当然誤って魔術を解除した訳では無いし、迷わずに帰宅できるようギルド長に掛けさせてもらった方の『マーカー』はしっかりとギルド長の居場所を教えてくれている事から魔術が正常に機能しているはずだ。


 そこから考えれば、ロックドラゴンが死んだ可能性が高い。

 ロックドラゴンの様な強力な魔物が自然死するはずが無く、それはつまりロックドラゴンを倒せる存在が確実に存在している事の証明だった。


 ここに居るメンバーは全員、ロックドラゴンを倒すことを想定している。

 あの固い鱗を突破するにはそれ相応の火力が必要で、火力を重視するあまり攻撃の速度は重視していない。


 ロックドラゴン相手ならば速度はそれで良かったが、それ以外だとそうはいかない。

 もし相手が集団だったら火力より手数が必要だし、俊敏な相手ならそもそ攻撃が当たらない可能性がある。

 ロックドラゴンを倒せる相手となるそれは致命的な差となる。


 少し落ち着くべきだろう。

 冷静に考えればロックドラゴンは既に死んでおり、討伐隊としての目的は達成されたのだからわざわざ危険地帯に向かう必要などなく、帰還してしまえばよいのだ。

 一応、メッセージカードという魔道具があるから、それでギルドに判断を仰ごう。


「おい、誰かメッセージカードを持ってきてくれ」

「それはいいが、何に使うんだ?」


 直ぐに返事をしてきたこいつはBランク、蒼い鳥のロックだ。

 外見はまるでチンピラだが几帳面な奴だったので、重要な荷物の管理を任せてある。


「ロックドラゴンの居場所が分からなくなった。恐らく、別の何かによって倒されている可能性が高い」


 詳細を伝えると、皆に緊張が走り真剣な表情で今後の動き方を考えだす。

 その間にギルドに電報を出して置き、一時休憩をとる。

 恐らく撤退命令が出るだろう。


 帰ってきた、メッセージカードに書かれていた内容は、余りにも予想外の物だった。

 曰く、ロックドラゴンの討伐の証明になるものを探して持って帰れと言うのだ。

 ここに居る全員が予想外という表情を隠そうともせず、これから行く場所に不安を抱いているようだった。


 しかし、決まった以上は行かなくてはならない。

 ここからまだ5日程度の距離があるのだし、恐らく何も残っていないだろう。

 それこそロックドラゴンを倒したと思われる存在も留まっている可能性は低いと思う。

 しかし、それでも憂鬱な気分はしばらく変えられそうに無い。

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